脂質は量より質が大事、体にいい油と悪い油

オリーブオイル食と健康
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毎日の食事で「体にいい油」を摂っていますか

たんぱく質、糖質と並ぶ三大栄養素の1つですが、体に悪いイメージのある「脂質」については、肥満や心筋梗塞のような循環器疾患を防ぐために「量」だけでなく「質」にも注意を払う必要があるとよく言われます。

ここで言う「脂質の質とは」どういうことなのでしょうか。

漠然とわかっているつもりでも、いざ毎日の食事で「油は質のいいものを」となると、何を食べたらいいのか迷うことが多いという方が少なくないと思います。

かく言う私も、家で食事の準備をする際は、「バターやラードは避けて、オリーブオイルやゴマ油を」とか、「動物性の油より植物性や魚類の油を」といったことを意識してレシピを決めたり食材選びをしているものの、決して十分とは言えないと思っています。

脂質の質に関しては、「飽和脂肪酸はできるだけ避けて不飽和脂肪酸にシフトしたほうがいい」とよく言われます。

また、「トランス脂肪酸が多く含まれている食品を摂りすぎないように」とも言われます。

今回はこの、脂質の質について、これまであいまいにしてきたことをクリアにしてみたいと思います。

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飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは?

私たちが毎日の食事で摂っている「油」の成分である「脂肪酸」には、常温で固まる性質をもつ「飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)」と、常温では固まりにくい「不飽和脂肪酸」とがあります。

乳製品や肉類などの動物性脂肪であるバターとかラードなどは飽和脂肪酸ですが、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)のような魚(イワシやサバ、サンマなど)の油やオリーブオイル、亜麻仁油(あまに油)のような植物性脂肪の多くは不飽和脂肪酸です。

このうち,真っ先にネルギーとして利用されるのは、飽和脂肪酸です。

しかし、この飽和脂肪酸については、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患の危険因子であり、摂りすぎると発症リスクを増加させることが1960年代という早い時期に確認され、公表されています。

この健康リスクにより、飽和脂肪酸は「体に悪い油」として、健康志向の人々から敬遠されていることはご承知のことと思います。

不飽和脂肪酸の代表格「オレイン酸」を多く含むオリーブオイル

これに対し不飽和脂肪酸の代表格で、「体にいい油」としてよく知られているのがオリーブオイルです。

オリーブオイルは、オリーブの実を絞ってつくられることから、「オリーブのフレッシュジュース」とも呼ばれていますが、発祥の地は地中海地方です。

この、地中海沿岸で暮らす人々には、心筋梗塞のような動脈硬化による生活習慣病が非常に少ないことが、統計により明らかにされています。

その理由は、1年を通しての温暖な気候もさることながら、この地域の人々が毎日の食事で好んで摂っているオリーブオイルに、不飽和脂肪酸の「オレイン酸」が大量に含まれているからです。

このオレイン酸の、善玉コレステロールを減らすことなく悪玉コレステロール(LDLコレステロール)だけを減らす働きにより、動脈硬化を予防して、心筋梗塞や脳梗塞といった動脈硬化性疾患の発症リスクを大幅に下げているのだそうです。

オリーブオイルのなかでもランクの高い一番搾りのエキストラバージンオリーブオイルには、オレイン酸が豊富に含まれていておススメです。

ちなみにオレイン酸は、べにばな油、なたね油、えごま油、大豆油、ピーナッツやアーモンドといったナッツ類の油にも多く含まれています。

ピーナッツの摂取量が多いと脳卒中になりにくい
ナッツ類、特にピーナッツはカロリーが高いことで敬遠しがち。だが、思わぬ健康効果を期待できることが研究により確認されている。認知症につながりやすい脳卒中、特に脳梗塞の発症リスクを下げるというのだ。その研究成果と併せ、ピーナッツの上手な摂り方を紹介する。

加工食品に多く含まれるトランス脂肪酸は「体に悪い油」

オリーブオイルのような「体にいい油」に対し、「体に悪い油」の代表格として「トランス脂肪酸」があります。

トランス脂肪酸は、液体の植物油などを精製し、固める加工過程などでできるものです。

マーガリン、クロワッサンやデニッシュなどのパン類、ハンバーガー、ショートニング使用のケーキ、クッキー、クラッカー、ドーナツなどの洋菓子やカップラーメン、脂肪の多い揚げ物類、カレールウといった加工食品に多く含まれています。

アメリカなど先進国の多くは、トランス脂肪酸を摂りすぎると心筋梗塞のような動脈硬化性疾患のリスクを高めるとして、トランス脂肪酸を多く含むこれらの食品のパッケージに「摂りすぎないように」と注意喚起する文言の表示義務を業者側に科しています。

しかし日本では、食品安全委員会が2012年、「日本人の大多数はⅠ日当たりのトランス脂肪酸の摂取平均量は約1gで、WHOの目標(1日2g)を下回っている」として、トランス脂肪酸が含まれていることをパッケージ等に表示することを製造元に義務づけていません。

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超加工食品に含まれるトランス脂肪酸対策は?

とは言え、日本人のトランス脂肪酸の1日平均摂取量について調査が行われたのは2008年ですが、この年以降、私たちの食生活は加工食品への依存度が年々高まっています。

とりわけカップ麺のようなインスタント麺の類やスナック菓子や菓子パン、さらにはミートボールやチキンナゲット、ピザなど、「超加工食品*」が占める割合は高くなっているのではないでしょうか。

*超加工食品とは、5つ以上の栄養成分を含み、塩や酢以外の一般家庭での調理では使われないような添加物、たとえば香料、着色料、甘味料、防腐剤、乳化剤などを使用して、産業用に工場などで大量生産している食品をいう。

これらの超加工食品は、味をよくして商品価値を上げようと、糖分や塩分に加え、トランス脂肪酸の含有量も多くなっています。

このような超加工食品については、フランス国立保健医学研究所の研究チームが、フランス在住の10万人を対象に、超加工食品の摂取量とその後5年間のがん(乳がん、前立腺がん、大腸がんなど)の発生状況を調査した結果として、食品添加物を多く含む超加工食品の摂取量とがん発生リスクに因果関係があると報告しています。

ただし日本では、香料や着色料といった食品添加物については規制が厳しいこともあり、がん発生に直結する心配はなさそうです。

とは言え、むしろ超加工食品は単独ではなく、生野菜と一緒に食べるなど、栄養バランスを考えて摂ることにより、超加工食品の健康リスクは避けられると言われています。

「超加工食品でがんリスク増加」情報の真偽は?
フランスから届いた「超加工食品はがんリスクを増加させる」との健康情報は、日本においてもそのまま当てはまるのか。調べてみると食品添加物に厳しい規制があるわが国では、「食べない」とするよりも食塩と栄養バランに配慮しつつ上手に活用するのがいいようだ。