ビタミン不足による脚気(かっけ)は今もある

インスタント食品食と健康
スポンサーリンク

過去の病気ではない「脚気」、「隠れ脚気」や「脚気予備群」も

コロナ禍で食材購入のための外出も控えめだった影響で、食事が疎かになっていなかったでしょうか。「そう言えば……」と思い当たる方に是非思い出していただきたいのが、「脚気(かっけ)」という、ビタミンB1不足による病気です。

脚気はビタミンB1を含む食材を食べてさえいれば問題にならない病気です。そのため、食糧事情が大幅に改善され、多くの人が栄養バランスを意識して食事をしている現代では、まず起こり得ないと考えがちです。実際、よほどの偏食や極端な減食でもしないかぎり、脚気になることはまずないはずですが、実は最近、この病気で受診したり、救急搬送される方が徐々に増えているようなのです。

カップ麺などのインスタント食品やコンビニの白おにぎり*、あるいはスナック菓子と清涼飲料水だけで食事を済ましているような方のなかには、「隠れ脚気」や「脚気予備群」の方が少なくないと言われています。また、主菜とされるご飯やパン類、麺類などの糖質を多くとっている方や飲酒量が多い方、運動量が多くてエネルギー消費量の多い方にも潜在的なビタミンB1不足による脚気予備群がかなりいると考えられています。

ということで今回は、過去の病気ではない脚気について書いてみたいと思います。

*コンビニのおにぎり:ランチなどにコンビニのおにぎりを選ぶなら、小豆(あずき)を使った赤飯おにぎりを。小豆はビタミンB1や食物繊維、ポリフェノールなど、実に栄養豊富です。
スポンサーリンク

留置施設の弁当が原因で成人男性4人が脚気に

しばらくその存在すら忘れていた脚気を思い出させるニュースが流れたのは、1年半ほど前のこと。埼玉県内で留置されていた4人の男性被告人(いずれも20~30代)が脚気と診断されたというのです。幸い、4人が訴えていた体のだるさや足のしびれ、歩行困難といった症状は、医師の処方によるビタミン剤の服用などにより、すぐに快方に向かったと報じられています。

この報に一安心したものの、「提供していた仕出し弁当が原因とみられる」との続報に、改めて驚かされました。4人が食べていた弁当は、この留置施設と提携している同市内の弁当業者から調達したものだそうです。

弁当業者が用意したものなら、品数は豊富だろうから栄養面で問題はないだろうと、誰もが思うでしょう。ところが、1日当たりの栄養素を詳しく調べたところ、ビタミンB1の含有量が成人男性の摂取目安量の3分の1ほどしかない日もあったというのです。

疲れやすさや足のしびれ・むくみも脚気の症状

脚気になると、あるいはその予備群では、次のような症状が現れます。

  • 全身倦怠感(けんたいかん)と呼ばれる体のだるさ
  • 疲れやすさ、わけもなくイライラする
  • 手足のしびれや足の浮腫(むくみ)

ビタミンB1は、皮膚や粘膜の健康保持に欠かせない栄養素です。また、体内に送り込まれた糖質の消化を助けてエネルギーに変えるうえでも重要な働きをしています。

ビタミンB1が不足すると、糖質をエネルギーに変える働きが低下するため、エネルギー不足からイライラしたり、体がだるくなったり、疲れやすくなったりするわけです。摂取エネルギーのおよそ半分をご飯などの糖質からとっている日本人には、とても重要なビタミンです。

また、ビタミンB1は末梢神経の働きを正常に保つうえで重要な働きをしています。ビタミンB1が不足してくると、末梢神経の働きも低下してきますから、末梢神経障害として、足がしびれたりむくみが出たりして足元がおぼつかなくなり、歩行に支障をきたすようにもなってきます。

さらに重症化すると心不全(心臓のポンプ機能が低下して、全身のあらゆる臓器に必要なだけの血液を送り出せなくなる)を引き起こし、動悸や息切れを感じるようにもなってくるというのです。

スポンサーリンク

膝の下を軽く叩いて脚気を自己チェック

毎日の食事がインスタント食品や調理済み食品に偏りがちで、なかなか疲れがとれなかったり、なんとなく足がしびれたりむくんだりしているという方、あるいは連日のように飲酒している方*は、脚気を疑って、一度「膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)テスト」で自己チェックしてみるといいでしょう。

*アルコールの代謝にはビタミンB1が多く使われる。また、アルコールの飲み過ぎで食事が疎かになり、そのために栄養バランスを崩してビタミン不足を招きやすい。

膝蓋腱反射テストとは、椅子に腰掛けて両脚をだらりと下げた状態で、膝の下のくぼみ部分を軽くたたき、その反射で足が前方へ跳ね上がるかどうかを調べる方法です。

跳ね上がりの反射が見られない場合は、脚気を疑い、早めに内科、できれば内分泌科(ないぶんぴつか)を受診することをお勧めします。

主食の白米を胚芽米や玄米に替えてビタミンB1不足を防ぐ

ビタミンB1をはじめとするビタミンB群は水溶性、つまり水に溶けやすいビタミンです。そのため、仮に余分にとっても必要量をオーバーした分は尿中に排泄されますから、体内に蓄積される心配はまずありません。

したがって、過剰摂取によるマイナスの影響を心配する必要はないのですが、体内に備蓄することができませんから、毎日の食事でコンスタントにとり続けることが不可欠なのです。

ビタミンB1は、もともと米ぬかから発見された栄養素で、胚芽米や玄米といった精米する前のお米に多く含まれています。そこで、白米を主食としてとることが多い日本人の食習慣からすると、白米を胚芽米や玄米に切り替えるのが、ビタミンB1不足を防ぐうえで最も手っ取り早く、かつ確実な方法のようです。

「私の主食はお米よりパンが多いから」という方もいるでしょうが、その場合は、玄米パンなどに切り替えてみてはいかがでしょうか。

最近では、玄米や胚芽米も簡単に手に入るようになってきています。玄米などは白米に比べ炊飯の手間がかかるからと敬遠されがちですが、普通の炊飯器で白米と変わりなく炊ける玄米や発芽米も広く出回っています。あるいは、このところの炊飯器の進化は著しく、白米だけでなく玄米や発芽米を炊く「玄米モード」などが用意されている炊飯器が出回っていますから、それを活用するのもいいでしょう。

普通の炊飯器の「白米モード」で玄米や発芽米を炊く方法も、ネット上で紹介されていますが、ポイントは以下の2点です。

  • お米を洗った後の浸水時間を長くして(5~6時間)十分に吸水させる
  • 水加減をかなり多めにする(白米の場合の1合分増やす)

ビタミンB1の吸収を助けるにんにくの活用を

ビタミンB1は、発芽米や玄米以外にも、豚肉やロースハム、うなぎ、かつお、さらには納豆などの大豆製品、とうもろこしに比較的多く含まれていますから、これらの食材を毎日意識してとるといいでしょう。

特に四六時中体がだるく疲れが残りやすいという方は、ビタミンB1不足を疑って、たとえば豚肉のしゃぶしゃぶなどを試してみてはいかがでしょうか。

その際は、しゃぶしゃぶ用の鍋は小さめのものにしてスープの量を少なくし、スープに薄くスライスしたニンニクを入れることをお忘れなく。

ニンニクには、アリインと呼ばれる硫化アリルの一種が含まれています。このアリインには、ビタミンB1の吸収を助ける作用があり、吸収率は6~7倍になると言われていますから、ビタミンB1を効率的にとるには欠かせない食材です。

なお、豚しゃぶをした後のスープに葉物野菜をたっぷり入れて、スープに溶け出たビタミンB1も残さずいただくようにすれば、その分ビタミンB1をたっぷり補うことかできます。

なお、1日を通してビタミンB1をはじめとする必要な栄養素を過不足なくとる方法については、こちらの記事も参考にしてください。

「まごたち食」で「栄養バランスのよい食事」を
「栄養バランスのよい食事を心がけてください」と言われた経験はないだろうか。新型コロナウイルスから身を守るためには栄養バランのよい食事をして免疫力を高めるように言われたりもする。この「栄養バランスのよい食事」が「まごたち食」なら簡単、という話を。