野菜不足の方は「現代型栄養失調」に注意して

野菜体調が悪い?
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普通に食事をしているが元気が出ない「現代型栄養失調」

高齢者に低栄養のリスクが高いことはよく知られています。とりたてて健康上の課題がなくても、年を重ねるにつれて食が細くなってくることが主な原因です。

ところが最近になり、「1日3食きちんと食べているのに体調がすぐれない」という方が、年齢に関係なく、特に女性の間で増えているようです。

これが、このところよく耳にする「現代型栄養失調」と呼ばれる状態です。

ダイエットをしているわけでもないし、栄養バランスや食品の品質に自分なりに気をつけているのに、「なかなか疲れがとれない」「元気が出ない」――。

このような状態は、糖質や脂質は足りていてカロリーは摂れているものの、体調をいい状態で維持していくうえで必須のたんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維といった栄養素が不足していることをうかがわせます。

もし多少でも思い当たるふしがあるようなら、現代型栄養失調を疑って、ご自分のこれまでの食生活を見直してみてはいかがでしょうか。

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1日350g以上の野菜と現代型栄養失調

自分としては日々の食事にかなり気を使っているつもりでも、必要な栄養素を過不足なく摂り続けることは意外に難しく、栄養的な偏りによる現代型栄養失調に陥りがちです。

とりわけ不足しがちなのが、ビタミンやミネラル、さらには食物繊維の補給に必須の野菜類です。

厚生労働省は、糖尿病や肥満、高血圧などの生活習慣病を予防し、健康的な生活を維持していくための食生活における目標値の1つに「野菜を1日350g以上食べましょう」*を掲げています。

これを受けて多くの人が、意識して野菜を食べるようになってはいるものの、「2018年国民健康・栄養調査」を見ると、1日の野菜類摂取量の平均値は、成人男性で約290g、成人女性で約270gで、目標値とされている350gには足りていないことがわかります。

この不足はどの世代にも共通しているのですが、とりわけ20~30代は男性で約260g、女性で約240gと、男女ともに平均より30gほど、また目標値より100g近く低い値になっています。

あなたはどうでしょう。目標値の1日350g以上の野菜を毎日摂っているでしょうか。

*厚生労働省は「野菜350g」の目安を理解してもらおうと、代表的な料理に含まれる野菜の量をイラスト化して紹介している。そこでは、野菜の摂取量を増やすコツとして、「毎食副菜を摂る」「主菜の付け合わせを増やす」「具だくさんな汁物をつくる」ことをあげている*¹。

現代型栄養失調予防に旬の野菜をたっぷり摂る

野菜類には、26種類にもなるビタミンやミネラルが豊富に含まれています。それらすべての栄養素は、主要栄養素である糖質や脂質、たんぱく質の消化吸収に重要な働きをして、体の調整役を担っています。

このことを意識して、これまで以上に野菜類をたっぷり摂ることを心がけたいものですが、なかには、野菜類はどうも苦手で食べる量を増やす自信がないという方もいるでしょう。

そんな方には、季節によってたくさん出回る「旬(しゅん)」の野菜を中心に摂ることをおススメします。

旬の食材は、1年を通して常にあるものに比べ、比較的安価で手に入ります。しかも栄養価が高く、その季節に見合った体調を整える力をもっています。

そのため、食べられる量が少なくても、栄養価としては十分補うことができるのです。

とはいえ、最近はハウス栽培や水根栽培の普及に加え、栽培技術自体も進歩しており、旬に関係なく1年中いろいろな野菜が手に入るようになっていますから、どの野菜が旬なのか区別がつきにくくなっています。

そんな方は恥ずかしがらずに野菜屋さん、またスーパーなら野菜コーナーの担当者に聞けば、「今の旬」を教えてもらえるはずです。あるいは、農林水産省のWebサイト*²でも「旬の野菜」を紹介していますので、参考にされたらいいでしょう。

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栄養分を無駄にしない調理方法で現代型栄養失調を防ぐ

野菜類に含まれているビタミンやミネラルのなかには、調理方法を間違えると、その段階で無駄になってしまうものがあることも知っておきたいものです。

その辺のことは、すでに重々承知して日々の食事作りをしている方もいらっしゃると思いますが、代表的なものを3点だけあげておきたいと思います。

  1. ブロッコリーやほうれん草に多く含まれる水溶性ビタミンは、水や空気、さらには熱にも弱い。
    購入後は鮮度の高いうちに調理するか、保存する場合はできるだけ空気に触れさせないようにする。
    水溶性ビタミンはゆでたり水にさらしたりすると流れ出てしまう。手早く洗い、ゆでるときの水は極力少量にして、加熱時間をできるだけ短くする。
  2. にんじん、かぼちゃ、トマトなどに多く含まれる脂溶性ビタミンは、「脂溶性」の言葉どおり油に溶けて吸収される。そのため、油炒めにするとか、サラダとして食べる場合はノンオイルではなくオリーブオイルのドレッシングで食べるとより栄養価が高まる。
  3. 野菜類が備えている栄養価を体内に最大限取り入れるには、「鮮度」と並び「熟度」も大切。
    とりわけトマトやアボカド*などを購入するときは、色づき具合をよくみて熟度の高いもの、つまりよく熟しているものを選ぶようにする。

トマトについては、生のまま食べるよりオリーブオイルで加熱調理すると、トマトに含まれる「リコピン」効果が倍増して健康効果がよりアップする、という話をこちらで書いています。読んでみてください。
⇒ トマトはオリーブオイルと食べるのが大正解

*アボカドは国内に流通している90%以上をメキシコ産が占めている。メキシコでは年間を通して収穫されているが、旬は5~7月。この時期に収穫されたものは、脂分、特にリノール酸やリノレン酸などの不飽和脂肪酸が多く、中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす効果が期待できる。
ただし、普通サイズのアボカド1個が250kcal前後と、ほぼご飯1膳分(160g)に匹敵するため、カロリーオーバーには注意が必要。
アボカドの栄養価や効用については,こちらで具体的に紹介しています。
⇒ 「アボカド」の美容効果をご存知ですか?

調理済み食品に手づくりの1皿を添えて野菜の補給を

私たちを取り巻く食環境は、時代とともに大きく変化してきています。その、進化とも言える食環境の変化が、私たちの食生活に手軽さや便利さとしてプラスに働いていることは否定できないでしょう。

反面、マイナスの側面も意外と多く、このことが現代型栄養失調の発生に大きく関係していそうです。

たとえば、最近増えている共働き世帯には、コンビニのお弁当や総菜類を食卓に並べるだけで夕食にしているケースが少なくないという話をよく見聞きします。

また、長期保存が長くなれば、そのぶん栄養価は減少します。さらには、長持ちさせるために味つけは濃くなり、糖質や脂質、塩分の多い食事になってしまう傾向があります。

レトルト食品や冷凍食品のような加工食品や添加物の多い超加工食品も、忙しいときには強力な助っ人です。

実際、私も時々利用しますが、高温・高圧処理の加工段階で、あるいは冷凍段階で栄養価がかなり減少していることを意識しつつ使うようにしています。

現代型栄養失調の予防や改善のためにも、毎日の食卓には、調理済みの食品に、新鮮な野菜を使った手作り料理を一皿加えることを心がけたいものです。

たとえば、ビタミンB1不足による「脚気(かっけ)」は過去の病気と思われがちですが、このところのインスタント食品のような調理済み食品の普及により、若者を中心に増えていて、注意が必要です。詳しくはこちらを読んでみてください。

ビタミン不足による脚気(かっけ)は今もある
ビタミンB1不足による「脚気(かっけ)」は食糧難だった過去の病気と考えがち。だが、インスタント食品や調理済み食品に頼るという偏った食生活を続けていると、脚気や「隠れ脚気」「脚気予備軍」に陥りがち。疲れやすい、足がしびれるなどの症状チェックを。
野菜ジュースなどでお馴染みの食品メーカー「カゴメ」は、ホームページ上で「あなたの野菜不足度診断」のコーナーを設けています。セルフチェックに活用してみてはいかがでしょうか。

参考資料*¹:厚生労働省「野菜は1日350g食べましょう」

参考資料*²:農林水産省「知っているかな?! やさい・野菜・Vegetables」