「レジスタントスターチ」は第三の食物繊維
日本人の8人に1人が便秘に悩まされていると聞きますが、この便秘の解消に欠かせないのが食物繊維です。食物繊維には便秘以外にも、たとえば血糖値を下げる効果も期待できることが、日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドラインに明記されています*¹。
その他さまざまな健康効果を期待できる食物繊維ですが、この食物繊維には、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、溶けにくい「不溶性食物繊維」があることはよく知られています。
昆布やワカメなどの海藻類やオクラ、山芋といったネバネバ食品に多く含まれる水溶性食物繊維は、主に糖質の消化・吸収を緩やかにし、コレステロールの吸収を抑える働きをしてくれます。一方の、豆類や玄米、椎茸などのきのこ類、さらにはナッツ類にも多く含まれる不溶性食物繊維は、水分を吸収してふくらんで便のカサを増し、便通を改善する効果が期待できます。
ここまではすでによく知られていることですが、実は、食物繊維にはもう一つ、水溶性と不溶性、両方の食物繊維の働きを兼ね備えた、「第三の食物繊維」があることをご存知でしょうか。これが今、太りにくい主食として注目を集めている栄養成分「レジスタントスターチ」、日本語で言えば「難消化性でんぷん」です。今回は、このレジスタントスターチについて書いてみたいと思います。
レジスタントスターチなら食べても太らない
第三の食物繊維として注目されるレジスタントスターチは、「難消化性でんぷん」と呼ばれるように、食べても胃や小腸では消化・吸収されにくく、大腸の奥まで直接届くでんぷん類のことです。でんぷん類、つまり炭水化物なのですが、「難消化性」とあるように消化・吸収されにくいため、食べても太らないというわけです。
このレジスタンスターチは、米類や大麦、いんげん豆、かぼちゃ、山芋(長芋)、いも類など、身近な炭水化物、つまりでんぷんを含むさまざまな食材に含まれています。
このうち山芋以外の食材は、食べる前に加熱調理が必要です。ところがレジスタントスターチには、冷(さ)めると加熱前より含有量が増える特性があり、レジスタントスターチを効率よく体内、つまり大腸まで送り届けるには、一度加熱調理したら、その後しっかり冷ましてから食べることがポイントとなります。じゃがいもならポテトサラダに、豆類やかぼちゃは冷製スープにしてはいかがでしょうか。
レジスタントスターチを効率よくとるには加熱後に冷ます
私たち日本人がほぼ毎日食べている白米の主成分もでんぷんですから、お米を炊いたご飯にもレジスタントスターチが含まれています。同じ茶碗1杯のご飯からより多くのレジスタントスターチをとるには、冷ますことにより量が増えるというレジスタントスターチの特性を活かし、ご飯は炊き立ての熱々ではなく、いったん冷ましてから食べることです。
とは言え、冷ましたご飯、いわゆる「冷やメシ」では、なんとも味気ない気がします。しかし私たちは、おにぎりやお寿司、あるいは食欲が落ちがちな夏にはさっぱり感が人気の冷や汁ご飯(ご飯に好みの具を乗せて冷たいだし汁をかける)など、いろいろなかたちで冷やしたごはんをおいしくいただいています。
白米だけでなく、主食にしているそばやうどんなどの麺類、またパスタ類などは、いずれも糖質食材ですからでんぷんが主成分です。これらの食材も、ご飯のように加熱調理した後に冷たくしてから食べるようにすれば、より多くのレジスタントスターチをとることができます。
レジスタントスターチ最大の魅力はダイエット効果
レジスタントスターチ、すなわち第三の食物繊維には、便通の改善に加え、食後の血糖値の上昇を抑制して血糖値をコントロールする効果、さらにはメタボの方が気にしている血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きも期待できることが確認されています。
このように健康効果はさまざま期待できるのですが、レジスタントスターチ最大の魅力は、とりすぎは太るもとだとして敬遠されがちなでんぷん、つまり糖質が、食物繊維と同じ作用を発揮して、ダイエットやメタボ予防に貢献してくれることです。
胃や腸で消化されずに直接大腸に届いたレジスタントスターチは、そこでゆっくり発酵して、「腸内フローラ」と呼ばれる大腸の奥で生息しているさまざまな細菌のバランスをとりながら、腸内環境を整える働きをしてくれるのです。この「腸活」効果により、メタボ対策やダイエットの救世主となってくれるというわけです。
インフルエンザなどの感染症対策としては、腸内の免疫細胞を活性化して免疫力をアップしてくれる効果をねらい、レジスタントスターチをより多くとることのできる冷たいおにぎりや冷製パスタなどを、主食として献立に取り入れてはいかがでしょうか。
たとえば私の友人(男性)は、このところの体重オーバーを気にして、朝炊いたご飯をおにぎりにして職場に持参してランチとすることで、レジスタントスターチを増やしているそうです。
茎の部分が緑のバナナはレジスタントスターチが豊富
寝坊しておにぎりを用意できないこともあるようで、そんなときはバナナで代用しているとのこと。バナナにもレジスタントスターチが多く含まれています。
ただし、バナナは成熟していくにつれてレジスタントスターチの含有量が少なくなりますから、「グリーンチップ」と呼ばれる完全に成熟する前の、「茎の部分が緑色」のバナナがよりお勧めです。ちなみに、成熟しきって茎の部分まですっかり黄色くなっているバナナにはビタミンB群が多く含まれていますから、美肌や脂肪燃焼効果を期待できます。
なお、最近では、血液中の糖質(ブドウ糖)の濃度を示す「血糖値」を、わざわざ病院に行かなくても、街の薬局などで手軽にセルフチェックできるようになっています。レジスタントスターチの効果を知るためにも、血糖値をチェックしてみてはいかがでしょうか。詳しくはこちらをご覧ください。
⇒ 血糖値は街の薬局でもすぐチェックできます
参考資料*¹:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2019」