若いうちから塩を取り過ぎない食事の習慣を

クロワッサン食と健康
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減塩の加工食品を広める取り組みを国が主導

塩分(食塩)が多い食事をしていると顔や足に「むくみ」が出やすいだけではありません。若いうちから塩分を取り過ぎていると、そう遠くない将来に、高血圧になりがちです。高血圧がそのまま進行すれば、脳血管疾患(いわゆる「脳卒中」)や心筋梗塞などの心臓病、腎臓病、等々の深刻な病気につながりかねません。

こうした事態を極力防ごうと、日本高血圧学会は、血圧が正常であっても、18歳以上の成人では男女ともに、食塩摂取量を1日6g未満まで減らすことを広く一般にすすめています。

ところが、毎年実施されている「国民健康・栄養調査」の直近(2019年*)の結果を見ると、日本人の成人男性の1日当たり食塩摂取量は平均して10.9g、成人女性は9.3gと、男女ともに6gをはるかに超える食塩を毎日摂取していることが明らかになっています。

*新型コロナウイルス感染症の影響により2020年と2021年は調査を中止している。

このことを懸念した厚生労働省は、2022年3月9日、パンや菓子、弁当、総菜といった、いわゆる中食(なかしょく)に多用されている調理済み食品や加工食品を扱うメーカー12社から成る組織を設立し、減塩食品を広める取り組みをスタートさせています。

なお中食とは、自宅で素材から調理したものを食べる内食(ないしょく・うちしょく)に対し、出来合いの弁当や総菜類の持ち帰り(テイクアウト)やデリバリーなど、調理済みの食品やレトルト食品のような加工食品を自宅や職場で食べる食事スタイルをいいます。

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ファミリーマートの「こっそり減塩」の取り組み

ところで減塩の食品(以下、減塩食品)については、「美味しくない」とのイメージがつきまといます。そのため、減塩の必要性は理解しながらも、減塩食品となると、つい避けてしまいがちです。そこで、コンビニ大手のファミリーマートでは、自社ブランドの弁当や麺類、総菜などおよそ26品目の商品について、5%から30%の減塩を行うにあたり、一工夫したそうです。

「こっそり減塩」と銘打ったその取り組みでは、販売事業者に義務づけられている栄養成分表示には食塩相当量をきちんと明記するものの、パッケージなどに「塩分5%オフ」とか「塩分控えめ」などの減塩をアピールする表示はいっさい行わなかったのです。

その結果、今までのところそれらの商品を購入した方から「味が変わった」とか「美味しくなかった」といった声は寄せられておらず、売れ行きにも大きな変化はないとのこと。

その背景には、食塩を減らしても味が変わらないように、だしを効かせたりして調理法を工夫するなど、これまで以上に手間もコストもかけているようです。

「こっそり減塩」の主な商品は?

この「こっそり減塩」の主な商品としては、以下のようなものがあります。減塩された食品は美味しくないとの思い込みから減塩食品を避けている方は一度試してみてはいかがでしょうか。

  • 炙り焼(あぶりやき) 銀鮭幕の内弁当(要予約):食塩相当量を4.6gから2.5gに減塩
  • だし香るかき揚げそば:食塩相当量を5.0gから4.2gに減塩
  • オムライス:食塩相当量を6.2gから5.1gに減塩
  • ミートソーススパゲッティ:食塩相当量を4.4gから3.6gに減塩
  • ソース焼きそば:食塩相当量を7.6gから5.2gに減塩
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日清食品も人気商品の「カップヌードル」を減塩

塩分過多になりがちな食品としてあげられることの多い商品に「カップ麺」があります。2019年の国民健康・栄養調査のデータによれば、日本人が塩分を多くとっている食品のランキングでは、「即席麺(カップラーメン)」が6位にランクインしています。

ちなみに、このランキングの1位はたくあん漬け、梅干しなどの「漬物類」、2位はクロワッサン、トーストなどの「パン類」、3位はあじの干物等の「魚介類加工品」、4位は「ハム・ソーセージ類」、5位はちくわやかまぼこなどの「魚介練り製品」と、いずれも私たちの毎日の食卓に並ぶことの多い食品ばかりです。

なかでもカップ麺は、ランチに、夜食に、あるいは小腹が空いたときなどに、手軽に利用している方も多いでしょうが、このカップ麺についても、大手食品メーカーの日清食品が減塩の取り組みを進めています

食塩に変えて塩化マグネシウム(にがりの主成分)を使う

ラーメンなどの麺は、小麦粉に水、食塩などを混ぜてつくるわけですが、このとき麵自体の塩分を単純に減らすと味が薄くなるだけでなく食感も変わってしまうそうです。

そこで日清食品は、海水からとれる「にがり」の主成分である「塩化マグネシウム」などを加える新製法により、麺の味も食感も、またスープの味わいや保存性も従来のものとほとんど変わらない「カップヌード ソルトオフ」の開発に成功しています。

この「カップヌードル ソルトオフ」は、レギュラータイプの「カップヌードル」の食塩相当量を4.9gから3.2gへと約30%減らしているそうです。

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日本高血圧学会の減塩食品リストの活用を

減塩食品は、ただ食塩の含有量が少なければそれでいいというものではありません。栄養バランスがよく、しかも長く食べ続けるために味も工夫してあって美味しく食べられるのはもちろん、確かな減塩効果を期待できることも必須条件となります。

日本高血圧学会の減塩委員会は、これらの条件を満たす減塩食品で、レギュラータイプの食品との比較で減塩率が20%以上の優良食品、21社127製品(2021年10月末日現在)を選択し、「JSH*減塩食品リスト」に掲載して当学会の公式Webサイトで紹介しています。是非一度チェックしてみてください。

*JSHとは、Japan Society Hypertentiont(日本高血圧学会)の略称。

「かるしお」認定商品も活用を

なお、大阪市吹田市にある国立循環器病研究センターは、「減塩」の新しい考え方として、塩を減らすことで素材がもともと持つ「うまみ」を引き出す方法として、「かるしお」を提案しています。

具体的には1食あたり食塩2g未満で、彩りと栄養バランスに富んだ「かるしおレシピ」と「かるしお認定商品」を広く一般に紹介しています。こちらで詳しく書いていますので、一読のうえ、是非日々の食事に活用してみてはいかがでしょうか。

減塩食が長続きしない方は「かるしおレシピ」を
コロナ禍は食生活に深刻な影響を与えている。国立循環器病研究センターの調査では、間食の回数が増えたり、外出自粛による調理済み食品の利用が増え、結果として塩分過多の傾向が伺える。無理なく美味しく食べられる減塩食に「かるしおレシピ」をすすめたい。

参考資料*¹:厚生労働省「ファミリーマートの減塩への取り組み」

参考資料*²:厚生労働省「日清食品グループの減塩への取り組み」

参考資料*³:日本高血圧学会 減塩委員会「JSH減塩食品リスト」(2021年10月現在)