性別も年齢も関係なく人気の「大人向け粉ミルク」
「粉ミルク」と聞けば、誰もが乳幼児のためのものと思いがちですが、さにあらず――。最近は、「大人向け粉ミルク」に注目が集まっています。
大人向け粉ミルクが売り出された当初、購入者の大半は、食が細くなり低栄養からフレイルと呼ばれる虚弱状態に陥りがちな高齢者でした。
ところが最近は、「健康だけでなく美容にもいいらしいから」とか、「手軽にたんぱく質とカルシウムを補給できるから」といった理由から、性別も年齢も関係なく広がり、品薄になるほどの人気ぶりだと聞きます。
気をよくした(?)各社は、健康のために必要な栄養素として、牛乳には含まれていないような栄養素をプラスした大人向け粉ミルクを売り出して利用者層を広げており、注目度がいっそう高まっています。
そこで今回は、大人向け粉ミルクの健康と美容に期待できる栄養効果、および毎日の食事と併行して美味しく効率的に飲む方法などについてまとめておきたいと思います。
「牛乳でおなかゴロゴロ」を解消した「大人の粉ミルク」
大人向け粉ミルクを開発する先駆けとなったのは、「どうき・息切れ・気つけに……」のCMですっかりおなじみの「救心製薬(きゅうしんせいやく)」だと聞いています。
開発に取りかかったのは2010年頃とのこと。「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)*の予防に牛乳を飲むようにかかりつけ医から言われたが、牛乳を飲むとおなかがゴロゴロしてくるので、飲めない。牛乳に代わるもので何かないだろうか」といった顧客の声が直接のきっかけだったそうです。
このような声に応えて、2014年4月、現在市販されている「大人の粉ミルク」が売り出されています。
この粉ミルクは、さわやかで飲みやすいヨーグルト風味に仕上げられています。
100㎖の水かぬるま湯(70℃以上のお湯で溶かそうとすると固まりができやすいのでご注意を)に1袋(7.5g)を溶かして飲むと、「たんぱく質」はいうまでもなく、「カルシウム」については、普通の牛乳コップ約1杯分(200㎖)に相当する240㎎を摂ることができます。
この量は、成人が1日に必要なカルシウム量の約3分の1に相当します。
加えて、カルシウムの吸収率や免疫力を高めるうえで欠かせない「ビタミンD」、さらには妊娠を計画している、いわゆる妊活中や妊娠中の女性には欠かせない栄養素である「葉酸」なども摂ることができます。
なお、この葉酸については、最近になり認知症予防にも効果が期待できるとする説が発表されて、物忘れが気になりだした方の間で注目されています。
⇒ 減食ダイエットを続けていると骨がボロボロに
乳糖不耐症でも安心して飲むことができる
救心製薬の「大人の粉ミルク」は、発売からの5年間ほどで、当初の4~5倍を売り上げるようになり、生産が追いつかないほどの人気商品になっていると聞きます。
これほどの人気を集める理由は、「おなかゴロゴロ」に対応している点にあると言っていいでしょう。
牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする原因は2種類あることがわかっています。「乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)」と「牛乳アレルギー」です。
高齢者に圧倒的に多いのは、前者の乳糖不耐症。牛乳に含まれている「乳糖」という成分が原因で、牛乳を飲むとおなかがゴロゴロしたり、ときにおなかが張ってガス(おなら)が出たり、場合によっては下痢をしたりすることもあるわけです。
救心製薬の「大人の粉ミルク」は、その乳糖を可能な限り取り除いてありますから、乳糖不耐症の方も安心して飲むことができるのが大きな特徴です。
なお、乳糖不耐症についてはこちらの記事に詳しくまとめてありますので、チェックしてみてください。
⇒ 「牛乳を飲むとお腹ゴロゴロ」の対処法は?
牛乳に健康サポート6大成分をプラスした「大人向け粉ミルク」
救心製薬に続き、2016年10月には森永乳業から、「健康にいいと思い育児用の粉ミルクを牛乳代わりに飲んでいるが、甘すぎて……」といった声を受け、大人向けに甘さを抑えてさっぱり味にし、栄養素も大人向けに調整した「ミルク生活プラス」が売り出されています。
この「ミルク生活プラス」は、「大人の健康をサポートする6大成分」として、以下の成分がまとめて摂れるようにバランスよく配合されているのが特徴です。
- 悪玉菌を減らして腸内環境を整える「ラクトフェリン」や「ビフィズス菌BB536」「シールド乳酸菌」
- 日本人、特に牛乳が苦手な方に不足しがちな「カルシウム」
- 体脂肪になりにくい「中鎖脂肪酸」
- 特に生理がある年代の女性や胃の切除手術後の方に不足しがちな「鉄」
以上に加え、11種類のビタミン、7種類のミネラル、食物繊維、葉酸、不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)、オリゴ糖もバランスよく含まれています。
ただし、この粉ミルクの食品ラベルを見ると、「アレルギー表示」の欄に「乳成分」と「大豆」とありますから、該当する方はご注意ください。
牛乳の約1.5倍のたんぱく質を含む「大人向け粉ミルク」も
森永乳業に続き、2017年には雪印ビーンスタークから、母乳や育児用粉ミルクの研究から生まれた大人向け粉ミルクとして「雪印 プラチナミルクfor バランス」が売り出されています。
このプラチナミルクには、牛乳の約1.5倍の「たんぱく質」が含まれています。
加えて、「12種類のビタミン」「カルシウム」や「鉄」「亜鉛」など8種類のミネラル、さらには体内では生成できないため食事などで補給するしかない不飽和脂肪酸の「DHA(ドコサヘキサエン酸)」もバランスよく配合されているのが特徴です。
この製品も、食品ラベルの「アレルギー表示」の欄に「乳成分」と「大豆」とありますから、該当する方はくれぐれもご注意ください。
不足しがちな栄養素を補える「大人向け粉ミルク」
大人向け粉ミルクは、以上紹介した3点の他にも、さまざまな種類があります。
数あるなかからどの商品を選ぶかは、毎日の食生活を振り返り、自分に不足しがちな栄養素を把握したうえで、その栄養素が含まれている大人向け粉ミルクを選ぶといいと思います。
骨粗鬆症予防にも活用
たとえば、牛乳は手軽で貴重なたんぱく源であると同時にカルシウムの補給には欠かせない食材です。
特に女性の場合、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防にはたんぱく質とカルシウムの補給が必須です。
骨粗鬆症は、更年期を過ぎた女性に多い病気として知られていますが、最近は、20代、30代の女性でも、あるいは男性であっても、減食ダイエットを経験していると、骨粗鬆症になりやすいことがわかっています。
このようなリスクがある方で、牛乳は苦手という方は、たんぱく質やカルシウムに加え、カルシウムの吸収を助けて骨の健康を保つうえで必要なビタミンDも補える大人向け粉ミルクを選ぶといいでしょう。
また、胃の切除手術を受けている方や生理がある世代の女性、また肉類や魚類の摂取量が少ない方は、不足しがちな鉄分も補えるタイプの大人向け粉ミルクがおススメです。
フレイル予防のために利用したいが、水やお湯に溶かして飲むよりもスープ類に加えたいとか、料理に使いたいという方もいるでしょう。このような方は、料理の味を変えない「ミルク生活」のような味なしタイプがいいのではないでしょうか。
なお、牛乳や乳製品はNGという方のカルシウム補給についてはコチラの記事も参照してみてください。
