20代半ばの女性が四十肩の診断を受ける
40歳以降に症状が出てくるケースが多いことから、「四十肩」とか「五十肩」と呼ばれている肩関節のトラブルですが、20代半ばの知人女性が、「医師から四十肩と言われた!!」と、えらく憤慨していました。
聞けば、思い当たる特別な原因は何もないのに、肩の周辺がこわばって動きが鈍くなり、髪を束ねたり、服を着替えるために腕を上げようとすると痛みが走った、と――。
そのうち自然に治るだろうと思い、あまり動かさないようにして様子を見ていたそうです。
ところが、痛みが徐々にエスカレートして、夜中に寝返りを打つたびにズキズキ痛み、睡眠が妨げられるようになったため、思い切って整形外科を受診したとのこと。
問診や肩関節のエックス線(レントゲン)撮影など、ひととおりの診察を終えたうえで担当医から伝えられたのは、「いわゆる四十肩ですね。五十肩とも言いますが……」というものだったと言うのです。
「まだ30にもなっていない自分が四十肩、五十肩だなんて……」
そんな思いから納得できない表情をしている彼女を目にし、その整形外科医は、「肩関節をつくっている骨や軟骨などの疲労が重なり、ギブアップして起こる症状です」と説明したうえで、こう付け加えたそうです。
「この病気は中年以降の方に多いのですが、関節というのは何日も動かさないでいると、あなたのような若い方でも、こわばって動きにくくなってくるものです。20代、30代の患者さんも結構いますよ」
まずは整形外科を受診する
ただし、四十肩・五十肩と思い込んでいると、肩の動きのポイント部分である鍵盤(けんばん)と呼ばれる部分が損傷していたという例も少なからずあるそうです。
腕を上げ下げする度に必ず肩に痛みが走るようになったり、動きが制限されるようなときは、迷わず整形外科を受診して一度詳しく調べてもらうことをおススメします。
四十肩・五十肩の痛みが治まったら肩関節を動かす
日本整形外科学会が患者向けに作成した「整形外科シリーズ」というパンフレットがあります。
そのなかの「5 五十肩」*¹によれば、四十肩・五十肩の正式な病名は「肩関節周囲炎」です。
治療については、肩関節を動かそうとすると途端に痛みが出るような、いわゆる急性期には、肩関節の安静を図るために、三角巾やアームスリング*で腕をつって肩関節を固定する、とあります。
病状や治療目的によっては、医療保険が適用となるため、購入費は健康保険の自己負担分(3割)に抑えることができる。
痛みの程度によっては、炎症を鎮めると同時に筋肉の緊張を和らげる効果が期待できる消炎鎮痛薬で痛みの緩和を図るのですが、この場合の消炎鎮痛薬は医師に処方してもらうことになります。
ただ、彼女の場合、「すでに急性期は過ぎていますから、じっとしていないで、できるだけ動かした方がいいでしょう」というのが医師の指示だったそうです。
一度こわばって動きにくくなった関節を動かそうとすると、多少の痛みが走るのは避けられません。
しかし、痛いからといって動かさないままでいると、こわばりと痛みが日増しに強くなり、関節が固まってしまう、いわゆる拘縮(こうしゅく)を来し、ひいては筋肉の力も落ちてしまうことになります。
医師は、「そうならないように頑張って動かしてください」と説明し、肩関節の動かし方を実際にやって見せてくれたそうです。
四十肩・五十肩のリハビリにアイロン体操を
彼女が、担当医からリハビリテーションにいいからと直接教わったと言って、実際にやって見せてくれたのは、いわゆるアイロン体操(「振り子体操」とも「コッドマン体操」とも呼ばれている)でした。
体操をする前に、蒸しタオルや電子レンジでチンするだけでOKの一般医療機器 医療用温熱パックなどを使って肩関節を温めておいたり、あるいは温めながら動かすと、痛みが軽くなってより効果的です。
ただしこの「温め」は、炎症が鎮まっていない急性期に行うと逆効果になります。
必ず、担当医の了解を得てから行うようにしてください。
- 軽くお辞儀をするような少し前かがみの姿勢をとる
・このとき、太股のつけ根ほどの高さのテーブルに、痛くないほうの手をついて支えにするといい - 痛みがある側の手で1㎏ほどの重りを持って腕をぶらんと垂らす
・重りは、ダンベルでも水を満たしたペットボトルやアイロンでもいい
・痛みが出るようなら重りをもたずに何回かやってみて、様子を見ながら重りを持つ - 垂らした側の肩の力を抜いた状態で、その腕を振り子のように前後左右にゆっくり揺らす
- 「前後」「左右」10往復の振り子運動を1セットとし、1日1セットから始めて、痛みなどの状態を見ながら徐々にセット数を増やしていく
肩甲骨周辺のインナーマッスルを鍛えるストレッチ
四十肩・五十肩は、一度なったら免疫ができて二度とならない麻疹(ましん・はしか)のような病気と違い、油断していると再発するリスクが避けられません。
「一度よくなっても、また腕が上がらなくなったとか、痛みが再発したと言って二度も三度も受診してくる患者さんが少なくないのですが、肩関節をさびつかせないようにストレッチを習慣にするといいですよ」というのが、担当医からのアドバイスがだったそうです。
そのストレッチに、現在彼女は、担当医の了解を得たうえで、肩甲骨の周辺にあるインナーマッスルを鍛える効果が期待できるとされるLPN ストレッチポールを使っていると話してくれました。
彼女から聞いた、毎日やっているというそのストレッチ方法を簡単に紹介しておきましょう。
- 床に厚めのトレーニング用フロアマットを敷き、その上にストレッチポールを縦に置く
- そのポールの上に、仰向けの姿勢で体を乗せて横になる
- 「前にならえ」の要領で両腕を上げ下げする運動を10回ほど繰り返す