慢性腰痛に効くドローインで太りにくい体質にも

体操運動と健康
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慢性腰痛は安静にしていても痛みは治まらない

腰痛に限ったことではありませんが、「動くと痛みが強まるのではないか」との不安からじっとしたままでいると、筋肉は硬くなる一方で、むしろ痛みは強まるばかりです。

日本整形外科学会と日本腰痛学会が2019年5月に改訂した『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』にも、「運動不足が腰痛発症の危険因子である」として、安静にしすぎる生活の弊害を説いています。

そのうえで、日々の運動習慣の重要性を強調しているのですが、急性の腰痛に対する運動療法については、
「現時点ではエビデンス(科学的根拠)は不明である」と明記されています。

一方で、痛みが3カ月以上続くような慢性腰痛については、
「運動療法が有効である」とあります。

そこで今回は、今現在長引く腰痛で悩んでいる方に、その痛みの軽減と再発予防に役立つ簡単な運動療法として、自宅で簡単にできる「ドローイン」と呼ばれるインナーマッスルのトレーニング法を紹介したいと思います。

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なかには運動を控えた方がいい腰痛も

「安静にしているより、痛みが治まってきたら積極的に体を動かした方がいい」ことは、慢性腰痛の治療では新しい常識となっているようです。

とはいえ、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)など、痛みの原因を特定できる腰痛のなかには、病状によっては、
「運動は控えた方がいい」と、医師が判断する場合があります。

ですから、「腰痛には運動がいいそうだから」と、自己判断でいきなり運動を始めるのではなく、まずは整形外科医の診察を受けることをおススメします。

→ つらい腰痛、すぐに受診したほうがいいときは?

痛みが激しくなったり体調が悪いときは運動を控える

特に腰痛が出始めた当初で、激しい痛みが続く急性期(発症から2~3日)の運動は禁忌とのこと。
この時期は無理のない、自分にとって楽な姿勢で横になり、安静にしていた方がいいようです。

痛みが落ち着き、医師の指示もあって運動を始めたはいいが、ふとしたきっかけで痛みがふりかえすということもありえます。
そんなときはいったん運動を中止して安静にし、痛みが和らいだところで再開するようにします。

また、腰痛そのものには変化がなくても、風邪をひいたとか胃腸の具合がよくないなど、体調が思わしくないこともあるでしょう。

そのようなときもやはり無理は禁物です。
その日の運動はいったん中止するのが賢明でしょう。

ドローインでインナーマッスルを鍛える

慢性腰痛の運動療法としては、腹筋や背筋を鍛える運動が中心だった時期もありました。

しかし近年は、数ある「体幹筋(たいかんきん)」のなかでも体の深部にある筋肉群、いわゆる「インナーマッスルを鍛えることに重点を置く運動が推奨されています。

体幹筋とは、背骨の周辺にあって体を支え、安定させているいくつかの筋肉の総称です。

この筋肉群のなかで、腰椎部分を支えているインナーマッスルに刺激を与えて鍛えると、腰痛を改善する効果が期待できることがわかってきたのです。

インナーマッスルを鍛えてその筋肉の密度を上げることにより、体幹を頑強にすることができます。
これにより、体幹の腰椎部分を中心に体の軸の安定化と腰を曲げたり、伸ばしたりする機能の強化を図ることで、腰痛を改善しようというわけです。

「インナーマッスル」とか「体幹トレーニング」という言葉は、サッカー選手やマラソンなどの長距離走の著名な選手が取り組んでいるトレーニング法として、最近ではすっかり有名になっています。

その方法を紹介するDVDなども数多く出回っていますが、数あるインナーマッスルのトレーニング法のなかから、運動する習慣のあまりない方でも自宅で簡単にできる、慢性腰痛の改善におススメの「ドローイン」と称するトレーニング法のポイントを紹介しましょう。

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ドローインは腹式呼吸の要領でお腹をへこますのがポイント

「ドローイン」とは、英語の「draw-in」からきています。
日本語で言えば、「息を吸い込む」という意味ですから、一種の呼吸法と考えていいでしょう。

胸式ではなく腹式呼吸の要領で、背筋をピンと伸ばした姿勢で、息を思いっきり深く吸い込んでお腹を膨らませ、その反動で息を吐いてお腹を最大限へこませます。

これにより「腹横筋(ふくおうきん)」と呼ばれる腹筋群のなかでも最も深いところにある筋肉を直接刺激して収縮運動を促し、腹横筋の強靭化を図って、腰痛の改善につなげようというトレーニング法です。

腹横筋を鍛え上げることにより、腰椎部分を直接支える、いわば硬いコルセットのような働きをしてもらおうというわけです。

実は私も、整形外科医を取材してこの話を聞いてから、ドローインを、以下の1~3の要領で1回10秒ほど、10回を1セットで、1日に最低でも2セット(起床直後と入浴後の就寝前)行っています。

  1. 背筋をピンと伸ばした姿勢を保ち、腹式による深呼吸の要領で、鼻からゆっくり息を吸い込んでお腹を目いっぱい膨らませる
  2. 息を吸い込んだままの状態を10~15秒キープした後、口をすぼめて、目の前にあるろうそくの火を吹き消すイメージで、ゆっくり息を吐き出す
    このとき、お腹と背中がくっつくほど、お腹を目いっぱいへこませるのが大事
  3. お腹をへこませたままの状態で、浅く息をして呼吸を整える

ドローインはバスや電車の中でもできる

ドローインは、立ったままでも、また坐禅を組む要領で足を組み背筋を伸ばして坐った姿勢でもできます。

その気になれば、通勤途中の電車やバスの中でもできるでしょう。

ただ、腰痛が続いているときは、腰に負担がかからないように、床の上に仰向けに寝て、足を肩幅程度に広げ、そのまま膝を軽く立てた姿勢で行うと、腰の痛みが増すこともなく楽にできます。

このとき、両手を軽くお腹の上の、腰骨(こしぼね)のやや内側に指を当てるように置いておけば、お腹の膨らみ具合やへこみ具合を意識しながらドローインをすることができます。

なお、硬い床の上に直接横になってのトレーニングは、むしろ腰痛を悪化させるリスクがあります。
必ず、少し厚めのエクササイズ用フロアマットを敷いて行うことをおススメします。

ドローインにより基礎代謝量がアップし太りにくい体質に

毎日時間を決めてドローインを続けていると、自然と姿勢を意識するようになりますから、目に見えて姿勢がよくなります。
姿勢がよくなってくると、動きがスムーズになり、家事でも仕事でもテキパキと動けるようになってきます。

動きがスムーズになってくると、基礎代謝量、つまり心臓の拍動や呼吸、体温の維持、内臓の活動など生命維持のための必要最小限のエネルギー代謝量が増加します。

この基礎代謝量は、1日に消費されるエネルギー総量の約60%を占めるとされていますから、基礎代謝量のアップはそのまま、太りにくい体質へと変わることができるというわけです。

実は、私がドローインを始めたのは、腰痛対策というよりは、むしろこちらの効果をねらってのことだったのですが、確かな効果を日々実感しています。

ストレスが原因の長引く腰痛に「認知行動療法」

なお、つらい慢性腰痛には、何がしかのストレスが影響して長引かせている場合が多いことがわかっています。

この場合には、そのストレスにアプローチすることでつらい腰痛から解放される治療法として「認知行動療法」が行われることがあります。

詳しいことはこちらの記事にまとめてあります。読んでみてください。

→ 長引く腰痛に有効と聞く認知行動療法」とは?

寝起きの腰痛で悩んでいる方に

腰痛もちの方のなかには、日中は気にならないが朝の起床時に腰の痛みが激しく、起き上がるが一苦労という方も少なくないようです。

いわゆる「寝起きの腰痛」ですが、その対処法についてはこちらの記事を参照してみてください。

→ 寝起きの腰痛、自分でできる改善策は?