眼鏡型拡大鏡はスマホ老眼の若者にも人気ですが……
普通の眼鏡のようにかけて使える「眼鏡型拡大鏡」、いわゆる「〇〇〇ルーペ」や「眼鏡型〇〇拡大ルーペ」を愛用していませんか?
加齢とともに手元が見えにくくなってきたという「老眼」の方に利用者が多いと聞きます。
加えて、若い世代でも、スマートフォンやパソコン画面の見過ぎによる、いわゆる「スマホ老眼*」対策として、老眼鏡代わりにこの拡大鏡を使っている方が少なくないのではないでしょうか。
この眼鏡型拡大鏡について、国民生活センターが2月4日、「視力や老眼を矯正できるものではありません」
「使い方を誤ったために、転倒・骨折したケースも発生しています」と、誤った使い方をしないようWebサイトで広く一般に注意を呼びかけています。
全国から眼鏡型拡大鏡に関する相談が寄せられる
「ルーペ」とも呼ばれる「拡大鏡」は、本や新聞を読む、針孔(はりあな)に糸を通す、そしてスマホの画面を見るなど、手元、つまり手が届く範囲内にあるものをレンズで拡大して見るための道具です。
この拡大鏡にはいくつかタイプがあります。
その一つに、両手を自由に使えるよう、眼鏡のようにかけて使用できるものがあります。
いわゆる「眼鏡型拡大鏡」です。
眼鏡のようにかけて使えてとても便利ですが、本来拡大鏡というのは、老眼鏡とはまったく違うものです。
そのため、老眼鏡と混同して一歩使い方を誤ると、「こんなはずでは……」といったことになりがちです。
「拡大されて見えない」「目がチカチカする」「歩行中に転倒した」
実際、全国の消費者生活センターなどには、2015年度以降、さまざまな相談や苦情が寄せられているとのこと。
相談や苦情の内容は以下のものが多く、その数は2020年10月末時点で、419件(男性44%、女性56%)にのぼっているそうです。
- (商品に)表示されている倍率どおりに拡大されて見えない
- ピントが合わなかったりぼやけたりして、明瞭に見えない
- 使用中に目がチカチカして、気分が悪くなったり、吐き気を催うした
- 着用したまま歩行していて転倒し、骨折した
国民生活センターがメガネ型拡大鏡の商品テストを実施
消費者センターなどから上記のような報告を受けた国民生活センターは、眼鏡型拡大鏡の「見え方」について商品テストを実施しています。
商品テストの対象とされたのは、ネット通信や大手ショッピングモールなどで売れ行きが上位の28銘柄です。
28銘柄については、製造または販売者名、表示倍率、購入価格等のリストを、国民生活センターのWebサイトで見ることができます*¹。
商品テストの結果、「ものの見え方」について、以下の点が確認されたと報告しています。
- 全銘柄とも、レンズの焦点距離(見る距離)が5㎝から51㎝に設定されていて、
手が届く範囲内であれば対象物は拡大されてはっきり見ることができた - 全銘柄とも、表示されている焦点距離より離れている対象物は明確には見えなかった
- 全銘柄とも、表示されている倍率どおりには拡大されて見えなかった
- 全銘柄とも、表示されている倍率どおりに拡大して見るためには、
その商品(眼鏡型拡大鏡)をかけたうえで、対象物との距離を縮める必要があった - 全銘柄とも、手が届く範囲内にある対象物を見る場合も、
人によっては眼精疲労や複視(一つの物が二重に見える)を引き起こす可能性があった
眼鏡型拡大鏡の取扱説明書に適正な使い方の記述がない
さらに国民生活センターは、商品テストを実施した28銘柄の眼鏡型拡大鏡について、各商品のパッケージや同封されている取扱説明書、ネットの通信販売サイトにおける表示についても調査を実施。
その結果、以下の点が確認されたことを報告しています。
- インターネット通信販売で購入した銘柄のなかに、商品パッケージや取扱説明書に、
商品名、製造または販売者名のいずれも記載されていないものがあった - インターネット通信販売で購入した銘柄のなかに、商品のパッケージや取扱説明書、
さらには販売サイトにも、使用上の注意点などが記載されていないものがあった - 全銘柄とも、どのようにしたら表示倍率どおりに拡大して見ることができるのか、
その方法が明確には記載されていなかった - 眼鏡型拡大鏡は手が届く範囲内(ピントが合う範囲内)での作業には適しているが、
ピントが合わないほど離れた距離から見ることには適していないことを、
イメージ画像で紹介している銘柄が二つだけあった
眼鏡型拡大鏡は自分の目に合ったものを選ぶ
以上の28銘柄に関する商品テストや説明書等の調査結果から、国民生活センターは消費者に対し、メガネ型拡大鏡を使用する際には以下の点に留意するよう呼びかけています。
- 眼鏡型拡大鏡は手元のものを拡大して見るための道具としてのみ使用する
- 老眼鏡代わりには使わない
- 手の届く範囲外にあるものを拡大鏡で見ると、見え方が通常とは異なるため、眼鏡型拡大鏡をかけたまま歩いたりすると、転倒したり階段を踏み外したりするリスクがある
- 自分の目や見え方、使用目的に合っているものを購入する
- 使用していて見え方や目に異常を感じたときは使用を中止する
老眼鏡に眼鏡型拡大鏡を重ねて使う
眼鏡型拡大鏡について同センターは、眼科専門医にコメントを求めています。
その1人、福下公子眼科専門医(東京都眼科医会・会長)は、老眼代わりに自分の目に合っていない拡大鏡を使い続けることについて、こう警告しています。
「見え方に異常が生じて気持ちが悪くなったり、目がチカチカする、目がかすむ、目の奥が痛くなるなど、眼精疲労の諸症状を引き起こす可能性があります」
そのうえで、老眼の方が眼鏡型拡大鏡を使用する方法として、このようにアドバイスしています。
「自分の目に合ったオーダーメイドの老眼鏡でピントを合わせたうえで、眼鏡型拡大鏡を重ねて使用すれば、すでにピントはあっているため対象物にピントが合った状態で拡大して見ることができます」
なお、オーダーメイドの老眼鏡を作るには、以下の3点を厳守すれば安心です。
- まずは眼科専門医、あるいは眼科医の診察を受ける
- 自分の目(視力や左右差、焦点距離など)や使用目的(新聞や本を読むとき専用か、パソコン作業などで長時間使うのか)に適した眼鏡の処方を受ける
- その処方箋を持参して眼鏡専門店で作成してもらう
老眼鏡の購入費が医療費控除の対象に
また、医師の処方箋をもとにオーダーメイドの老眼鏡を購入する際は、その購入費が医療費控除の対象となることがあります。
購入の際は、その適否について主治医などに確認し、処方箋のコピーなどを保存して置くことをおススメします。詳しくはこちらを。

参考資料*¹:国民生活センター「眼鏡型の拡大鏡による見え方―視力・老眼等を矯正できるものではありません」