栄養価の高いりんごを1日1個食べて医者いらずに
「1日1個のりんごは医者を遠ざける」といったイギリスのことわざをご存知でしょうか。
一口にりんごと言っても種類は多く、世界では約15,000品種、日本国内だけでも約2,000品種のりんごが栽培されているそうです*¹。色だけ見ても、赤いものから黄色いもの、青りんごもあるなど実にさまざまです。
そのなかで、たとえば赤みが増して収穫時期を迎えたりんごについては、「りんごが赤くなると医者が青くなる」といったことわざもあります。
これは、赤く実った栄養豊富なりんごを食べると体調が良くなって医者にかからずにすむため、医者は商売あがったりになるといった意味だと聞きますが……。
収穫した後のりんごの賞味期限は保存方法で決まる
でも、りんごは栄養価が高く健康にいいから毎日食べるように言われても、収穫した後のりんごは、時間が経つにつれて品質が刻々と変化します。品質が落ちれば、味も栄養価も低下しますから、収穫時のような品質をキープできる「りんごの日持ち」、つまり賞味期限はどのくらいなのだろうかと考えてしまいます。
また、りんごに限らずあらゆる食材や食品の賞味期限には保存の良し悪しが大きく影響します。りんご本来の栄養価やさまざまな健康への効能を期待できるだけの品質を長持ちさせるには、どのように保存するのがいいのでしょうか。
今回はこの点にこだわって書いておきたいと思います。
妊娠中に食べるりんごは胎児の健康にもプラスに
りんごには、便通改善はもとより、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の予防に欠かせない「食物繊維」が豊富に含まれていることはよく知られています。減塩効果を高めて血圧の上昇を防ぐ「カリウム」も豊富ですから、血圧が高めで減塩を心がけている方にはお勧めの果物です。
また、女性に多い貧血の予防に欠かせない「リンゴ酸」や動脈硬化や花粉症などのアレルギー症状を抑えたり、美白効果も期待できる「りんごポリフェノール」も多く含まれていることはよくご承知のことと思います。
加えて、妊娠中は言うまでもなく、できれば妊娠前からりんごや柑橘類のようなビタミンCが豊富な果物を多く摂取していると、その抗酸化効果により、生まれてくる子の行動面の問題(夜尿症や多動症など)を予防する効果を期待できることが研究で確認ずみだということは先に紹介しました。

この記事を読んでくれた妊娠中の友人から、「産直りんごを取り寄せてりんごを毎日食べたいと思っているのですが、りんごの日持ちを考えると、5キロの箱買いでは多すぎるかしら」とのメールが届きました。
「りんご5キロ」とは、りんごの品種や大きさにもよりますが、私の経験から言えばおおむね20個前後でしょうから、1日1個として20日ほど自宅で保存することになります。
りんごの品質が変わらない賞味期限は1カ月程度
食品や食材の日持ちに関しては、「消費期限」と「賞味期限」というルールがあります。このうち「消費期限」は、弁当やサンドイッチ、総菜類、あるいはケーキなどの生菓子類のような、概ね5日以内にいたみやすい加工食品に表示されるものです。
一方の「賞味期限」は、同じ加工食品でもスナック菓子や缶詰、ペットボトル飲料など、品質が劣化しにくく、比較的日持ちする加工食品に表示することが求められています。

りんごは加工食品ではありませんから、生産者に消費期限も賞味期限も表示する義務は課せられていません。ただあえて「日持ち」ということで言えば、「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」、つまり賞味期限ということになるかと思います。
そこで、「りんごの賞味期限」について調べてみたのですが、品種や収穫時期などによって違いはあるものの、おおむね収穫してから1カ月程度のようです。
スーパーなどでりんごを購入する方も多いと思いますが、収穫してから店頭に並ぶまでの時間を考えると、購入してからの賞味期限はもっと短いと考えた方がいいでしょう。
ただし保存方法によっては、早く品質が落ちてしまうこともあれば、長持ちさせることもできるようです。
りんごの保存法―ポイントは水分の蒸発を防ぐ
そこで、品質を保って日持ちを良くする、つまり味や栄養を損なわずに賞味期限を延ばすりんごの保存方法を調べてみたところ、どうもポイントは、「水分の蒸発をいかに防ぐか」にあるようです。
具体的には、たとえば全国のりんご収穫量の約6割を占める青森りんごの公式サイトによれば、寒い地域で生産されているだけに「りんごは暑さが苦手」とのこと*²。ですから涼しくて風通しの良い場所であれば、直射日光が当たらないことを条件に、室内(15℃以下)で保存しておくのもOKとのこと――。
ただし、夏の間はもちろん暖房を使い始める秋から冬の間も、室内よりも冷蔵庫の野菜室(3~8℃)に保存するのがいいようです。
理想は、シーズンを問わず、水分の多い野菜をみずみずしく保存できるように温度設定されている冷蔵庫の野菜室に保存するのがいいでしょう。その野菜室に保存する際には、りんごを「ポリ袋などに入れて、しっかりと口を閉じてください」とのこと。
ポリ袋の口を閉じて密封する理由として、次の2点があげられています。
- りんごの水分が蒸発するのを防ぐ
- りんごから出るエチレンガス(植物の成長ホルモンのようなもので、野菜や果物の熟成を促す作用がある)の影響が他の野菜や果物に及ぶのを防ぐ
なお、箱買いなどをして大量のりんごがあり、保存期間が長くなる場合は、りんごを1個ずつ新聞紙やキッチンペーパーなどに包んでからポリ袋に入れて密封し、野菜室に保存するといいようです。
りんごの変色と賞味期限、消費期限
1日1個のりんごを食べることを目標にしているものの、1回で1個を食べきるのは難しく、半分ずつ2回に分けて食べることもあるでしょう。
その場合、一度カットしたりんごは、空気に触れると酸化が進み、時間の経過とともに品質が落ちます。品質を極力保つには、空気に触れないようにラップでぴったり包んでから冷蔵庫に入れて保存し、できるだけカットしたその日のうちに食べることをお勧めします。
切り口の変色を防ぐには、ラップで包む前に薄めの食温水(水200mlに塩を小さじ1/5程度)に漬けるかレモン汁を切り口にかけておくといいでしょう。
りんごをカットしてみたら芯の部分が変色していたら
購入してきたりんごをカットしたところ、真ん中の芯の周りが茶色に変色していることがあります。これは、保存状態が悪く、本来果実部分に吸収されるはずの芯の周りの密がそのまま残っている状態で、場合によっては賞味期限切れで腐りかけて黒く変色していることもあります。
このようなときは、変色している部分はカットして破棄し、残りを食べることもできます。しかし、購入した直後で気になるようなら、交換してもらうこともできますから、購入先に確認してみるといいでしょう。カットしたりんごが変色しているだけでなく酸っぱいようなニオイを発していたら腐っている証拠。つまり消費期限切れですから、食べずに破棄してください。
りんごポリフェノールは生で皮ごと食べるといい
なお、りんごの食べ方はいろいろですが、「りんごポリフェノール」の美肌効果などを期待するなら、ポリフェノールは赤い皮のすぐ下に多く含まれていますから、よく洗ってから皮ごと食べるといいでしょう。
この場合のりんごの洗い方ですが、りんごの表面の「油あがり」と呼ばれる油っぽいテカテカ、あるいはベトベトした感じが気になるときは、食用の重曹で軽くこすって洗うとテカテカがとれます。
この「油あがり」は、りんごが成熟すると増える脂質成分(リノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸)が皮の表面に出てくる現象で、りんごがよく熟して食べごろのサインだと言われています。スーパーなどでりんごを買うときは、皮の表面が乾いているものより脂ぎってテカテカしているものを選び、すぐに食べるのがいいとも言えるでしょう。
参考資料*¹:農林水産省「りんご(2)」
参考資料*²:青森県りんご公式サイト「青森りんご美味しい保存術」