股関節のつらい痛みを「貧乏ゆすり」で和らげる

元気に歩く運動と健康
スポンサーリンク

女性に多い股関節の痛みと「貧乏ゆすり」に関係が

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)という女性に多い病気をご存知でしょうか。

運動不足や太りすぎが主な原因で起こる、いわゆる骨の加齢現象の一つと説明されています。

股関節に限らず肩や肘(ひじ)、膝などの関節部分は、骨と骨がこすれ合って動くようになっています。

スムーズに動くためには、すべりがよくなければいけないわけです。同時に、骨と骨の間にクッションがないと、対面し合っている骨の表面(関節軟骨)がすり減って壊れてしまいます。

変形性股関節症は、股関節のなかでこのクッションの役割をしている関節液が減ったり、関節軟骨がすり減ってすべりが悪くなったりして、歩行中や階段を上り下りする際など、股関節に体重がかかるたびに骨と骨がぶつかり合って痛みが走る病気です。

この股関節、つまり足のつけ根部分の痛みの緩和、あるいは解消に「貧乏ゆすり」がいいという話を、今日は書いてみたいと思います。

スポンサーリンク

痛みが強くなる前の保存療法として「貧乏ゆすり」を

股関節のなかで骨と骨のすべりが悪くなってくると、まず痛みを感じるようになってきます。

すべりの悪い状態が続いて軟骨が変形してくると、痛みが強くなり、持続痛(じぞくつう)といって、立ったり歩いたりして股関節に体重がかかっているときだけでなく、夜間寝ているときも痛みが続くようになります。

また、痛みだけでなく、股関節の動きが制限されて階段の上り下りが苦痛になってきます。

さらにはかがむ姿勢をとりにくくなり、靴下を履きにくくなったり、足の爪切りが自分では難しくなってくる、さらには和式トイレの使用も困難になってきたりするようです。

このような状態、つまり関節軟骨がすり減って変形するところまで進行してしまうと、「手術をしましょう」となりがちです。

そうなる前、つまり股関節に痛みを感じるようになった段階で、早めに整形外科医の診察を受け、「まずは保存療法でやってみましょう」となったときに役立つのが、「貧乏ゆすり」です。

痛みの緩和に水泳や水中歩行も

なお、変形性股関節症の保存療法としては、水泳や水中歩行、筋力トレーニングなども行われます。体重オーバーであれば、減量に向けて食事療法が行われることもあるようです。

痛みが強くて日常生活に支障が出たり、トレーニングなどの妨げになる場合は薬物療法として、消炎鎮痛薬により痛みの緩和を図ることもあるそうです。

この辺の詳しい話は、日本整形外科学会のパンフレット「整形外科シリーズ10 変形性関節症」(後掲の「参考資料*¹)が参考になります。是非ダウンロードして、目を通してみてください。

スポンサーリンク

「貧乏ゆすり」改め「ジグリング(健康ゆすり)」に血流改善効果

「貧乏ゆすり」と聞くと、「行儀が悪い」といったマイナスのイメージが強いのですが、実は貧乏ゆすりには、さまざまな運動効果が期待できることがわかってきています。

そこで、「貧乏ゆすり」ではなく「健康ゆすり」、医学的には「ジグリング」(健康ゆすり運動)と呼ばれている、という話を整形外科医を取材した折に初めてうかがってから、10年ほどになるでしょうか。

今では「健康ゆすり」という言葉が一般にも知られるようになり、専門外来の一つとして「ジグリング外来」を新設する病院やクリニックも徐々に出てきています。

ジグリング研究会のWebサイトに、ジグリングの指導を受けられる病院の一覧がありますので、参考にしてください(後掲の「参考資料*²」)。

ジグリングの方法ですが、説明によれば、まさに貧乏ゆすりの要領そのままで、やり方は簡単です。

  • 椅子に浅めに腰掛ける
  • 股関節と膝関節を直角に曲げ、脚の指先を床に軽く着けて踵(かかと)を浮かせる
  • この状態で、片脚ずつ交互に、あるいは両脚一緒に、踵をできるだけ早く小刻みに上下させる
  • 1日1回30分程度、毎日続ける

股関節の小刻みな動きによって股関節周辺の筋肉の血流がよくなるにつれ、股関節のなかでクッション役をしている軟骨部分に栄養が行きわたり、痛みが和らぐと同時に、関節症の進行も抑えてくれるというわけです。

ただし、症状の程度によってはかえって負担になることもあります。安全かつ効果的に行うためには、主治医に相談して、健康ゆすりの方法や回数について指示を受けるようにしてください。

「健康ゆすり」はエコノミークラス症候群の予防にも

健康ゆすり運動は、変形性膝関節症にも効果が期待できるようです。また、あの東日本大震災の際に、被害に遭って車中泊を余儀なくされた方たちを襲ったことで広く知られることとなった「エコノミークラス症候群*」の予防にも効果があると聞きます。

腓腹筋(ひふくきん)と呼ばれる「ふくらはぎ」の筋肉を動かすことにより、下肢をはじめとする全身の血液の流れが改善されて、エコノミークラス症候群の原因となる血栓(血液のかたまり)ができにくくなるとのこと。

この健康ゆすり運動には、運動をサポートしてくれる専用の医療機器「健康ゆすり」もあります。

このサポートマシンを使えば、椅子に腰かけて、あるいは坐って足を延ばした状態で器械に足を乗せるだけで、本などを読みながらでもジグリングを行うことができます。

少々高価ですが、「病状が進行して手術になることを思えば安いもんだ。それに歩けなくなって寝たきりになってしまうのもつらいから」とは、購入した方の弁です。

エコノミークラス症候群とは、肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)のこと。長時間の飛行機搭乗中に静脈に血栓ができてしまうことがしばしば起こることに由来してこの表現が使われることが多い。長時間動かないことや脱水傾向にあるときなどに、主に足の深部を走っている静脈にできた血栓が、体を動かし始めたときに血流に乗り肺の血管を塞いでしまうことにより起こる。呼吸困難、胸の痛みなどを自覚して気づくことが多い。

参考資料*¹:日本整形外科学会のパンフレット「整形外科シリーズ10 変形性関節症」

参考資料*²:ジグリング指導病院一覧