全ての労働者が受け取れる「労災保険給付金」

ケガ保険の話

労災保険給付金を受け取れる「労働者」とは?

タイトルをご覧になり、
「えっ、労働者って、私も入るのかしら?」
と疑問を持たれた方が少なくないと思いますので、まずはその辺の話から――。

「労働者」の定義はいくつかあるのですが、たとえば「労働基準法 第9条」では、
「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金が支払われる者を労働者という」
と説明しています。

この定義からすれば、オフィスで働く常勤のサラリーマンやOL、あるいは工場などで働いて給料を受け取っている方も、部長とか工場長といった役職の有無に関係なく、すべからく労働者にあたります。

では、常勤ではなく、パートやアルバイト、派遣等の名目で雇われている方はどうなのかというと、この場合も、勤務時間や勤務場所を事業者側から指定されて働き、常勤者同様、事業者から受けた仕事の依頼を正当な理由なしに拒否できる立場にはなく、仕事をしたぶんだけ賃金の支払いを受けています。

したがって、パートなどの方も同じ労働者とみなされ、労災保険の給付対象となります。

一方で、最近ではどこにも雇われずにフリーランスとして働く方が続々増える傾向にあります。

どこかの会社から「業務委託」を受けて仕事をし、その請け負った業務への対価を受け取っているわけです。

この場合は、雇用契約を結んでいるわけではありませんから、ここで言う「労働者」の枠からは外れ、労災保険の給付対象にはなりません。

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労災保険から受け取れる給付金には7種類ある

労働者を雇用している事業主には、雇っている人(いわゆる「社員」)がたとえ1人だけでも、その社員(場合によってはその遺族)の生活を守るために労災保険に加入することが義務づけられています。

雇われている側の労働者は、仕事中や通勤の途中に起きたアクシデント、いわゆる「労働災害」、通称「労災」によりケガをしたり、病気になったり、場合によっては死亡した場合も、この労災保険で補償される、つまり労災補償としての給付金などを受け取ることができます。

この労災補償には以下に示す7種類の給付制度があり、いずれの場合も給付を受けるには、申請手続きが必要となります。

この申請には、事業主による労災として認める証明が必要ですから、労災が発生した場合は、まずは事業主に報告し、必要な手続きを代行してもらうといいでしょう。

  1. 療養(補償)給付
    ▪ケガや病気で医療機関を受診する際に、ケガや病気が治るまでの治療を無料で受けられる
    ▪労災病院や労災保険指定医療機関で治療を受ける場合は窓口負担はない
    ▪上記以外の医療機関で健康保険により受診した場合は、後日窓口負担分の支給を受ける
  2. 休業(補償)給付
    ▪ケガや病気の療養のために仕事に就けない日は、休業4日目から給料の約8割を受けとれる
  3. 障害(補償)給付
    ▪ケガや病気が治癒したものの障害が残ったときは、障害年金*か障害一時金を受けとれる
  4. 介護(補償)給付
    ▪介護が必要な状態になり介護を受けている場合はその費用の支払いを受けられる
    ▪病院などに入院中や障害者支援施設で生活介護を受けている場合などは給付の対象外となる
  5. 遺族(補償)給付
    ▪不幸にして死亡した場合は、遺族に遺族補償年金か遺族補償一時金が支給される
  6. 葬祭(補償)給付
    ▪労災により死亡した場合、その葬祭費用分の給付を、葬儀を行った人が受けることができる
  7. 傷病(補償)年金
    ▪「2」の休業給付を受けている方のケガや病気が、療養開始から1年6か月を経過しても治癒しない場合に、休業給付に代えて受けることができる
*障害年金(障害補償年金)とは、病気やケガで日常生活や就労が困難となる障害が残ったときに受け取れる年金のことをいう。「日常生活がどの程度困難か」「就労に制限があるか」などで支給の対象となるかどうかが判断される。
心臓ペースメーカーや人工透析など特定の治療を受けている方やうつ病、アルツハイマーなど精神疾患の方などが対象になる。
この年金を受けとるには、年金保険料を所定の期間支払っていることが条件となる。

通勤途上のアクシデントで労災保険給付金を受け取れるのは

労災補償の対象となる労災は、仕事中の「業務災害」と通勤途上の「通勤災害」に分けられます。

このうち通勤災害は、自宅から就業場所、つまり業務を行う会社などへの出勤途中、あるいは会社から自宅への退勤途中に遭遇したアクシデントのことを指します。

しかし、何をもって「出勤途中」あるいは「退勤途中」だったと判断するか、
また遭遇したアクシデントが労災に該当するのか、あるいはあくまでもプライベートな行為なのか、
といったことは判別しにくいという問題があります。

一般に、労災として認められる「通勤」は、おおむね以下の5パターンです。

  1. 労働者の自宅と就業場所(本来の業務を行う場所)との間の往復
    ▪スーパーなどに立ち寄る場合は認められる
    ▪帰路の途中に飲食店や映画館に立ち寄るような場合は認められない
  2. 就業場所から他の就業場所(得意先など)への移動
  3. 自宅と就業場所との間の移動に先行する移動(いわゆる「立ち寄り」)
  4. 就業場所と自宅の間の移動に先行する移動(いわゆる「直帰」)
  5. 単身赴任者が週末に家族の住む自宅に帰る場合の自宅間の往復
    ▪ただし、親の介護や子どもの養育などの理由でやむをえず別居している場合に限る
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通勤途中に遭遇した交通事故に労災保険給付金は?

労災補償の対象となるのは「業務上の事由または通勤による労働者の傷病等」ですが、そのなかには、
「営業で得意先へ向かうために道路を通行中、建設現場からの落下物にあたって負傷する」とか、
「バスで通勤している途中に交通事故に遭い、ケガを負う」
といったことも起こりえます。

どちらのケースも、労災補償の原因となったアクシデントは、いわゆる労使関係にはない第三者の行為によって引き起こされたものです。

したがって労災補償の受給者となる被災者、あるいはそのアクシデントにより不幸にも被災者が死亡した場合はその遺族に対して損害賠償の義務を負うのは第三者、つまり事故の加害者です。

このような労災のケースは、「第三者行為災害」と呼ばれます。

この場合の手続きは少々複雑になります。
加害者側との交渉も含め、全てを会社の労務担当者に任せるのが確実かつ効率的でしょう*¹。

なお、労災に該当しないケガや病気の治療や療養のために仕事に就くことができず、収入が途絶えたときに健康保険の加入者が受け取ることができる「傷病手当金(しょうびょうてあてきん)」については、こちらの記事で詳しく紹介していますので参考にしてください。

→ 健康保険加入者が受けられる「傷病手当金」とは?

フリーランスの労災には特別加入制度がある

なお、企業などの組織に所属せずフリーランスとして働く方は労災補償の対象とはならないと冒頭で書きましたが、フリーランスの方にも、任意で加入できる労災保険の特別加入制度が用意されています。

この特別加入が認められるのは、労働者を雇用せずに一人で以下の事業を行っている方です。

  • 個人タクシー業者や個人貨物運送業者など
  • 大工、左官、とび職人など
  • 芸能関係作業従事者
  • アニメーション制作作業従事者
  • 柔道整復師
  • 林業や漁業従事者
  • 医薬品の配置販売業者
  • 再生利用廃棄物の収集・運搬・解体事業従事者、など

労災保険への加入は、労働者を雇用している事業主に義務づけられているものです。
しかしこの特別加入は、義務ではなく任意です。

そのため、仕事中のトラブルなどによって労災が起きてから慌てて加入しようとしても、おそらく加入は認められないでしょう。仮に認められても、保険給付はすぐには受けられません。

仕事柄、業務中にケガなどを負いやすい、あるいは病気を引き起こしやすいという方は、早めに加入手続きをしておくことをおススメします。

手続きなどについては、厚生労働省の「特別加入制度のしおり」*²を参考にされるといいでしょう。

「就業不能保険」の加入も検討を

なお、突然の病気やケガが労災として認められないケースもあります。

そんなときの収入源や収入が途絶えることに備え、民間の保険会社が提供している「就業不能保険」への加入を検討してみるのも一つの方法ではないでしょうか。

→ 収入が途絶えるリスクに備える「就業不能保険」は必要?

また、収入が途絶える原因には「失業」があります。
この場合の公的保険制度には「失業保険」としてお馴染みの「雇用保険」制度があります。

失業保険では失業手当を受け取れるのですが、場合によっては対象から外れることもあります。
受取に必要な条件や受給期間、受給額などについては、こちらを読んでみてください。

失業手当(失業保険)をもらえる人、もらえない人
会社などとの雇用関係のもとに収入を得ている人は、失業というリスクがある。その場合の生活を守るために雇用保険(失業保険)から失業手当(基本手当)を受給できる制度がある。だが、この対象から外れる人もいれば、失業手当受給までの待期期間がある。またその額は……。

参考資料*¹:厚生労働省リーフレット「労災保険給付の概要

参考資料*²:厚生労働省「特別加入制度のしおり