カラーコンタクトレンズには危険な落とし穴が
コロナ禍にあってマスクを外せない日が続き、今まで以上に「目元」の印象が重要になっています。
女性誌のみならず男性誌でも、「目ヂカラアップ」をキーワードに、マスク映えするアイメイクのテクニックを紹介する特集が組まれています。
そんな特集の一つをパラパラと眺めていて、目ヂカラをアップする方法として「カラコン」、つまり色がついていて度の入っていない「カラーコンタクトレンズ」の使用を提案する記事が目にとまりました。
そこには、「カラコンを着ければ、アイメイクに頼らなくても印象的な目元に!!」、などと書いてあるのですが……。
実は、このタイプのカラーコンタクトレンズには非常に危険な落とし穴が潜んでいます。
アイメイクをするような感覚で使っていると、目のトラブルを招き、場合によっては角膜(黒目部分)が炎症を起こし失明したケースも報告されているのです。
「カラコン」として人気のカラーコンタクトレンズにはどのような危険性があるのでしょうか。
そのリスクを避けるには購入の段階から、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
今回は、そのポイントをまとめておきたいと思います。
カラーコン購入時は「高度管理医療機器承認番号」をチェックする
カラーコンタクトレンズは、装用するだけで目(虹彩)の色だけでなく目元の印象を大きく変えることができるファッションアイテムとして、コロナ禍以前から、10代から20代の若い女性を中心に人気が高まっています。
最近では、瞳がくっきりと際立つよう、黒目の周りを縁どるように着色されたカラーコンタクトレンズ(サークルレンズ)が、キリっとりりしいまなざしを作ることができるとして、アイメイクをする習慣のなかったビジネスマンなど男性愛用者も増えていると聞きます。
カラーコンタクトレンズは、視力補正用の度付きコンタクトレンズ同様に、安全な製品を、正しく使用していれば目にとって危険なものではありません。
しかし、眼科医の診察を受けずにインターネット販売や通信販売、ドラッグストアなどでカラーコンタクトレンズを購入する人が増えるのに伴い、目のトラブルに悩まされる人が増えているようです。
そのトラブルのなかには、「色落ちする」「酸素透過性(さんそとうかせい;酸素を通す能力)が低い」といったカラーコンタクトレンズ自体の品質が原因で起きている例が少なくないとのこと――。
度の入っていない、いわゆるおしゃれ用カラーコンタクトレンズは安全上のリスクなどから、2011年2月に、人工呼吸器や心臓のペースメーカーなどと同じ「高度管理医療機器」に定められています。
これにより、カラーコンタクトレンズの製造・輸入には厚生労働大臣の承認が義務づけられています。
この承認を受けた製品には、パッケージのどこかに「高度管理医療機器承認番号」が記載されています。
購入時には忘れずにこの承認番号をチェックして、粗悪な製品を購入しないことが、目の健康を守る第一歩です。
カラーコンタクト購入前に眼科医の診察を受ける
ただし、購入前に気をつけたいこともあります。
カラーコンタクトレンズを目のトラブルを避けて安全に使用する最低限のルールとして、厚生労働省は以下の「適正使用7ヵ条」をあげています*¹。
- 購入前は、眼科へ行こう
- (製品に同封されている)添付文書をよく読んで正しく使おう
- (添付文書に明記してある)装用時間を守ろう
- 異常があったら、すぐに眼科へ行こう
- 友人との貸し借りはやめよう
- (製品に同封されている添付文書が指定する)ケア用品を使ってケアしよう
- 目の状態をチェックする定期検査は必ず受けよう(購入後1週間目、1カ月後、3カ月後、6カ月後、以降は3カ月毎に)
このうち「1」については、「視力を補正するためのコンタクトではないのに、なぜ受診が必要なのか」との疑問を持つ方が多いのではないでしょうか。
この疑問には、コンタクトレンズは角膜に直接のせて使用するため、必ず眼科医の診察を受け、涙の量やアレルギー体質、目の病気など、コンタクトレンズを装用するうえで妨げとなるような問題がないかどうかチェックしてもらう必要があるとの説明があります。
カラーコンタクトを安全に装用するために
カラーコンタクトレンズは、製品によっては「色落ち」して目のトラブルを招く例があるのですが、カラーコンタクトレンズに使われているカラー色素は酸化チタンや酸化鉄など金属由来のものが多いようです。
そのため、金属アレルギーの方は、万が一にレンズが色落ちすると、結膜(白目)にアレルギー反応を起こすリスクがあるため、カラーコンタクトレンズの使用はできるだけ控えたほうがいいとされています。
また、コンタクトレンズの酸素透過性、つまり酸素を通す能力が低いレンズを装用していると、角膜が酸欠状態に陥り、違和感や炎症などのトラブルにつながりやすくなります。
もともと涙の量が少なく、ドライアイ気味で目が乾燥しやすい人では、このトラブルが起きやすく、重症化しやすいことがわかっています。
カラーコンタクトレンズ購入前の眼科受診は、このような目のトラブルを防ぐうえで欠かせないだけでなく、あなたの目に適したレンズの素材やカーブ(レンズの曲がり具合)、サイズを処方してもらうためにも必須です。
なお、カラーコンタクトレンズ購入前の眼科受診には健康保険が使えますから、自己負担分(70歳未満は3割負担、70~75歳は2割負担)だけの費用ですみます。
かかりつけの眼科医がいない方は、最寄りの眼科へ事前に連絡をしてカラーコンタクトレンズを使用したいことを伝えておけば、スムーズに診察や検査を受けることができます。
カラーコンタクト装用中のこんな異変はすぐに受診を
カラーコンタクトレンズの適正使用7ヵ条の「4」には、「異常があったら、すぐに眼科に行こう」とあります。
この「異常」に早く気づくためには、毎朝、以下の3点を自分でチェックするといいようです。
- カラーコンタクトレンズを入れる前に、見え方がいつもと同じかどうか、左右を片目ずつチェックする
- 結膜(白目)が充血していないかどうかチェックする
- レンズを入れたときにゴロゴロしないかチェックする
また、レンズ装用中に、以下の異常に気づいたときはコンタクトレンズを外して、そのコンタクトレンズを持参し、早めに眼科医の診察を受けることをおススメします。
- 目が痛い、異物感がある
- 充血している
- 涙が増える
- 物がかすんで見える
- 物がだぶって見える
- 視力が急に低下した気がする
- 光をまぶしく感じる
- 周りが暗く見える
なお、診察の結果、目薬(点眼薬)の処方を受けることもあるでしょう。
その場合の目薬のさし方については、こちらで詳しく書いていますので、参考にしていただけたら嬉しいです。

参考資料*¹:厚生労働省 おしゃれ用カラーコンタクトレンズについて