ウォーキングによる脳への衝撃が脳を活性化
ウォーキングやジョギングは有酸素運動の代表格です。
特別な場所も道具も必要なく、いつでもどこでも手軽に始められることから愛好者は多く、早朝やランチタイムなどに歩いたり軽く走ったりしている方をよく見かけます。
これらの有酸素運動は、脂肪の燃焼効率が高く、内臓脂肪の減少が期待できるため、多くの方がダイエットやメタボ予防を目的に取り組んでいるようです。
この、ダイエットやメタボ予防以外にも、思わぬ効果が期待できることもわかっています。
ウォーキングなどで足が地面に着地するときに骨に加わる衝撃が、骨細胞を刺激して骨の強度や骨密度(骨量)を高め、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防につながるというのです。
さらに興味深いことに、最近の研究では、足が着地するときの適度な衝撃が頭部(脳)にも伝わり、その刺激が脳機能の活性化をもたらして脳機能を高めることが確認されています。
この結果から、研究チームは、「ウォーキングやジョギングの衝撃が骨と脳の健康にいい」として、「1日最低でも10分は骨や脳に適度な衝撃が加わる運動を習慣として続ける」ことを奨励しているのです。
今回は、認知症予防の観点からも見逃せない、「脳機能の活性化をもたらし脳機能を高める」というウォーキングやジョギングの健康効果を紹介しておきたいと思います。
一歩を踏み出すときの衝撃が脳を刺激し、活性化
ウォーキングやジョギング、あるいは階段(踏み台)昇降運動(「ステップエクササイズ」ともいう)のような有酸素運動は、上下動と呼ばれる飛んだり飛び跳ねる動きを伴います。
この飛んだり飛び跳ねたりする一歩一歩の動きのなかで、足が地面に着地する際に、適度な衝撃(力)が全身の骨や頭部に伝わります。
この衝撃が、適度な刺激となり、骨や脳の健康を維持するうえで重要な役割を果たしていると考えた研究チームは、マウスやラットを使って、まず脳への影響を調べる実験を行っています。
その結果、ウォーキングなどの運動により頭部に適度な衝撃が加わると、脳の細胞を刺激して脳機能を活性化させ、脳の健康維持に役立つことが確認できたというのです。
この研究を行ったのは、国立障害者リハビリテーションセンター研究所と東京大学大学院、東京都健康長寿医療センターなどとの共同研究チームです。
研究成果は、アメリカの科学誌『iScience』(2020年1月31日オンライン公開)に掲載されています*¹。
なお、脳の活性化については、「外部の脳」といわれる「手を動かすこと」が「脳を動かす」ことになり、脳の血流をアップさせるという話をこちらで紹介しています。読んでみてください。
着地時の衝撃を脳に伝えるには正しいウォーキングフォームで
ところで、たとえばウォーキングにおいて、一歩一歩足が地面に着地するときの衝撃は、体重のおよそ1.3~1.5倍に相当すると考えられています。
仮に体重が50㎏あるとして、一歩の着地で約75㎏というかなりの衝撃が発生することになります。
これだけの衝撃をきちんと脳に伝えるには、普段の歩きや散歩とは異なり、発生する衝撃がきちんと脳に伝わるように、フォームを意識しながら歩くことが大切です。
フォームを気にせずに歩いて間違った体重移動をしてしまうと、骨や脳に伝わるべき衝撃が体の一部分に逆に負荷となってかかり、そのため膝を痛めたり足首を捻挫するおそれがあります。
正しい体重移動をするためのウォーキングフォーム
正しい体重移動をするためには、正しいウォーキングフォームを守ることが大切です。そのポイントとして、厚生労働省は以下をあげています*²。
- 体の余分な揺れを防ぐために頭を無駄に動かさない
- 顎を軽く引き、目線はまっすぐ15㎝ほど前方を見るイメージで
- 呼吸は自分の自然なリズムで歩く
- 肩の力を抜き、リラックスして軽快に歩く
- 肘を軽く曲げて腕を大きく振る
- 腰の回転を意識して歩幅を広げる
- 膝を伸ばしてかかとから着地する
- かかとから着地し、体重を親指のつけ根へと移動させ、つま先で大地をしっかりキックする
地面に着地したときの衝撃を脳に刺激としてしっかり伝えるには、「8」にある足裏の働きが重要です。
実際にやって見ると実感できるのですが、特に意識することなく、自然に足を踏み出すと、かかとから地面に着地するはずです。
このとき歩幅はやや広いほうがいいようですが、歩幅を広くするには腕を大きく振るのがポイントです。
かかとで着地したあと、かかとからつま先へと重心が移動し、最後に親指と親指のつけ根で地面を踏み込むようにして重心を前に移動させると、衝撃がうまく伝わります。
ウォーキングシューズはかかと部分がしっかりしたものを選ぶ
着地したときかかとに体重以上の衝撃がかかることを考えると、ウォーキングシューズも、特にかかとがしっかりしたものを使うことをおススメします。
ウォーキングシューズを選ぶ際のチェックポイントとしては、以下があげられます*³。
- かかと、つま先、足の甲などに靴ずれを起こしそうな心配はないか
- 指先が余裕をもって動かせるか
- かかとの部分がしっかりと包み込まれているか
- (クッション)パットが土踏まずにフィットしているか
- かかとの部分の靴底は少し広めで十分にショックを吸収できる厚さがあるか
ウォーキングに期待できる健康効果
なお、ウォーキングが心身にもたらす効能として、日本ウォーキング協会は次の9点をあげています*⁴。
- 心臓・血管強化作用
- 脳活性化効果
- 免疫力増強効果
- リラックス効果
- 快調快眠快通(大腸活性化により通じをよくする)効果
- 骨太効果
- メタボ予防・改善効果
- 悪玉(LDLコレステロール)追放効果
- 貯筋・正姿(正しい姿勢が保たれる)効果
このうち「7」の内臓脂肪を燃やすメタボ予防・改善効果を期待できる運動については、
こちらの記事で詳しく書いていますので、是非一度のぞいてみてください。
参考資料*¹:国立障害者リハビリテーションセンター病院 プレスリリース(2020年2月3日)
参考資料*²:厚生労働省「ウォーキングフォームのポイント」
参考資料*³:厚生労働省「ウォーキングシューズの選び方」
参考資料*⁴:日本ウォーキング協会「人も社会も元気にするウォーキングの効用と魅力」