歯を抜かずに残すための「歯内療法」って?

歯科医院体調が悪い?

歯を残すための治療を行う「歯内療法科」

このところ大学病院へ取材に行くと、外来フロアーに、おなじみの「内科外来」や「外科外来」などと並んで、「歯内療法(しないりょうほう)科」とか「歯内治療科」といった表示が目につくようになりました。

「歯科」ではなく、あえて「歯内療法」とか「歯内治療」という看板を掲げているのはなぜなんだろう、
一般的な歯科と何がどう違うのか疑問に思い、帰宅後、かかりつけの歯科医に聞いてみました。

電話でお尋ねしたからでしょうが、
「歯を抜かずに残すための治療を専門に行っているんですよ」
と、いつになくそっけない返事が返ってきました。

歯科にも専門分野があり、専門医がいることは漠然と知っていましたが、
「歯を抜かずに残すための治療」だという説明から推察するに、歯内療法科で治療を受けると、
将来「部分入れ歯」も「総入れ歯」も全く必要がなくなるということになるのだろうか……。

だったら、今後のためにさらに詳しいことを知っておきたいと思い、あれこれ調べてみましたので、わかったことをとり急ぎ書きとめておきたいと思います。

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歯の根っこの部分に起きた炎症を治す歯内治療

わが国では、厚生労働省が5年毎に、全国規模の「歯科疾患実態調査」を実施しています。

その直近の調査結果である2016年(平成28年)の統計値を見ると、
「40歳を超えて、すべて自分の歯」という人は二人に一人、つまりほぼ50%で、
50歳を超えると、61.5%の人が自分の歯を1本以上失っているのだそうです*。

40歳以上の二人に一人が最低でも1本の歯を失っているというのは少々驚きの結果です。

仮に、40歳になる前に起きた歯のトラブルすべてを「歯内療法」の専門医に治療してもらったら、この数字はどう変わるんだろうか、と考えてしまいます。

ところで、この「歯内療法」ですが、文字どおり「歯の内部」、つまり根管(こんかん)と呼ばれる歯の根っこの部分を治療することをいうようです。

「歯の機能を残すための基礎工事のようなもの」と説明する歯科医もいるようです。

具体的には、悪化させてしまった虫歯などの治療を受ける際、歯科医から「神経(しんけい)を抜く治療が必要ですね」とか「少々時間がかかりますが、歯の根っこの治療をしましょう」などと説明を受けることがあります。
このどちらも、歯内療法の範疇に入るようです。

*国は、満80歳になったときに自分の歯が健康な状態で20本以上残っていることを目標とした「8020(はちまるにいまる)運動」を1989年から始めている。もともと28本(親知らずも入れると32本)しかない歯を20本、それもできるだけ健康な状態で残すのは、口で言うほど簡単ではなく、当初、この「8020」を達成した人は10人に1人(10%)にも満たない状況であった。およそ30年を経て、2016年の歯科疾患実態調査では、達成者が2人に1人を上回る51.2%という結果が出ている。

歯がズキズキしたり歯肉が腫れたりしたら歯内治療を

たとえばむし歯を放置していると、歯の根っこの内側にあり、俗に「神経」と呼ばれる「歯髄(しずい)」という組織にまで感染が広がってしまうことがあります。

むし歯以外にも、固いものを噛んだとたん歯が欠けてしまったというような場合でも、そのままにしていると根管の内部に細菌が入り込んで炎症が起きることもあります。

自覚症状で言えば、歯がズキズキ痛んだり、うずいたり、歯肉が腫れる(はれる)といった症状が現れたら、細菌感染が根管内部の歯髄にまで広がっているサインと考えた方がいいようです。

このような場合に行われる治療が歯内療法です。

まずは細菌に感染して痛みや腫れの原因になっている歯髄の一部、または全部を取り除きます。
そのうえで、根管部分を薬剤によって清浄、殺菌し、再感染を防ぐためにその部分に詰め物をして細菌が再度侵入しないように密封することになります*¹。

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歯内療法の専門医がいるそうです

歯を支える土台となっている根管部分は、極めて微細な構造になっていて、奥深く枝分かれしています。

そのため、根管内部の、細菌に侵されている部分を残さずきれいに取り除くには、かなり高度な知識と技術を要する難しい治療です。

この治療中に、仮に感染対策が不十分だったりすると、細菌を含んだ唾液などが根っこの部分に入り込むことがあります。

そんなとき、そのまま密閉してしまうと、治療を終えた後に、細菌が再び増殖して感染が広がり、歯の根っこの部分に膿(うみ)がたまって痛みが出るなどして、再治療が必要になることになりかねません。

適正な根管治療を行うことによってこのような事態を防ぎ、1本でも多く歯を残すようにしようと、日本歯内療法学会は、独自に歯内療法の専門医制度を設けています。

学会が定めた一定数の症例を経験、報告し、専門的な研修を受講したうえで、書類審査や対面審査、筆記審査に合格した歯科医に歯内療法専門医の資格が与えられることになっているそうです。

2020年7月の時点で、全国に223名の歯内療法専門医がいるとのこと。
専門医の一覧表は、日本歯内療法学会のWebサイトで見ることができます*²。

歯内療法により歯の機能は永く残せる

歯内療法により歯肉の腫れや痛みなどの症状がなくなり、根幹部分が無菌状態であることを確認できれば、充填剤(じゅうてんざい)を使って密封します。

ここまで治療が進めば、歯の機能はしっかり残っていますから、後は治療で削ったりした部分にかぶせ物を装着するなりして治療は一区切りとなります。

ただし、虫歯を長く放置していたりすると、歯の根管部分にひびが入ったり、割れたりしていることがあります。

そうなってしまうと、歯の機能を残すことは難しく、抜歯することになるようです。
そうならないうちに早めに歯内療法を受けるようにしたいものです。

歯内療法を受ける前に治療費の概算を確認しておく

なお、歯内療法では、根管部分を治療中に細菌などを含んだ唾液などが入り込まないように、治療する歯以外を「ラバーダム」と呼ばれるゴム製のシートで覆いかぶせる方法をとることがあります。

また、微細な構造になっている根管部分の治療の精度を高めるため、「マイクロスコープ」と呼ばれる歯科専用の顕微鏡を使うこともあります。

その他、治療に使用する特殊機材や薬剤、歯科素材もケースバイケースで、なかには医療保険の適用外となるものもありますから、かかる費用もばかになりません。

したがって、歯内療法を受ける際は、治療費がどのくらいになるのか事前に確認したうえで、治療を受けることをおススメします。

参考資料*¹:日本歯内療法学会Webサイト

参考資料*²:歯内療法専門医一覧表