今もあったビタミンB1不足による「脚気」

インスタント食品食と健康

過去の病気ではない「脚気」、「隠れ脚気」「脚気予備軍」も

この暑さで食事が疎かになっていないでしょうか。

そこで思い出していただきたいのが「脚気(かっけ)」です。
ビタミンB1が不足すると起こる病気です。

さかのぼること明治の時代、当時の厳しい食糧難を反映し、来る日も来る日も白米だけの食事を余儀なくされていた海軍の水兵さんや江戸に暮らす多くの庶民が苦しめられた病(やまい)として知られています。

脚気は、ビタミンB1を含む食材を食べてさえいれば問題にならない病気です。

ですから、食糧事情が大幅に改善され、多くの人が栄養バランスを意識して食事をするようになっている現代では、まず起こり得ないだろうと考えがちです。

ところが最近、この病気で受診したり、救急搬送される患者が徐々に増えていると聞きます。

よほどの偏食や極端な減食でもしないかぎり、脚気になることはまずないはずなのですが……。

カップ麺などのインスタント食品やコンビニの白おにぎり、あるいはスナック菓子と清涼飲料水だけで食事を済ましている人のなかには、「隠れ脚気」や「脚気予備軍」に該当するような人が少なくないと言われています。

ということで今回は、過去の病気ではない脚気について書いてみたいと思います。

スポンサーリンク

留置施設の弁当が原因で成人男性4人が脚気に

しばらくその存在すら忘れていた脚気を思い出させるニュースが流れたのは、1年半ほど前のことでした。

埼玉県内で留置されていた4人の男性被告人(いずれも20~30代)が脚気と診断されたというのです。

4人が訴えていた体のだるさや足のしびれ、歩行困難といった症状は、医師の処方によるビタミン剤の服用などにより、すぐに快方に向かったとのこと。

この報に、まずは一安心したものの、
「提供していた仕出し弁当が原因とみられる」との続報を聞き、改めて驚かされました。

4人が食べていた弁当は、この留置施設と提携している同市内の弁当業者から調達したものだというのです。

弁当業者が用意したものなら、品数は豊富だろうから栄養面で問題はないだろうと、誰もが思うでしょう。

ところが、1日当たりの栄養素を詳しく調べたところ、ビタミンB1の含有量が成人男性の摂取目安量の3分の1ほどしかない日もあったというのです。

疲れやすさや足のしびれ・むくみも脚気の症状

脚気になると、あるいはその予備軍では、次のような症状が現れます。
▪全身倦怠感(けんたいかん)と呼ばれる体のだるさ
▪疲れやすさ
▪手足のしびれや足の浮腫(むくみ)

ビタミンB1は、皮膚や粘膜の健康保持に欠かせない栄養素ですが、体内に送り込まれた糖質(炭水化物)の消化を助け、エネルギー代謝を促すという重要な働きもしています。

ビタミンB1が不足すると、糖質をエネルギーに変える働きが低下し、エネルギー不足からイライラしたり、体がだるくなったり、疲れやすくなったりするわけです。

また、ビタミンB1は末梢神経の働きを正常に保つうえで重要な働きをしています。

ビタミンB1が不足してくると、末梢神経の働きも低下してきますから、末梢神経障害として、足がしびれたりむくみが出たりして足元がおぼつかなくなり、歩行に支障をきたすようになってきます。

さらに重症化すると心不全を引き起こし、動悸や息切れを感じるようにもなってくるというのです。

スポンサーリンク

膝の下を軽く叩いて脚気を自己チェック

毎日の食事がインスタント食品や調理済み食品に偏りがちで、なかなか疲れがとれなかったり、なんとなく足がしびれたりむくんだりしているという方、あるいは連日のように飲酒している方*は、脚気を疑って、一度「膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)テスト」で自己チェックしてみるといいでしょう。

*アルコールの代謝にはビタミンB1が多く使われる。また、アルコールの飲み過ぎで食事が疎かになり、そのために栄養バランスを崩してビタミン不足を招きやすい。

膝蓋腱反射テストとは、椅子に腰掛けて両脚をだらりと下げた状態で、膝の下のくぼみ部分を軽くたたき、その反射で足が前方へ跳ね上がるかどうかを調べる方法です。

跳ね上がりの反射が見られない場合は、脚気を疑ってみる必要があります。
早めに内科、できれば内分泌科(ないぶんぴつか)を受診することをおススメします。

主食の白米を胚芽米や玄米に替えてビタミンB1不足を防ぐ

ビタミンB1をはじめとするビタミンB群は水溶性、つまり水に溶けやすいビタミンです。

そのため、仮に余分に摂取しても必要量をオーバーした分は尿中に排泄されてしまい、体内に蓄積されることはほとんどありません。

したがって、過剰摂取によるマイナスの影響を心配する必要はないのですが、体内に備蓄することができませんから、毎日の食事でコンスタントに摂り続けることが不可欠です。

ビタミンB1は、もともと米ぬかから発見された栄養素で、胚芽米や玄米といった精米する前のお米に多く含まれています。

そこで、白米を主食として摂ることが多い日本人の食習慣からすると、白米を胚芽米や玄米に切り替えるのが、ビタミンB1不足を防ぐうえで最も手っ取り早く、かつ確実な方法のようです。

「私の主食はお米よりパンが多いから」という方もいるでしょう。
その場合は、玄米パンなどに切り替えてみてはいかがでしょうか。

最近では、玄米や胚芽米も簡単に手に入るようになってきています。
玄米などは白米に比べ炊飯の手間がかかるからと敬遠されがちですが、普通の炊飯器で白米と変わりなく炊ける玄米や発芽米も広く出回っています。

あるいは、このところの炊飯器の進化も著しく、白米だけでなく玄米や発芽米を炊く「玄米モード」などが用意されている炊飯器が出回っていますから、それを活用するのもいいでしょう。

普通の炊飯器で玄米や発芽米を炊く方法も、ネット上で紹介されています。
ポイントは以下の2点です。
①洗った後の浸水時間を長くして(5~6時間)十分に吸水させる、
②水加減をかなり多めにする(白米の場合の1合分増やす)

ビタミンB1の吸収を助けるにんにくの活用を

ビタミンB1は、発芽米や玄米以外にも、豚肉やロースハム、うなぎ、かつお、さらには納豆などの大豆製品にも比較的多く含まれています。
これらの食材を毎日意識して摂るようにするといいでしょう。

特に四六時中体がだるく疲れが残りやすいといった方は、ビタミンB1不足を疑って、たとえば豚肉のしゃぶしゃぶなどを試してみてはいかがでしょうか。

その場合、しゃぶしゃぶ用の鍋は小さめのものを使ってスープの量を少なくし、スープに薄くスライスしたにんにくを入れることをお忘れなく。

にんにくには、アリインと呼ばれるアミノ酸の一種が含まれています。

このアリインには、ビタミンB1の吸収を助ける作用があり、吸収率は10倍になると言われていますから、ビタミンB1を効率的に摂るには欠かせない食材です。

なお、豚しゃぶをした後のスープに葉物野菜をたっぷり入れて、スープに溶け出たビタミンB1も残さずいただくようにすれば、その分ビタミンB1を十分補うことかできます。

なお、1日を通してビタミンB1をはじめとする必要な栄養素を過不足なく摂る方法については、こちらの記事も参考にしてください。

「栄養バランスのよい食事」は「まごたち食」で
「栄養バランスのよい食事を心がけてください」と言われた経験はないだろうか。新型コロナウイルスから身を守るためには栄養バランのよい食事をして免疫力を高めるように言われたりもする。この「栄養バランスのよい食事」が「まごたち食」なら簡単、という話を。