子宮頸がん予防にワクチンのキャッチアップ接種を

予防接種ニュースから

子宮頸がんには予防ワクチンがあるのですが……

この時期「ワクチン」と聞けば、とっさに頭に浮かぶのは新型コロナウイルスのワクチンでしょう。
しかしここでは、子宮頸(けい)がんワクチンの話をしたいと思います。

ご承知のように、子宮がんには、子宮頸がんと子宮体(たい)がんとがあります。

子宮を二つにわけると、入り口付近の膣(ちつ)に続くほうに発生するのが子宮頸がん、その奥の、卵管とつながる部分に発生するのが子宮体がんです。

このうち20代から30代の若い女性の間で急増している子宮頸がんには、予防のためのワクチンがあります。

このワクチンの効果について、2020年10月、スウェーデンの研究チームが、10~30歳の女性がワクチン接種を受けると、がんを発症するリスクが63%減少し、17歳未満での接種では、リスクが約9割、88%も低下するとの研究結果をまとめて発表しています。

これまで子宮頸がんワクチンについては、子宮頸がんの原因となるウイルスの感染を防ぐとするデータは、いくつか発表されていました。

しかし、がんの発症を予防する効果が実証されたとする報告は世界で初めてのこと。
それだけに、わが国における子宮頸がんワクチン接種のあり方に見直しの機運が高まっています。

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子宮頸がんワクチンで子宮頸がんの発症が半減

子宮頸がんは性交渉と関係があり、性交経験のない女性にはほとんど発症しないことがわかっています。

その原因は、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」と呼ばれるイボを作るウイルスで、子宮頸がんワクチンとしては、このウイルスの感染を防ぐワクチン、通称「HPVワクチン」が使われます。

研究チームは、スウェーデンの住民登録などを用い、2006年から2017年までの間に10歳から30歳だった女性、およそ167万人を対象に、4つのウイルスの型に有効なワクチン接種と子宮頸がんの発症との関係について追跡調査を行いました。

その結果、ワクチンを接種しなかった女性群(約115万人)で子宮頸がんと診断されたのは10万人当たり94人だったのに対し、ワクチンを接種した女性群(約53万人)で子宮頸がんと診断されたのは10万人当たり47人と半減していたというのです。

17歳未満で接種すれば子宮頸がん発症リスクが約9割低下

さらに研究チームは、年齢など条件の違いを調整したうえで、ワクチンの接種時期を17歳未満と17歳から30歳に分けて子宮頸がんの発症リスクを分析しています。

その結果、以下の2点が明らかになったそうです。
⑴ 17歳未満でワクチンを接種した場合は、発症リスクが88%低下した
⑵ 17歳から30歳までの間にワクチンを接種した場合は、発症リスクが53%低下した

以上の結果から研究チームは、次のように結論づけています。
「ワクチン接種は子宮頸がんの発症リスクを大幅に減らすことにつながることが示された。同時に、より若い年齢で接種すると、効果はより高いことも確認された」

我が国の子宮頸がんワクチン接種率は0.3%

子宮頸がん予防のためのHPVワクチンの定期接種は、現在70カ国で実施されています。

わが国でも2013年4月に定期接種化され、12~16歳(小学6年生~高校1年生相当)の女子を主な対象に、国や市区町村からの公費助成により、半年の間に3回の定期接種を無料で受けられるようになっており、多くの女性が接種を受けました。

ところが、ワクチン接種後に副反応とみられる体調不良などの訴えが相次いだため、厚生労働省は2カ月後の2013年6月、公費助成による定期接種という位置づけはそのままに、HPVワクチンの積極的な接種の呼びかけを中止しています*。

この差し控え発表後も定期接種は継続されていて、12~16歳の女子は公費(無料)でHPVワクチンを接種できるようにはなっています。

しかしながら、副反応を伝える報道やワクチン接種の積極的推奨中止の影響は大きく、当初は約70%あった国内のHPVワクチン接種率が、現在では1%以下の0.3%にまで落ち込んでいます。

*積極的接種の呼びかけを中止して8年になる子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)について、田村厚生労働大臣は9月17日、方針の見直しを検討する審議を開始することを発表している。審議内容によっては来年度(2022年4月)から再開する可能性も。
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子宮頸がん患者の若年化が進んでいる

厚生労働省によれば、国内では年間約1万人が子宮頸がんに罹患し、約3000人がこの病気で亡くなっており、女性特有のがんとしては乳がんに次いで多くなっています。

子宮頸がんの罹患率・死亡者数とも2000年以降横ばい状態が続いているものの、年代別の罹患率は年々若年化が進んでいます。

こうした現状から、現在国内では、HPVワクチン接種に対する国の方針に見直しを求める声があがっています。

子宮頸がんは性交渉によるウイルス感染が原因で罹患します。

そのためHPVワクチンは性交渉を経験する前の段階、つまりHPVに感染していない10代前半に接種すると、より予防効果が期待できるとされています。

そこで国としては、公費助成によるワクチン定期接種(3回接種)の対象を12~16歳としているわけです。

紹介しているスウェーデンの研究でも、17歳未満でワクチンを接種したほうが17歳以降に接種した場合より、子宮頸がんの発症リスクは低いことが実証されています。

子宮頸がんワクチンのキャッチアップ接種

一方で、未婚、既婚に関係なく、HPVワクチンを接種したことがなく、すでに性交渉の経験があるという成人女性は、今更ワクチンを接種しても意味がないと考えがちでしょう。
ところが、必ずしもそうではないようです。

これはHPVワクチンだけでなくすべての予防接種に共通することですが、「キャッチアップ接種」と言って、設定された接種期間内にワクチンを接種できなかった人が後から接種しても免疫獲得の遅れを取り戻す、つまりキャッチアップすることができるのです。

HPVワクチンの場合で言えば、実際、定期接種の対象年齢から外れていても、産婦人科や小児科、内科などを受診して自費(1回16,500円前後×3回)でHPVワクチンを受ける女性は少なくないと聞きます。

ただ、大学生など20代、30代の女性に自費診療でかかる約5万円は負担が大きすぎて、
「HPVワクチンを打ちたいが高すぎて難しい」との声が多いのも事実のようです。

そこで、産婦人科医や小児科医らが中心となり、子宮頸がんワクチンキャッチアップ接種の機会を求めるキャンペーンとして、「HPVワクチン for me」の署名活動も始まっています。

HPVワクチンを接種する機会を逃した若者たちに無料でキャッチアップ接種できるチャンスを、というのが、このキャンペーンの主旨です。詳しくはこちら*¹を。

気になるHPVワクチン接種後の副反応については、
厚生労働省がWebサイトの「HPVワクチンQ&A」*²で詳しく紹介しています。

参考資料*¹:HPVワクチン for me

参考資料*²:厚生労働省「HPVワクチンQ&A」