純アルコール量を知って飲み過ぎを防ぐ!!

ビールニュースから
厚生労働省は2月19日(2024年)、飲酒に伴う健康へのリスクを示した初のガイドライン(指針)を公表しています。そこでは、飲酒量より「純アルコール」の摂取量に注目することが重要だとし、たとえば大腸がんの発症リスクを高める純アルコール量の目安は、1日当たりビールロング缶1本に相当する約20g(週150g)以上としています
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容器に純アルコール量をグラム表示し飲み過ぎ防止を

最近は、飲酒に絡んだトラブルの報道が目立ちます。なかでも多いのはいっぱしの社会人の飲み過ぎや二日酔いによる事件や事故ではないでしょうか。

事件や事故ではないものの、過剰飲酒による健康障害として、肝機能障害はもとより、がんや循環器系疾患、高血圧、糖尿病に加え、アルコール依存症の発症リスクも高まることが、先に公表された「健康寿命を延ばすための提言」で指摘されています。

こうした事態を深刻に受け止めた政府は3月26日(2021年)、ビールなどアルコール類の容器に、従来義務化されていた「アルコール度数」に加え、「純アルコール量」、つまりアルコールがどのくらい含まれているかを「グラム(g)」で表示するよう酒類メーカーに検討を求める方針を打ち出しています。

「適正飲酒」を促して飲み過ぎ・二日酔いを防ぐ

今回の政府の方針は、アルコールの摂取量をわかりやすくして、厚生労働省が推奨している「節度ある適度な飲酒」、いわゆる「適正飲酒」を促し、飲み過ぎによる健康トラブルを防ぐ効果を期待したものです。

この政府の方針にいち早く反応したのは、アサヒビールです。この7月以降、ビールやチューハイなどに含まれる純アルコール量を、g単位で自社Webサイト上に順次開示し、2023年末までには国内で取り扱う主要商品のすべてについて目安量を明示すると公表。たとえば「アサヒスーパードライ350ml缶」の場合、「総アルコール量:14g(350ml当たり)」と表記され、アルコール度数も缶体に表記されることになります。

こうした新たな動きを受け、今回は、アルコール類の飲み過ぎや二日酔いを防ぐ「適正飲酒」について、改めて見直してみたいと思います。

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飲み過ぎない適正飲酒は純アルコール量20gまで

厚生労働省は、生活習慣病の予防につながる「節度ある適切な飲酒」の1日平均純アルコール量を、肝機能などに問題がなく通常のアルコール代謝能がある*ことを前提に、20g程度としています。

これは、アルコール度数が5%のビールやチューハイの500㎖缶(瓶)1缶(本)に相当します。日本酒なら1合(180㎖)、アルコール度数25度の焼酎なら0.6合(約110㎖)、アルコール度数14度のワインなら約1/4本(約180㎖)、アルコール度数43度のウイスキーならダブル1杯(60㎖)が、それぞれ純アルコール量20gに相当します。

しかし、このようなアルコール度数だけの表示ではアルコール摂取量がわかりにくいため、純アルコール量を明確に数値で表示することによって国民の適正飲酒を促したいとの声があがっていました。そこで、アルコール健康障害対策基本法に基づく「アルコール健康障害対策推進基本計画(第2期)」(2021~2025年度が対象)にこの方針が盛り込まれたというわけです。

*アルコール代謝能とは、飲酒により体内に送り込まれたアルコールを代謝処理する能力のこと。この代謝能には個人差があるが、通常は、飲んだアルコール分の90%以上が、肝臓などで分解、解毒処理され、処理されずに体内に残ったアルコールは吐き出す息や尿と一緒に体外に排出される。飲酒後の息や尿がアルコール臭くなるのはそのため。

食べながらゆっくり飲むのが飲み過ぎないコツ

厚生労働省が推奨している「適正飲酒」については、アルコール健康医学協会が、広く一般に普及することを目的に、「適正飲酒の10か条」としてまとめ、同協会のWebサイトにて公表しています。この10か条のなかでとりわけ注目したいのは、第2条にある「食べながら、適量範囲でゆっくり」飲むというところです。

お酒のみと言われる人のなかには、何も食べずにひたすら飲み続けるのが「ツーの飲み方」と、勘違いしておられる方もいるようですが、この飲み方こそ、二日酔いや悪酔いの最大の原因です。アルコールのスムーズな代謝を手助けしてくれるたんぱく質やビタミン類をつまみつつ、仲間とのおしゃべりも楽しみながら、ゆっくりたしなむことをお勧めします。

食物繊維が豊富な野菜サラダが悪酔いを防ぐ

具体的には、つまみ一品目には、ビタミン類と食物繊維が多い野菜サラダや野菜スティックがお勧めです。特に食物繊維は、胃におけるアルコールの吸収を穏やかにして、血液中のアルコール濃度が一気に上がって起こる悪酔いを防いでくれます。

たんぱく質としては、冷奴などの豆腐類や卵焼き、チーズ類もいいでしょう。特にお勧めは、肝臓の働きを活発にしてくれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれるマグロなどの魚類です。手軽なところでは、サバの水煮缶はいかがでしょうか。

二日酔いを招くから揚げなどのアブラものは控える

若い方は、鶏のから揚げのようなアブラものや甘いものをつまみに選びがちではないでしょうか。しかし、いずれもつまみ自体の消化吸収にエネルギーが費やされますから、アルコールの代謝に必要なエネルギーを減らしてしまいます。

その結果としてアルコールの代謝に時間がかかることになり、二日酔い*を招きがちですから、特にアブラものの、お酒を飲みながらの食べ過ぎは禁物です。また、飲む速度が速すぎると血液中のアルコール濃度が急に高くなり、早く酔ってしまうことになります。

同時に、アルコールによる肝臓などへの負担がいっきにかかりすぎることにより、肝機能等の障害を招きやすいことから、「ゆっくり飲む」ことを心がけたいものです。

*二日酔いを防ぐには、アルコールと同量、あるいは少し多めに水を飲むといい。また、アルコールの最後の一杯をノン・アルコールビールにするのも、アルコールを飲んでいる気分のまま水分補給ができて脱水予防になり、かつ二日酔い予防にもなる。
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週に2日の休肝日が二日酔いを防ぐ

アルコール健康医学協会は「適正飲酒の10か条」の第4条で、「つくろうよ週に2日は休肝日」を掲げています。

適量範囲とされる純アルコール量にして20gのお酒を飲むと、肝機能などが正常に機能していれば、通常は、飲んだアルコールの90%以上が肝臓などで分解処理されるのですが、この処理には、多少の個人差はあるものの、平均して6~7時間はかかるとされています。

ということは、一般に飲酒するのは夕方から夜の時間帯ですから、私たちが就寝している間も、肝臓は黙々と働いていることになります。そのため、連日お酒を飲み続けていると、肝臓は休む暇もなく働き続けることになり、酷使され続けた肝臓は、いずれギブアップして障害が出てくることにもなりかねません。

そこで、週に2日は「休肝日」として肝臓を休ませてあげよう、というわけです。

2、3日続けて飲んだら1日は休肝日を

注意したいのは、この場合の「週に2日」の解釈です。「ちょうど仕事が休みだから土日を休肝日にしよう」では、あまり意味がありません。正しいのは、2、3日続けてお酒を飲んだら1日休むというサイクルで、結果として週に2日は肝臓を休ませてあげる、というのがいいようです。

このように、自ら休肝日を設けてそれを継続して実行していくことは、お酒を飲まずにはいられなくなる、いわゆるアルコール依存、さらにはその先にある「アルコール依存症」の予防にもつながります。是非とも「週に2日の休肝日」を習慣化したいものです。なお、アルコール依存症が気になる方はこちらを読んでみてください。

気をつけたい女性のアルコール依存症
コロナ禍で在宅時間が長くなり、孤独感も手伝っての「家飲み」により飲み過ぎていないだろうか。女性は男性よりアルコール依存症に陥りやすい。「自分のお酒の飲み方は大丈夫か」心配ならスクリーニングテストでセルフチェックをし、依存症のリスクがあれば早めに受診を。

参考資料*¹:厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」

参考資料*²:「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」

参考資料*³:アルコール健康医学協会