「体外診断用医薬品」の表示がある抗原検査キットを
厚生労働省から承認を受けた新型コロナウイルスの抗原検査キットを特例的に調剤薬局(処方箋を受け付けている薬局)で販売することが認められ、2021年9月27日から販売が始まっています*¹。
ところがご承知のように、販売開始早々、次々と問題が発生しています。
今回一般向けに販売が認められた厚生労働省承認の検査キットは、これまで医療現場などに限って使用が認められていた医療用の新型コロナウイルス抗原検査キットです。
この検査キットのパッケージには「体外診断用医薬品」と明示されています*。
ところが、このところの品不足も関係して、薬局やドラッグストアなどで、この医療用検査キットと「研究用」と表示された未承認の検査キットとが混在して販売されているのです。
この「研究用」と称する抗原検査キットは、今回の特例で薬局における一般向け販売が認められたものではありません。
厚生労働省による精度検査などによる性能の確認も行われていないのですが、ネット通販などでも比較的安価で販売されていて、購入者が相次いでいるのです。
消費者庁が「抗原検査キット」の購入に注意喚起
こうした事態を受け、消費者庁はWebサイト上で、購入する際の注意点として以下の3点を広く一般に呼びかけています*³。
- 検査キットを選ぶ際には、パッケージに「体外診断用医薬品」、あるいは「第一類医薬品 一般検査薬」と表示されていることを確認する
- 購入する際は、取扱い薬局の薬剤師に厚生労働省承認の検査キットであることを必ず確認する
- 上記検査キットによるセルフチェックの結果は、イコール診断ではない。感染が疑われる「陽性」の結果が出た場合には必ず医療機関を受診する(電話してから受診することを忘れずに)
ということで、今回は、この新型コロナウイルスの抗原検査キットについて書いてみたいと思います。
抗原検査キットは薬局で購入して常備しておく
「体調が気になったら自宅で自ら検査できるように、新型コロナウイルスの抗原検査キットを薬局で販売する方針を固めた模様」といったニュースを初めて耳にしたときは、かえって感染を広げる結果になるのではないかと心配になったものです。
新型コロナウイルス感染症は、ウイルスに感染してから発症、つまり何らかの症状を自覚するまでの潜伏期間は平均して5日ほどとされています。
ですから、体調が悪いと感じた時点ですでにウイルスに感染している可能性があるわけで、その状態でわざわざ薬局まで出かけて行って大丈夫なのかと心配になります。
この点について厚生労働省は、体調不良などの症状を感じている人が検査キットを購入するために薬局へ出かけることは、「感染対策の観点から避けるべき」としています。
そのうえで、「薬局で抗原簡易キットを購入する方へ」とするメッセージの冒頭で、「体調が悪いことを自覚した場合は、出勤や通学を行わず、医療機関を受診してください」と呼びかけています。
つまりこの抗原検査キットは、体調が気になった場合に家庭などで自ら検査することができるように、健康なときに購入して常備しておくものと位置づけているのです。
医療用抗原検査キットを取り扱っている最寄りの薬局リストは厚生労働省のホームページ*⁴で確認することができます(2023年5月26日15時時点)
抗原検査キット購入時に薬剤師から検査方法の説明を受ける
また、そもそも今回承認された簡易抗原検査法には、検査方法が適正でなかったりすると「偽陰性」と出る可能性、つまり過って(あやまって)陰性と判定されるリスクが多分にあります。
そのため、「検査キットでセルフチェックをしたら陰性だったから」と、安心して街中を出歩き、感染を広げてしまう、つまり市中感染といったことも起こり得るのです。
実際、消費者庁によれば、全国の消費者生活センターなどには、すでに「市販の検査キットで陰性だったにもかかわらず医療機関で感染していると診断された」といった苦情や相談が寄せられているそうです。
このような問題が起きないようにと、厚生労働省は、承認されている抗原検査キットを購入する際には、「あらかじめ検査に関する注意点、使い方等を勉強してから検査を実施する」よう求めています。
検査方法等を理解したことを確認する同意書にサイン
さらに、販売薬局の薬剤師から検査方法などの説明を受けた際は、説明内容を正しく理解できたかどうかを確認するための書類(同意書)にサインするよう求められることになっています。
この書類には、おおむね以下の2点が記され、文末には購入日時と氏名、年齢を記すようになっています。
- 抗原簡易検査キットを活用した検査実施方法等について、十分に理解したうえで、自ら検体の採取等を行い使用します
- 抗原簡易キットを活用した検査の結果が陽性となった場合には、医療機関を受診*します。
検査の結果が陰性の場合でも、偽陰性の可能性も考慮し、症状がある場合には医療機関を受診します。
症状がない場合であっても、引き続き、外出時のマスク着用、手指消毒等の基本的な感染対策を行います。
⑴ かかりつけ医等の地域で身近な医療機関に電話等で相談する
⑵ かかりつけ医がいないなど相談先に迷った場合は「受診・相談センター」*⁵(地域により名称が異なることがある)に、まずは電話で相談する
参考資料*¹:厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部「新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原検査キットの取り扱いについて」
参考資料*²:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の体外診断用医薬品(検査キット)の承認情報」
参考資料*³:消費者庁:新型コロナウイルスの抗原検査キットは「体外診断用医薬品」を選んでください
参考資料*⁴:厚生労働省「医療用抗原検査キットを取り扱っている薬局リスト」
参考資料*⁵:都道府県別新型コロナウイルスに関する相談・医療の情報や受診・相談センターの連絡先