二日酔い予防に効く「柿の渋み」と水分補給

柿食と健康
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柿の渋みの酔いざまし効果を二日酔い対策に

秋の訪れを実感する「柿」は、日本原産の果物だと聞いた覚えがあります。その証拠に、フランス語で柿は「ル・カキ」というのだとか――。柿はことさら甘みが強い一方、特有の渋みがあります。渋みは敬遠されがちですが、この渋みが酔いざましに効くことをご存じでしょうか。

私たち日本人には、お酒を飲む機会の多いお正月に、おせち料理の定番として干し柿と大根で作ったなます、いわゆる「紅白なます*」をいただく習慣があります。これは、柿の渋み成分がもつ抗アルコール作用を期待した先人の知恵によるものと言われています。

*紅白なますは、千切りにした大根と人参をお酢と砂糖で味付けしたものが定番。祝宴やおせち料理などでは、酔いざまし効果をねらい、人参の代わりに干し柿を使って作るなますが供されることが多い。地域によっては、人参と大根のなますに刻んだ干し柿を混ぜることもある。

お酒をつい飲み過ぎてしまった翌日に、二日酔いで頭痛や吐き気などに悩まされるといったことは、お酒をたしなむ方なら一度ならずも経験しているのではないでしょうか。そこで今回は、柿の渋み成分に期待できるさまざまな効能のなかから、酔いざまし効果による「二日酔い予防」について書いてみたいと思います。

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柿の渋み「カキタンニン」がアルコールの分解を助ける

柿には甘柿と渋柿とがありますが、半分にカットして見ると、そのどちらの実にも黒い点々があります。今回取り上げる柿の渋みの成分は、この黒い点々に含まれています。「柿渋(かきしぶ)」として知られるこの渋みのもととなる成分は、「カキタンニン」と呼ばれるポリフェノールの一種です。

ポリフェノールには、ビタミンCやビタミンEに負けないほどの強い抗酸化作用(こうさんかさよう)があることはご存知と思います。ポリフェノールはこの抗酸化作用により、私たちの体内で発生し続ける活性酸素に対して、からだのさまざまな機能がサビつくのを防ぎ、正常に機能するように働いてくれます。

活性酸素は、皮膚細胞を酸化させてメラニン色素を誘発させ、シミの原因ともなります。しわやたるみ、肌の老化を促進させる原因にもなりますから、この活性酸素からからだを守ってくれるポリフェノールの抗酸化作用は美容上も軽視できません。

カキタンニンはポリフェノールの一種

ポリフェノールはほぼすべての植物の樹皮や表皮、種子に存在しているのですが、植物の種類が違えば、私たちが恩恵を期待できる健康効果も微妙に違ってきます。

たとえば、ブルーベリーに多く含まれる「アントシアニン」と呼ばれるポリフェノールが目にいいこと、また生姜のポリフェノールである「ショーガオール」に血液の流れをよくして冷えを改善する効果や免疫力を高める効果が期待できることは、多くの方がご存知だろうと思います。

そんななかにあって、柿の渋みの成分である「カキタンニン」には、アルコールの分解をスムーズにする作用がありますから、つい飲み過ぎて二日酔いが心配なときには、この柿渋が一役買ってくれます。

柿の渋みが二日酔いの主因「アセトアルデヒド」を体外に

二日酔いについては、アルコールが肝臓などで分解されてできる「アセトアルデヒド」という物質が、十分に解毒処理されないまま血液中に残っていることが主な原因で起こると考えられています。柿の渋み成分であるカキタンニンは、この有害物質のアセトアルデヒドをからだの外に排出させるように働くことにより、アセトアルデヒドの作用を抑えて、二日酔いを防いでくれるというわけです。

カキタンニンは、どちらかと言えば甘柿より渋柿に多く含まれています。甘柿に含まれるカキタンニンは、収穫時になると「水溶性」から「不溶性」、つまり水に溶けない状態に変わるため、食べても渋みを感じることがありません。

一方、渋柿のカキタンニンは水溶性、つまり水に溶けやすい状態になっています。食べると口の中でカキタンニンが唾液に溶けて舌に強い渋みを感じるため、そのままでは食べられません。

そのため、スーパーなどの店頭に並んでいる渋柿は、あらかじめアルコールや炭酸ガス(ドライアイス)を使って渋抜きをしているものが多いようです。あるいは、皮をむいてから1カ月ほど軒先につるした干し柿*も、渋みを消して食べることができます。

*干し柿はカリウムの含有量が多く、普通サイズの1個から234㎎をとることができます。高血圧で減塩中なのについ塩分を摂りすぎてしまったときに、その塩分をからだの外に出すときにカリウムの多い干し柿が役立ちます。詳しくはこちら。
→ 高血圧の改善に減塩を助けるカリウムを!!

アルコールと一緒に水を飲んで二日酔いを防ぐ

ところで、柿の「渋抜き」と聞くと、柿渋の主成分であるカキタンニンがなくなってしまい、せっかくの二日酔い予防効果が期待できなくなってしまうと考えがちですが、そんなことはありません。渋抜きにより、食べても渋みを感じなくなるだけで、カキタンニンはしっかり残っていますから、アセトアルデヒドに対する解毒効果は十分期待できます。

お酒を飲むときは、柿や干し柿を使ったおつまみを一皿忘れずに!! ちなみに我が家では、干し柿と好みのチーズの盛り合わせを小さなまな板に載せてそのまま食卓に出しておき、少しずつ切ってつまんでいます。

いずれにしても二日酔いを防ぐには、アルコールの分解を促すのが一番です。その効果的な方法として、かつて取材した肝臓の専門医がススメてくれたのは、アルコールと同量、あるいは少し多めに水を飲むことです。また、アルコールの最後の一杯をノン・アルコールビールにするのも、アルコールを飲んでいる気分のまま水分補給ができて脱水予防になり、かつ二日酔い予防にもなるそうです。

なお、アルコール健康医学協会は「適正飲酒10か条」のなかで、飲み過ぎや二日酔いを防ぐには「食べながら、ゆっくり飲む」ことを奨励しています。この場合のお勧めのつまみについては、こちらで詳しく書いていますので是非読んでみてください。

純アルコール量を知って飲み過ぎを防ぐ!!
厚労省は適正飲酒として1日のアルコール量を20gまでと推奨している。このアルコール量の目安がわかりにくかったのだが、政府は容器にアルコール量をグラム表示するよう酒類業界に求める方針を打ち出した。これにより、飲み過ぎや二日酔いの防止効果が期待されるが……。