睡眠は「時間」ではなく「質」が大事
新型コロナウイルスの「感染第7波」の拡大が深刻化しています。
コロナ禍により生活スタイルが一変し、昼間の身体活動量が大幅に低下したことが大きく影響して、「このところぐっすり眠れなくなった」等々……、睡眠に悩みを抱える方が、私の周りにも目に見えて増えています。
コロナ禍の最中に行われた睡眠に関する悩みを尋ねた調査でも、「朝の目覚めが悪くなった」「睡眠中によく目が覚めるようになった」など、睡眠の質の低下を実感している人が約6割いることが確認されています*¹。
睡眠については一般に、「何時間眠るか」ということだけを重視する傾向があるように思います。
しかし、睡眠の専門医からは、睡眠時間以上に「質の良い眠り」、つまり「熟睡できているかどうか」がより大事だという話を再三聞かされます。
そうは言われても、コロナ禍により行動が制限される状況にあっては、「睡眠の質を改善したくても具体的に何をすればいいかよくわからない」と悩む方も少なくないでしょう。
そこで今回は、睡眠健康推進機構が公開している、「外出自粛中に良い睡眠を確保するための5つのヒント」
を紹介したいと思います。
質の良い睡眠を確保するための5つのヒント
「外出自粛中に良い睡眠を確保するための5つのヒント」は、江戸川大学睡眠研究所(福田一彦所長)が作成したもので、公益財団法人 神経研究所 睡眠健康推進機構のWebサイトで紹介されています*²。
新型コロナウイルスの感染急拡大に伴う外出自粛などの感染対策により、幼い子どもから後継者に至るまで、多くの人がコロナ禍以前より長い時間を自宅で過ごすようになっています。
当然、これまで当たり前のように続けてきた生活習慣や生活リズムは変更を余儀なくされています。
昼間の活動量が大幅に低下すると同時に、感染を受けることへの不安やストレスは日増しに高まり、睡眠にとってのマイナス要因が増える一方です。
このような状況のなかで「質の良い睡眠を確保し、健康的に過ごすためのヒント」としてあげられているのが、以下の5点です。
- 毎日、普段どおりの時間に起きて日光を取り入れましょう
- 長い時間の昼寝をしないようにしましょう
- 布団は夜に眠るときのみ使用しましょう
- お昼と夜のメリハリをつけましょう
- 1日・2日眠れないことがあっても気にしない
(引用元:外出自粛中に良い睡眠を確保するための5つのヒント*²)
質の良い睡眠には朝の自然光が欠かせない
感染対策としての外出自粛でいつもの出勤や通学ができなくなり、時間に縛られない生活が続くと、どうしても起床時間が遅れがちになります。
起床時間が遅くなり朝の自然光を浴びない日が続くと、私たちの体にセットされている「体内時計」が目覚めてくれません。
体内時計は、太陽が作り出す昼夜のサイクルに合わせながら、体内のさまざまな機能が活動(覚醒)と休息(睡眠)のリズム、いわゆるサーカディアンリズム(生体リズム)を刻む働きをしています。
体内時計によるこのリズムを乱さないコツは、「5つのヒント」の「1」にあるように、まずはいつもどおりの時間に起きて、朝の自然光をしっかり浴びることです。
毎日の生活に昼夜のメリハリをつけて質の良い睡眠を
自粛生活では、外出するのは食材や日用品を購入するための買い物程度で、残りの時間は家の中で仕事をしたり、趣味に興じたり、テレビを見たりといった生活になりがちです。
このような生活が続けば、自ずと日中、眠気が襲ってくるようになります。
そんなときは、終始ウトウトして過ごすよりも、思い切って昼寝をしたほうが生活にメリハリをつけるという意味ではいいようです。
昼寝をするなら布団に入らず20分以内に
とは言っても、長々と昼寝をしていると、その睡眠を体内時計が夜間の睡眠として認識してしまい、結果として、夜になって床に就いてもなかなか寝つけなくなります。
寝つけたとしても、夜中に目が覚めてそのまま寝つけずに、朝になってもすっきり起きられない、熟睡感が得られないといったことになりがちです。
昼寝をするにしても、体内時計によるサーカディアンリズムを狂わせないために、正午から午後3時までの間に、あくまで仮眠として深い睡眠に入らないことが大切です。
具体的には、「5つのヒント」の「2」と「3」にあるように、布団に入らずにソファなどで、時間は20分以内にしておくのがいいようです。
睡眠の質の良し悪しは、朝起きた時の爽快感で判断を
睡眠は、日中の活動により消耗した脳と体をメンテナンスしてもとの状態に回復させ、翌日の活動に備えるうえで欠かせないものです。
このメンテナンスに要する時間は、成人では7~8時間と考えられていますが、これにはかなりの個人差があります。
むしろ脳と体のメンテナンスに欠かせないのは、質の良い眠り、つまり「ノンレム睡眠」と呼ばれる深い眠りと「レム睡眠」と呼ばれる浅い眠りをバランスよく繰り返す眠りです。
このような質の良い眠りを確保できたときは、心地よい熟睡感とともに、心身ともに快適な状態で朝を迎えることができます。
ですから、「5つのヒント」の「5」にあるように、「このところ何日も数時間しか睡眠がとれていない」といったことはあまり気にし過ぎない方がいいわけです。
むしろ、朝目覚めたときの爽快感や日中の眠気の有無から判断し、「どうも熟睡できていない」となれば、自らの生活習慣を見直して、日中軽い運動をするといいでしょう。
この場合の運動量については、こちらの記事を参考にしてみてください。

市販の眠剤に頼る前に受診を
最近は、クオリティの高い睡眠モニター付きスマートウォッチもありますから、自分の睡眠パターンや眠りの深さをモニタリングしてみるのも一法です。
あるいは質の良い睡眠をとれない状態が長引くようなら、市販の眠剤に頼る前に、一度かかりつけ医に相談するか、最寄りの睡眠外来、または内科、心療内科、精神科を受診することをおススメします。
くれぐれも寝酒(ねざけ)に頼らないように!!

なお、睡眠の質を高める方法の一つとして、寝室の内装や建具に木材が多いと熟睡できることが森林総合研究所の研究により確認されています。

参考資料*¹:江碕グリコNews Release 2020/9/30 コロナ禍における睡眠調査を実施
引用・参考資料*²:外出自粛中に良い睡眠を確保するための5つのヒント