10日前から発熱と咳き込み、息切れが
いきなり私的な話で恐縮ですが、40年来のパートナーが休日の未明に救急車を呼ぶ羽目になりました。ちなみにパートナーは84歳の男性です。
実は、この地に転居してまだ間がなく、かかりつけ医を決めていませんでした。
そのため、37度台後半の発熱と時々繰り返す咳き込み、息切れが2、3日続いたときは、「大丈夫だよ」と受診を拒む本人を説得して、最寄りのクリニックに飛び込みで診ていただきました。
幸い、快く診察してくれた医師は、時節柄、まずはコロナとインフルエンザの検査を実施。
肺炎の兆候があり呼吸器専門医のいる病院へ
いずれも陰性であることを確認してから、胸のレントゲン撮影を行い、「肺炎の兆候がありますから、呼吸器の専門医がいる病院を紹介しましょう」という話になりました。
紹介先の医師と電話でやり取りをされている間、時間にしておよそ20分ほど待っていると、「先方の了解が得られましたから、さあ、行きましょう」となり、なんとクリニックの看護師さんが運転する車で最寄りの某大学病院まで送ってくれたのでした。
これが救急車を呼ぶ、ちょうど10日前のことです。
入院治療をすすめられるも通院治療を選択
10分ほどで到着した大学病院では、救急外来の処置室のようなところで、待機してくれていた呼吸器専門医により、直ちに胸の聴診に加え、指先にパルスオキシメーターが装着され、血液中の酸素濃度、いわゆる「SpO2(エスピーオーツー)」が測定されました。
パルスオキシメーターとは、コロナ感染者の自宅療養では必需品として、一般の方にもすっかりおなじみになった、あの洗濯ばさみのようなセンサーのことです。
測定の結果、一般的に96~99%が標準値とされているのに対し、なんと彼の値は90%以下で、「十分な酸素を全身に送り届けることが難しい状態ですから」と、酸素吸入と点滴が開始されました。
併行して行われた胸のレントゲン撮影とCTによる画像検査の結果から、「右肺の下の方に肺炎の影があります」とのこと。
さらに血液検査でも、血液中の白血球が大幅に増えているうえに炎症反応の指標であるCRP値が上がっていて、「明らかに肺炎であることが確認されます」と説明を受けました。
これらの検査データをもとに、医師からは入院治療をすすめられました。
ところが、酸素吸入で呼吸がずいぶん楽になったこともあり、本人は頑なに入院を拒否――。
自宅から近いこともあって、無理を承知で通院治療をお願いし、抗生物質と痰を出しやすくする薬、せき止め、解熱剤を処方していただいて、その日は自宅に戻ったのでした。
しかし、今になって思えば、この甘い判断が間違いでした。
休日の未明に急変したが受け入れ先が見つからない
その後、処方していただいた薬をきちんと服用して熱も下がり、咳き込みも何とか治まっていました。
初診日から3日目と1週間目には通院して、胸の聴診やパルスオキシメーターによる血中酸素濃度の測定、レントゲン撮影や血液検査などを受けました。
いずれの結果からも肺炎が改善傾向にあることが読み取れる旨の説明を受けて一安心。1週間後の受診を予約して自宅に戻りました。
ところが、それから2日目の未明のことでした。隣で寝ている彼の呼吸の荒さに目が覚め、熱を測ってみたところ39.8度もあり、さすがに慌てました。
処方していただいていた解熱剤を飲ませて少し様子を見たのですが、依然として39.5度で本人も「息苦しい」と訴えるため、急遽119番をコールしました。
幸い、10分も待たずに救急車が到着。駆けつけてくれた救急救命士がパルスオキシメーターで測定した血中酸素濃度は、なんと92%で、直ちに酸素吸入が開始されました。
最寄りの某大学病院に通院中であることやその受診経緯を話すと、救急隊員が直ちに先方にコールして、診察券にある患者IDなども伝えて受け入れ可能かどうかを尋ねてくれました。
通院治療中の病院なのに受け入れてくれない
私としては、現在通院中なのだから当然受け入れてもらえるものと思い込んでいました。
しかし、返ってきた答えにがっくりきました。ベットの空きがないから、受け入れられないというのです。
気落ちする私を励ましながら、救急救命士らは、「あいにくコロナやインフルエンザの患者が多いうえに、今日は祝日続きの連休ですから」と言いつつ、地域内では見つからないからと医療圏を超えて、東京全域で懸命に受け入れ先を探してくれました。
見つかった受け入れ先は自宅から片道1時間半の病院だった
「少し遠方になりますが、受け入れてもらえそうな病院が見つかりました」と聞けたのは、それから2時間近い時間が経ってからでした。
その病院が、「救急車なら30分余りで行けます。ただ、奥様が公共交通機関で通われるには片道1時間半は優にかかってしまいますが、よろしいですか」と説明を受けたときは、ちょっと絶句してしまいました。
「あーあ、運転免許証を返納しなければよかった」と思うと同時に、「呼吸器専門医から入院をすすめられたときに何としても説得して入院させておけばよかった」と悔やまれました。
でも、今はなんとしても彼が治療を受けることが一番と思い直し、その病院への搬送をお願いしました。
そして現在、パートナーはその病院に入院して、懸命に治療を受けています。
一方の私は、バスと電車を乗り継ぎ、片道1時間半余りをかけて、毎日面会に通っています。
かかりつけの医療機関も祝休日は休診に
今回の体験をこのブログに書き留めることにしたのは、救急車を利用する側の私たちも、日ごろから心得ておくべき重要なことがあると思ったからです。
お世話になった救急救命士によれば、特に祝休日の救急コールでは、搬送先、つまり受け入れてくれる医療機関を確保するのがとにかく難しいそうです。
突然の事故や急病ならやむを得ないでしょう。
しかし、急変も予測されるような状態で自宅療養をされている方は、医療機関が休診になる土日や祝日の前日には、この休日を無事にやり過ごすことができるかどうかを考え、少しでも心配な点があれば、休診になる前にかかりつけの医療機関を受診するか、必要ならその段階で救急車を活用しておくことをおすすめします。
「かかりつけの病院だから、休診中に異変があって救急車を呼ぶような事態になっても、受け入れてもらえるのではないか」との甘い考えは捨てたほうがいいことを、是非とも知っておいていただきたいと思います。
在宅死と救急車
なお、在宅での看取り、つまり在宅死を希望して在宅療養を続けている方が救急車を呼ぶような事態に陥ることもあるかと思います。
そんなときの救急車の呼び方で注意したいことをこちらにまとめてあります。是非一度読んでおいてください。