免疫力強化に必須栄養素として注目のビタミンD
第7波による驚異的な感染拡大により危機感が強まる一方の新型コロナウイルスですが、その猛威に負けないためには、感染を防ぐためのセルフケアが欠かせません。
具体的には、適正なマスクの着用やこまめな手洗い・手指の消毒、3密(密閉、密着、密接)の回避といった感染対策の基本をよりいっそう徹底することです。
併行して、感染から身を守ってくれる免疫システムが存分に機能するように、毎日の食事から、免疫機能に関係しているさまざまな栄養成分をまんべんなく摂取して、免疫力を強化することも大切です。
この免疫力を強化するうえで不可欠な栄養素として、このところ「ビタミンD」への関心が高まっていることをご存知でしょうか。
SNS上では、ビタミンDをサプリメントで補充すればコロナ感染を予防できるのではないかといった話まで、まことしやかに飛び交っているようですが……。
さて、真偽のほどはどうなんでしょう。
急ぎ調べてみましたので、わかったことを、以下にお伝えしてみたいと思います。
コロナ禍における食事に日本栄養士会長がメッセージ
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を受け、感染対策としての日々の食事のあり方について、一般市民向けのメッセージを最初に発表したのは、英国栄養士会でした。
これを受けるかたちでわが国でも、日本栄養士会の中村丁次(なかむらていじ)会長により、一昨年(2020年)4月、国内における新型コロナウイルスの感染状況や日本人の食習慣などを踏まえた詳細な解説文が、栄養士が伝えるべき一般市民へのアドバイスとしてまとめられ、公開されています*¹。
「Q&A」のスタイルでまとめられたこのメッセージ、「新型コロナウイルスの状況下、今、栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス」には、以下8点の「Q」が記載されています。
- 食事療法によって免疫システムを強化できますか?
- ビタミンDサプリメントは、とるべきですか?
- 水分の補給は関係ありますか?
- 特別に食品を購入しておく必要がありますか?
- 食品衛生と新型コロナウイルス感染について心配する必要がありますか?
- 新型コロナウイルスで栄養不良の改善が重要なのはなぜですか?
- 栄養不良のリスクがある人へのアドバイスやサポートする際のチェックポイントは?
- 病気によりすでに食事療法を実施している人は、どのようにすればいいでしょうか?
免疫力強化に必要なのは特定の栄養素ではない
まず「Q1」では、細菌やウイルスなどの外敵から私たちを守ってくれる免疫システムは、多くの栄養素*がさまざまなかたちで複雑に関係し合いながら成り立っていることを紹介しています。
したがって、特定の栄養素を多く含む食品やサプリメントだけで免疫システムを活性化させて免疫力を強化し、新型コロナウイルスの感染を防ぐというのは無理な話だということを、改めて強調しています。
逆に、たとえばたんぱく質欠乏症や極端なやせ、あるいは肥満、低栄養などにより一時的に免疫力が低下するようなことが仮にあったとしても、栄養バランスのとれた食事を続けることにより、免疫システムの正常な働きを取り戻すことは可能であると、説明しています。
つまり、免疫力を強化するためには、ある特定の栄養素や食品に依存することなく、さまざまな食品を栄養バランスよく摂取することが大切であると強調しているのです。
なお、「栄養バランスのとれた食事」と言われても、格別栄養学的な知識を持たない身にはわかりにくく、実際につくるのは難しいという方が少なくないのではないでしょうか。
そんな方には、毎日の食事の副菜(おかず)に、「まごたちわやさしい」の頭文字に沿って9種類の食材を意識して摂ることをすすめる「まごたち食」の考え方が参考になるのではないでしょうか。
免疫力強化に必須のビタミンDは不足しがち
そこで、このところ注目のビタミンDですが、「Q2」に、「ビタミンDのサプリメントは、とるべきですか?」とあります。
ご承知のように、ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つで、カルシウムやリンとともに、強い骨を維持して骨の健康を保つうえで、また筋肉や歯の健康維持にも欠かせない栄養素です。
さらに、ウイズコロナの現在、免疫システムの機能維持や調整にも、ビタミンDが重要な役割を担っていることが改めて注目されています。
統計によれば、日本人は押しなべて、1日に必要なビタミンDの摂取量はクリアできているようです。
とは言え、ビタミンDはちょっと厄介な栄養素で、日光の紫外線に当たってはじめて体内で活性化され、ビタミンDとして働くという特性があります。
そのため、摂取量自体は十分足りていても、実際に血中濃度、つまり血液中に吸収されて全身の組織に運ばれるビタミンDの濃度を見ると、日本人のおよそ半数、1日の日照時間が極端に短い地域や季節によっては8割以上の方がビタミンD不足の状態にあると推計されています。
バランスのよい食事と日光浴でビタミンD不足をクリア
もともとビタミンDが不足しがちなことに加え、新型コロナウイルスの感染対策として家に閉じこもる生活を余儀なくされ、直射日光を浴びる機会が極端に少なくなっています。
こうした状況を受け、不足しがちなビタミンDをサプリメントで補充して免疫力を強化すれば感染予防につながるかのような話が、SNS上でまことしやかに飛び交っているのだろうと推察します。
しかし、「感染を予防できる」とする確かなエビデンス(科学的根拠)は、現時点では何もなく、「健康的で栄養バランスのとれた食事を維持し、なおかつ十分な日光を浴びることができていれば、あえてビタミンDをサプリメントで補充する必要はない」と、中村会長は明言しています。
感染対策として外出を自粛しがちな生活にあっては、ビタミンD不足に陥らないように、晴天の日は庭や軒先、ベランダ、あるいは窓際などで過ごす時間を極力多くするようにするといいでしょう。
ただし、日光浴がいいからといって、肌が赤くなるまで紫外線を浴びるのはむしろ皮膚がんなどのリスクを高めることにもなりかねませんから、そこはやはりほどほどに――。
日光浴をする際は、皮膚に有害な作用が起きない範囲、季節や地域により少々違いはありますが、おおむね1日15~20分程度で十分とのこと。
その際には、顔と両腕を露出すればより効果的だそうです。
日光を浴びる機会が少ないならビタミンDが豊富な食品を
悪天候続きで日照りに恵まれない、または日中は屋内作業に追われて日光浴をしている間がないという場合、あるいは美容上日光はなんとして避けたいという方は、ビタミンDが豊富に含まれる食品を、意識して多く摂るようにするといいでしょう。
主菜、つまりメインのおかずとしては、サケ、マグロ、サバといった脂身が比較的多い魚、あるいはうなぎの蒲焼や卵黄がおススメです。
たとえばサケなら、普通サイズの1切れ(100g前後)で1日に必要なビタミンDを補うことができます。
副菜としては、キクラゲやマイタケ、干しシイタケ、エリンギなどのきのこ類にビタミンDが比較的多く含まれています。
大事なのは、その調理方法です。
ビタミンDは脂溶性で水には溶けにくいものの、炒め物や揚げ物など、油を使って調理すれば、体内でのビタミンDの吸収率をさらに高めることができます。
牛肉や豚肉と言った肉類にはビタミンDはほとんど含まれていませんが、例外として牛のレバーには少量のビタミンDが含まれています。
チーズ類や一部のヨーグルト、大人のための粉ミルクなどの乳製品にはビタミンDが添付されたものがありますから、上手に活用するといいでしょう。
ビタミンDをサプリメントで補充したいなら
なお、「あえてビタミンDをサプリメントで補充する必要はない」というのが中村会長からのアドバイスですが、体調が思わしくないうえに食事も十分とることができない、日光浴もできないといった場合には、サプリメントを活用するのも有効な方法と考えていいようです。
とは言え、ビタミンDを過剰に摂取すると健康被害を起こすリスクもあります。
服用している医薬品との相互作用で、思わぬ健康被害が発生することもありえます。
サプリメントを利用する際は、極力かかりつけ医と相談するようにしてください。
なお、サプリメントを含む健康食品については、日本医師会も摂りすぎを警告するメッセージを発信しています。
詳しくはこちらを読んでみてください。
→ 健康食品やサプリメントに頼りすぎないで!!
参考資料*¹:日本栄養士会「新型コロナウイルスの状況下、今、栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス」