ゲノム編集で品質改良の高GABAトマト販売へ

トマトニュースから

ゲノム編集でGABA含有量を増量したトマトが登場

「ゲノム編集」と呼ばれる新技術を使って品質改良されたトマトの一般向け販売が9月15日、インターネット上で始まったことが報道されています。

このトマトには、血圧上昇を抑えたり、ストレスを和らげる効果が期待できるとされる「GABA(ギャバ)」という栄養成分が通常のトマトより約4~5倍多く含まれているそうです。

3キロでおよそ7,500円(送料、税込)、1粒に換算すると約38円と少々高めですが、昨今のようなストレス社会に生きる私たちにとって、新品種の「高GABAトマト」は何とも魅力的です。

とは言え、「ゲノム編集」という新しい技術で品質改良されたと聞くと、安全性への懸念から食べるのを控えがちな「遺伝子組み換え食品」をイメージさせ、いざ買うとなるとちょっと躊躇しがちです。

ゲノム編集とはどのような技術で、遺伝子組み換え技術とはどう違うのでしょうか。

また、今回の「高GABAトマト」のようなゲノム編集食品の安全性を、国はどのように確認するのかなど、気になるあれこれを調べてみました。

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ゲノム編集技術と遺伝子組み換え技術の違いは?

「ゲノム編集」や「遺伝子組み換え」と呼ばれるバイオ技術についてネット検索してみると、厚生労働省*¹や農林水産省*²のホームページに詳しい説明があります。

読んでみると、あまり馴染みのないたくさんの専門用語が出てきてわかりにくいのですが、要約するとこういうことになろうかと思います。

まず、「ゲノム」とは、私たち人間も含め、あらゆる生物がそれぞれ持っている遺伝子(遺伝情報)のすべてをひっくるめて言う言葉です。

このゲノムについて、たとえば編集者が文章を編集してより読みやすくする要領で、多数の遺伝子の中から働きがわかっている特定の遺伝子をねらい、その一部だけを切断したり遺伝子配列を変えるなどして遺伝子を改変するのが「ゲノム編集」です。

ご承知のように「遺伝子組み換え」では、個々の生物が本来持っていない別の遺伝子を外部から組み入れることにより、これまで持っていなかった性質を付け加えることになります。

しかしゲノム編集は、本来ある遺伝子の一部をピンポイントで操作するだけです。
そのため、予期せぬ変異が起きて健康に悪影響をもたらすといった心配はなく、従来行われてきた品質改良と安全性は変わらないと考えられています。

ゲノム編集でトマトの含有量が増えた「GABA」とは?

今回販売が始まったトマトは、ゲノム編集の技術を使い「GABA」を多く含むように品質改良したものです。

GABAの正式な名称は「γ(ガンマ)―アミノ酪酸」です。
この名称が示すように、GABAはアミノ酸の一種です。

もともと私たちの体内、主に脳や脊髄などの中枢神経系に多く存在していて、イライラして高まった神経細胞の働きを抑え、自律神経のバランスを調える働きをしています。

つまりGABAには、ストレスを和らげたり、興奮した神経を落ち着かせたり、リラックス状態をもたらす作用により、血圧を下げたり、熟睡を促すなどの効果が期待できるとされています。

GABAはナスやアスパラガス、かぼちゃ、キュウリなどの野菜やミカン、メロンなどの果物、さらにはキムチのような発酵食品等々、身近な食品に多く含まれています。

なかでも含有量が多いのは発芽玄米で、その量は白米の10倍に相当すると言われています。

また、米麹(こめこうじ)でつくる味噌には赤味噌と白味噌があります。
このうち白味噌は麹の含有量が多いのですが、麴にはGABAが多く含まれていて気持ちを落ち着かせて、スムーズな入眠につなぐ効果が期待できます。

したがって、夕食に味噌汁や味噌の和え物など味噌を調味料にした一品を摂るなら、赤味噌よりGABAの多い白味噌を使うことをおススメします。
→ 今さらながら、白味噌と赤味噌は何が違うの?

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ゲノム編集食品の安全性チェックポイント

トマトにも、このGABAを作り出す遺伝子がもともと備わっています。
ところが、水が少ないなど特殊な環境以外ではGABAの生成が抑制されてしまうのです。

そこで、ゲノム編集によりGABAの生成を抑えている遺伝子の一部を切断したところ、見た目やサイズ、また糖度も通常のトマトと大差ないものの、GABAを通常の約5倍も含むトマトが完成した――。

これが、今回販売が開始されたトマトです。

開発したのは筑波大学発のベンチャー企業「サナテックシード」(東京・港区)で、
「シシリアンルージュハイギャバ」と名付けられ、すでに昨年(2020年)12月、食品の安全を所管する厚生労働省において安全性が確認され*、加工食品としての届出が受理されています。

なお、今回のトマトのような「ゲノム編集食品」が市場に流通する際の届出を受けると、厚生労働省は以下の2点をポイントに安全性をチェックすることが公表されています*³。

  • 新たなアレルギーの原因(アレルゲン)や有毒物質などが作られていないか
  • (毒素をなくす、ある成分を増やすなどの改変をした場合)その食品にもともと含まれる栄養素などがどう変化したか

この先も新たなゲノム編集食品が

このトマト、「シシリアンルージュハイギャバ」は熊本県内の契約農家で栽培され、パイオニアエコサイエンス株式会社(東京・港区)のサイト内にあるオンラインショップ「青空トマト学園」*⁴を通じて販売されています。

シシリアンルージュハイギャバにはゲノム編集技術による品質改良品であることを示すマークが表示され、当面は受注販売の形で希望者だけに販売されることになっています。

なお、ゲノム編集食品については、京都大学発のバイオ企業が9月17日、ゲノム編集技術により肉付きをよくして可食部、つまり食べられる部分を増やしたマダイを国に届け出ています。

これを受けて厚生労働省は会議の結果、安全性の検査は不要と判断。
近々肉厚のマダイも売り出される予定です。

参考資料*¹:厚生労働省「ゲノム編集技術応用食品等」

参考資料*²:農林水産技術会議「ゲノム編集技術」

参考資料*³:厚生労働省「新しいバイオテクノロジーで作られた食品について」

参考資料*⁴:「青空トマト学園」