夜間勤務は乳がん発症リスクを高めるって本当?

乳がん食と健康

女性の9人に1人が生涯に一度は乳がんを経験する時代に

乳がんが女性に最も多いがんであることはご承知のとおりです。

日本人のがんの罹患(りかん)状況については、国立がん研究センターがん情報センターが2019年1月、最新の統計値をまとめたものを公表しています。

そのなかに、統計をとった2018年における女性の乳がん罹患数は、全国の推定値で約9万3858例とあります。

つまり、2018年の1年間に、全国で10万人に近い女性が、新たに乳がんの診断を受けているということです。

同時に、日本人女性が一生のうちに乳がんを発症する確率は9%、すなわち12人に1人という数字もはじき出されています。
この数字は、2020年には9人に1人に跳ね上がるだろうと予測されています。

このような統計値を見聞きするにつけ、女性であれば誰もが「私は大丈夫かしら」と心配になるところです。

とりわけ夜間勤務のある女性は、巷で「夜間勤務は乳がんの発症リスクを高める」と言われているだけに、気になるところではないでしょうか。

そこで今回は、この「夜間勤務と乳がんの発症には関係があるのかどうか」について、調べたことを書き留めておきたいと思います。

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夜間勤務は乳がんリスクを増加させる可能性がある

乳がんを発症させる要因、いわゆるリスクファクターについては、さまざまあげられています。

そのなかで、確たるエビデンス(根拠)があり、信頼に足る情報は、日本乳癌学会がWebサイトで公開しているガイドライン*¹で見ることができます。

ガイドラインの「疫学・予防」の項では、国内外の文献から導き出されたエビデンスに基づいた乳がん発症リスクの度合いが、素人にも一目でわかるように紹介されています。

順を追ってみていくと、「アルコール飲料の摂取」「喫煙」「脂肪の食事摂取」「肥満」などの要因に続き、「社会環境因子」の一つとして「夜間勤務」が挙げられていて、そこには、こう記してあります。
「夜間勤務は乳がんリスクを増加させる可能性がある」

このエビデンスの一つとして、アメリカにおける研究結果が紹介されています。

この研究では、大学病院に勤務する11万人以上の看護師を対象に、12年間にわたり、夜勤との関連を見ながら「乳がんを発症するかどうか」について追跡調査を行っています。

それによると、20年間以上昼夜交代のシフトを続けて夜勤を担当した看護師のグループは、昼間の勤務だけで夜勤をしていない看護師のグループに比べ、乳がんの発症率が約1.8倍高かったことが報告されているのです。

夜間勤務者の乳がん発症リスクに関係するメラトニン

夜勤のある仕事に就いている女性は、なにも看護師だけではません。
介護職の方はもちろん、ホテルのスタッフ、24時間対応のコールセンターやコンビニのスタッフなども、昼夜交代シフトを余儀なくされていて、その職種は増加傾向にあります。

そこで、夜間勤務が影響する乳がんの発症リスクをなんとかして回避、あるいは低減させることはできないものかと研究が重ねられてきました。

そのなかで、体内時計の調節にかかわり、睡眠に深く関係している「メラトニン」と呼ばれるホルモンが大きく影響していることがわかってきたのです。

脳内におけるメラトニンの分泌は、主に目から入ってくる明るい光により、日中は分泌が少なく、夜になり辺りが暗くなってくるとメラトニンの分泌量が増えるように調節されています。

そのため、夜間起きて明るい照明の下で活動していると、メラトニンの分泌量が減ってしまいます。

このことが、女性ホルモンや免疫の働きに影響して、乳がんの発症リスクを上げる原因となっているのではないかと考えられているのです。

メラトニンの原料となる「トリプトファン」を意識して摂る

そこで、夜間に明るい照明のもとで活動していても、脳内におけるメラトニンの量が減らないようにすれば、乳がんの発症リスクを下げることができるはずだと考えられるようになってきました。

その方法はいくつかあるのですが、最も手軽で、しかも誰でもできるのは、毎日の食事によってメラトニンを増やすという方法です。

メラトニンの原料となるのは、必須アミノ酸の一つ「トリプトファン」です。

トリプトファンのような必須アミノ酸は、「必須」とあるように、体内で十分な量を合成することができないために、毎日の食事から、コンスタントに体内に取り込んでいく必要があります。

トリプトファンは、たんぱく質を多く含む食品に含まれています。

ご存知のように、たんぱく質には、肉類や魚類、卵、チーズなどに含まれる「動物性たんぱく質」と、豆腐や納豆、味噌などの大豆食品に含まれる「植物性たんぱく質」とがあります。

それと、つい忘れがちですが、ゴマ類やナッツ類、さらにはバナナやアボカドなどの果物類にも植物性たんぱく質が含まれています。

たんぱく質を多く含む食材としてとっさに頭に浮かぶのは、動物性のたんぱく質でしょう。
実際、私たちのたんぱく源は動物性、それも肉類に偏っていることを実証した研究報告もあります。

しかし、脳内でトリプトファンとして利用されやすいのは、動物性ではなくむしろ植物性たんぱく質のほうだと考えられています。

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夜間勤務者は動物性より植物性のたんぱく質を

結論としては、夜間勤務により高まる乳がん発症リスクを多少なりとも低減させるためには、毎日の食事で、豆腐、納豆、豆乳といった大豆食品や、バナナ、アボカドなどの果物を中心に、栄養バランスのよい食事を心がける必要があります。

とりわけ糖質については、このところの糖質カット炊飯器の普及などもあり、ダイエット志向の方を中心に糖質摂取量を減らす傾向にあります。

しかし、食事で摂ったトリプトファンが脳内にスムーズに取り込まれるには糖質の手助けが必要ですから、炭水化物も毛嫌いすることなく摂取する必要があります。

昼夜交代勤務で生活それ自体が不規則ですから、自ずと食事も不規則になりがちです。
朝食抜き、コンビニランチになることも多く、トリプトファンの摂取を食事だけに頼るのはどうも心もとないという方も少なくないでしょう。

そんな方には、たとえば麻の実(種)を丸ごとつぶして粉末にしたヘンププロテインを上手に活用するのもいいでしょう。

純植物性たんぱく質の粉末ですから、水や豆乳、野菜ジュースなどに混ぜて飲めば、トリプトファンを手軽に補給することができます。

乳がん発症因子の予防と自己触診によるセルフチェックを

なお、アメリカではメラトニンの栄養補助食品やサプリメントが売られています。

ただし、メラトニンを栄養補助食品やサプリメントで補給することによる長期的な副作用が明らかにされていないこともあって、日本では薬機法(やっきほう;旧薬事法)の規定により、原則として輸入・製造・販売が禁止されています。

とは言え、インターネットで取り寄せている方も少なからずおられるようです。
その是非については、個人の判断にお任せするしかないのが現状ですが、安全のためには、かかりつけ医に相談してから判断することをおススメします。

乳がんの発症には、飲酒や喫煙、脂肪過多な食事、肥満、運動不足なども影響することがわかっていますから、これらの要因を避けることもお忘れなく。

また、夜間勤務が乳がん発症リスクを高める可能性があることを忘れず、自宅で簡単にできる自己触診による乳がんのセルフチェックを定期的に行うといった予防的行動も心がけたいものです。

参考資料*¹:日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン 2疫学・診断編 2018年版