鉄鍋、鉄フライパンが鉄分補給にいいって本当?

鋳鉄鍋食と健康

調理中に鉄製鍋から鉄分が溶け出して鉄分補給に

もともと女性、特に生理のある年代の女性に貧血が多いことはよく知られています。

その割合は、日本女性のほぼ10人に1人とのこと。

生理のある女性に絞るとさらに高率で、5人に1人は貧血、
あるいは「疲れやすい」とか「体がいつもだるい」、「軽い運動でも、すぐに動悸や息切れがする」といった貧血様症状を自覚していると、厚生労働省は推計しています。

貧血は、血液検査により、血液中の血色素(ヘモグロビン)の値を調べることで、簡単に診断がつきます。

ところが、この貧血とは別に、一般的な血液検査ではなかなか気づくことができないタイプの貧血、いわゆる「かくれ貧血*」と呼ばれるものも珍しくないことがわかっています。

*かくれ貧血とは、正式には「潜在性鉄欠乏症」と呼ばれる貧血予備軍の状態をいう。
あくまでも予備軍であって病気ではないが、放っておくと「鉄欠乏性貧血」に進行する可能性がある。
かくれ貧血かどうかは、血液中の「フェリチン濃度」を調べればわかる。ただし、「血清フェリチン値」は一般的な健診などで行う血液検査の検査項目には含まれていないため、だるさや疲れからかくれ貧血を疑ったら、クリニックや内科外来を受診して調べてもらう必要がある。

「かくれ貧血」なら食事で鉄分補給を

疲れやすさやだるさに代表される慢性的な貧血様症状に加え、「集中力が続かない」「朝スッキリ起きられない」といった状態が続く背景には、このかくれ貧血がひそんでいることが少なくないようです。

このようなときは、毎日の食事から鉄分を補給することがすすめられるのですが、その際に、鉄製の鍋やフライパンを使って調理するといい、という話をよく見聞きします。

調理中に鍋やフライパンの鉄分がわずかながら溶けだして食材に染み込むため、鉄分をより効率的に補うことができるというのですが……。

確認の意味で調べたことを書いておきたいと思います。

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鉄製鍋が手軽に鉄分を補う手助けを

鉄製の鍋やフライパンと聞き、岩手県の「南部鉄器」が頭に浮かぶ方は多いのではないでしょうか。

今から10年ほど前、フランスはパリの高級デパートで、カラフルな色使いでスタイリッシュな南部鉄器の急須、現地風に言えば「カラーポット」が人気を集めていることを伝えるニュース映像が流れたことがあります。

「あんなしゃれたティーポットで紅茶をたしなむなんて、さすがパリ人」と感動したものです。

同時に、南部鉄器に限らず、鉄製の鍋を調理に使う際に、その鍋から溶け出す鉄分が「手軽に鉄分を摂取する手助けとなる」ことを実証したエビデンス(科学的根拠)はないものかと、ずっと探していました。

そして、1つの研究レポートを見つけました*¹。

その研究は、南部鉄器協同組合から依頼を受けた行われたもので、依頼先から提供を受けた南部鉄器を使用して実験を行った結果がまとめられています。

そこでは、調理中に鉄製鍋から溶け出す鉄分のほぼ80%は、体に吸収されやすい「ヘム鉄」*であり、継続的な使用により貧血の改善に有効であることが示唆される、と説明しています。

*ヘム鉄とは、レバーなど赤身の肉類やマグロなど赤身の魚類に多く含まれる比較的吸収しやすい鉄分のこと。一方、ホウレン草や春菊などの緑黄色野菜やヒジキ、キクラゲなどの海藻類、および納豆、豆乳などの大豆製品に多く含まれる「非ヘム鉄」は、比較的吸収されにくい。
ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて5~6倍吸収されやすいとされている。

鉄製鍋による調理時間が長いほど鉄分補給量がアップ

調理中に鉄製フライパンや鍋から溶け出して食材に染み込む鉄分の量は、調理方法により違ってくることも、この研究で確認されているそうです。

具体的には、手軽にササっとフライパンで炒める野菜炒めなどより、じっくりと時間をかけてグツグツ、コトコト煮込むタイプの、たとえばビーフシチューのような料理、あるいは食卓で煮ながらいただく鍋料理やすき焼きなどのほうが、料理にかかる時間が長いぶんだけ溶け出す鉄分の量も増え、摂れる鉄分量もアップすることが確認されたそうです。

塩分や酸味のある調味料を使うとより多くの鉄分補給に

もう一点、これはちょっと意外だったのですが、使う調味料も溶け出す鉄分の量に影響するようです。

そこには、砂糖やみりんなどの糖分を多く含む調味料を使う料理よりも、味噌や塩、食酢などの塩分や酸味のある調味料を使う料理の方が、より多くの鉄分が溶け出すことが実証された、とあります。


毎日の3度3度の食事で鉄分補給を心がける

長引くだるさや疲れが取れない状態が続き、「貧血」や「かくれ貧血」を疑って受診した結果、たとえば「血清フェリチン値」が基準値を大きく下回っているような場合には、医師から鉄剤が処方されることもあるでしょう。

しかし鉄剤処方の有無に関係なく、かくれ貧血の状態を改善するには、以下の4点に注意して、毎日の食事から鉄分を効率的に摂る習慣を身に着けることをおすすめします。

  1. 鉄分を多く含む食品を毎日摂取する
    ほうれん草やヒジキなど、主に植物性の食品に含まれる「非ヘム鉄」より吸収率の高い動物性食品(赤身のの肉や魚類)に多く含まれる「ヘム鉄」を多く撮るようにする
  2. 食品中に含まれる鉄分の吸収率を高める
    ビタミンCが鉄分の吸収率を高めるため、ビタミンCを多く含む食品(ブロッコリー、ピーマン、キャベツ)などを一緒に摂るようにする
    鉄分の吸収率を高めるうえで必要な胃酸の分泌をよくするために、低塩分の梅干しや食酢、レモンなどの柑橘類を組み合わせると同時に、よく噛んで、ゆっくり食べることを心がける
  3. 食事中や食直後は鉄分の吸収を阻害する食品や飲料を控える
    ハムやソーセージ、ちくわやはんぺんのような練り製品に代表される加工食品、また清涼飲料水、スナック菓子類などに添加物として使われているリン酸塩は鉄の吸収を阻害する
    緑茶、紅茶、コーヒーなどに含まれるタンニンは鉄分と結合して鉄分の吸収を悪くする
  4. 栄養的にバランスのとれた食事を心がける
    鉄分の多い食品だけでなく、いくつかの食品を組み合わせて、1日3食を規則正しく摂る
    特に、赤血球をつくるうえで欠かせないビタミンB12を多く含む食品(かき、しじみ、はまぐりなどの貝類、葉酸を多く含む緑黄色野菜)、およびヘモグロビンの生成に必要な銅を多く含むナッツ類や大豆製品をコンスタントに摂り続ける

なお、栄養バランスのよさをチェックするには、厚生労働省と農林水産省が共同で作成した「食事バランスガイド」わ活用する方法もありますが、栄養学の知識がなくても簡単に栄養バランスをチェックできる方法として、「まごたち食」という食事の摂り方を覚えておくといいでしょう。

「まごたち食」については、こちらの記事で具体的に説明していますのでお役立てください。

→ 「栄養バランスのよい食事」は「まごたち食」で

参考資料*¹:今野暁子・及川桂子『調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化』