「外部の脳」手の指を動かして脳の活性化を

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外出自粛などによる不活発な生活で体も脳もコロナ疲れ

新型コロナウイルスの感染対策として外出を自粛して自宅に閉じこもる生活からようやく解放されそうですが、感染を防ぐためとはいえ不活発な生活も早3年、これだけ長く続くと、どうしても体がなまるのに併せて脳も疲れ、働きがやや鈍くなってくることが気になります。

その先にあるのは、「うっかり」や「物忘れ」が多くなってくること、そして認知症です。

こうしたことは、高齢者だけの問題ではありません。40、50と歳を重ねるにつれ、程度や頻度に差はあるものの、誰もに起こりうることではないでしょうか。

そんなことを考えていて、ハタと思い出したことがあります。「手の指を動かすことが脳を動かすこと、つまり脳トレになる」という話です。

今日はそのことを書いてみたいと思います。

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「手や指を動かす」ことが脳トレになり、脳を活性化

ずいぶん前になりますが、認知症の専門医を取材したときのことです。挨拶もそこそこに、いきなりこう尋ねられたのです。

「あなたはカントという哲学者をご存知ですよね」

まったくの想定外だった質問に、「はい、名前と、ドイツの著名な哲学者だということぐらいは知っていますが……」

そう答えながら、何を聞かれるんだろかとドキドキしていると、その医師は、私の心中を読みとったのか、にこにこしながら、こんな話をしてくれたのです。

「この哲学者がとてもユニークなことを言っていましてね。手は外部の脳である、と――。つまり、手は脳の出張所だというわけです。認知症の予防を考えるうえで、これほど的を得た言葉はないと、僕は思っていましてね」

一息つくと、さらにこう続いたのです。

「要するに、手の指を細かく動かすことは脳を刺激することになる。つまり脳トレですから、脳内の血流をアップさせることになるわけです」

この説明に、「なるほど」と合点し、緊張が解けた私でした。

利き手の逆手でする「ぬり絵」が脳を活性化

ステイホームで自宅でじっとしている生活を続けていると、どうしても社会との接触が減りますから、外部からの刺激が少ない生活になり、結果として、脳もあまり使わなくなります。

そこで、カントが言うところの「外部の脳」である手の指をよく動かして、脳細胞の動きを活性化させ、脳への血流量を高めてあげれば、脳の疲労回復、さらには認知症の予防につながるというわけです。

手の指を動かしつつ頭も使う活動はいろいろあります。女性の方なら、まず頭に浮かぶのは日々の料理、クッキングでしょうか。

この料理も、既定のレシピ通りに、流れ作業的にやるのでは脳の活性化にはつながりません。

いつもとは違う食材を使ってみたり、味付けをちょっと変えて見たり、盛りつけも……と、自分なりにあれこれ考え、工夫したオリジナルの一品に、日々挑戦してみるといいでしょう。

さらに効果的な方法、つまり頭を使って手の指を動かす知的な脳トレとして最近注目されていることの1つに、「大人のぬり絵」があります。

しかもこのぬり絵を、普段使い慣れている利き手ではなく、使い慣れていない側の手で色鉛筆などを持って塗るほうが、脳細胞への刺激はより強く、したがって脳細胞はより活発に働き、脳の血流アップに資することが、実験により確認されています。

詳しくはこちらの記事を読んでみてください。

認知症予防に利き手と反対の手で塗り絵を
認知症予防は多種多様な方法が紹介されているが、「知的活動」が最も重要とのこと。それも、普段やり慣れていないことをやり慣れていない方法で行うと、脳血流はより効果的にアップし、脳機能が活性化する。おススメは、利き手と反対の手による「塗り絵」だ。

指先や手のひらへの刺激が脳細胞に伝わり脳を活性化

もう1点、脳細胞が活性化されて脳が本来の機能を発揮し、集中力や判断力が高まる脳トレとして、40代から50代のプレシニア世代と呼ばれるビジネスパーソンを中心に注目を集めているアイテムがあります。

表情筋トレーニングなどの美容機器や健康グッズで有名なMTG社のアクティブ ブレインです。

たとえば脳卒中の後遺症などで麻痺した手や指の感覚を取り戻そうと、クルミを手のひらで握ったり、手中で動かしたりするトレーニングがリハビリテーションとして行われることがあります。

クルミに替わるものとして、樹脂で作られた磁石入りのハイパークルミも市販されています。

今回おススメするアクティブブレインは、このハイパークルミをさらに進化させたものと考えていただけたらいいと思います。

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ステンレスやゴムで作られた球体状のアクティブブレインを手のひらに載せ、リズミカルに握ったり、手を開いたり、強くつかんだりを繰り返します。

この動きによる手のひらや指先への刺激が脳に伝わり、脳内の血流量がアップして脳の疲れが和らぎ、脳細胞の働きが活発化するというメカニズムです。

さらにこの球体には、全面にトータル32個のボタンが並んでいます。このボタンを指先で押すと、押されたボタンが少し傾きながらへこみ、回転する仕組みになっています。

このときのボタンを回転させようとする指先の動きが、脳にさらなる刺激を与え、脳活効果がアップして、疲れていた脳が元気を取り戻すというわけです。

なお、脳にとって唯一のエネルギー源は「ブドウ糖」です。脳を疲れさせないためには、適宜ブドウ糖を補給することをお忘れなく。

脳とブドウ糖の関係、糖質の種類とブドウ糖などについてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ一度読んで、お役に立てていただけたら嬉しいです。

脳が疲れる前にブドウ糖でエネルギーチャージ
「糖質オフダイエット」が流行っているが、糖質、とりわけ「ブドウ糖」は脳には主要なエネルギー源だ。脳に備蓄できるブドウ糖量には限りがあり、コンスタントに補給しないと、脳の働きが落ち、集中力や思考力が低下してくる。果糖や砂糖は極力避けブドウ糖補給を。

80の手習いとして始めたピアノも脳トレに

手や指先を動かしながら頭を使う脳トレとしては、楽器の演奏、とりわけ「ピアノを弾く」のもおススメです。

80歳を優に過ぎた大先輩が、突然ピアノを習い始めたのも、家にこもる生活が続き、「ついうっかり」や「ちょっとした物忘れ」が多くなり出したのがきっかけだったそうです。

ご自宅に、お孫さんのために購入したピアノがあったのが幸いだったようです。

ピアノの前に坐り、老眼鏡で楽譜を見ながらレッスンに励む先輩の姿は、カントの「手は外部の脳である」説の実践そのもので、ちょっと感動させられたものです。

ピアノはどの家庭にもあるわけではありません。

普通のピアノよりかなりコンパクトな電子ピアノやさらにコンパクトで携帯可能な電子キーボードもありますが、騒音対策も必要でしょうから、コロナ禍の今すぐ、新たに始めるのは難しいかもしれません……。

自分の好きな、楽しめることを日課に

なお、認知症の診断および予防の第一人者として知られる浦上克哉(うらかみ かつや)医師(鳥取大学医学部・教授)が理事長を務める「日本認知症予防学会」は、コロナ禍の現在、感染対策と併行して認知症予防のために心がけたいこととして、以下の3点をあげています*¹。

  1. 1日30分以上の体を動かす運動や体操を行いましょう
    ・できれば屋外で、散歩などの運動*を行う
    ・屋内でもスクワット**など、特に筋肉量の多い太ももやふくらはぎの筋力アップ運動を行う
  2. 自分の好きな、楽しめることを日課にしましょう
    ・頭を使って指を動かす知的活動が理想的
    ・ぬり絵、パズル、短歌や俳句、川柳などを作る、歌を歌う、ピアノ演奏など
  3. 家族や友人との会話を楽しみましょう
    ・感染対策上対面での会話を避けるとしても、電話等の通信機器をフルに活用し、コロナ禍以前より頻繁に家族や友人とのおしゃべりを
    ・通信機器としては、ビデオ通話など、お互いの顔が見える機器が望ましい
    ・対面で会話する際はフィジカルディスタンス(身体的距離)を1.5~2m保つ

上記「2」の自分の好きな、楽しめることとして、認知症の治療やケアの現場では「臨床美術」が早い時期から行われています。詳しくはこちらを。

アートで脳の活性化を図る「臨床美術」
「臨床美術」と呼ばれるアートセラピーは、そもそもは認知症の症状改善を目的に開発された。ところが最近は、社会人のストレス軽減や子どもの情操教育にいいと注目されている。「みんな違ってみんないい」の考えを基本におく臨床美術の脳の活性化効果についてまとめた。
*散歩などの運動については、ウォーキングなどの有酸素運動に脳の活性化を促す効果があることが研究により確認されている。詳しくはこちらを。
→ ウォーキングやジョギングは脳機能も高める!!
**スクワットとは、①両足を肩幅程度に広げて直立した姿勢をとり、②ゆっくりと膝を曲げて腰を落とし、③その状態を5秒間ほど保持してから、④ゆっくり膝を伸ばして立ち上がる、⑤この運動を一度に10回ほど繰り返す運動をいう。