目覚めの一杯は冷たい水か白湯か、あるいは……
目覚めに飲むコップ一杯の水分には、眠っていた脳や体を完全に目覚めさせる効果があります。また、睡眠中に発汗によって失われた水分を補い、体が乾ききって脱水状態になるのを防ぐという健康上のメリットがあることも、よく知られています。特に夏は、熱中症予防に欠かせない大作です。
ただ、このとき飲む水分については、諸説あります。「冷たい水」をすすめる人もいれば、「白湯(さゆ)がいい」という声もあります。
友人のなかには、「眠っていた脳を活性化させたいから、カフェイン効果をねらって、いつもより濃いコーヒーを飲んでいる」という人もいます。取材で出会ったご高齢の女性が、「日本人ですからね。朝いちばんは、やっぱり淹れたての緑茶ですよ」と、語ってくれたこともありました。
それぞれに「なるほど!!」と納得させられますが、ホントのところはどうなんでしょう。目覚めに効く1杯は何なのか――。今回はちょっとそこにこだわって考えてみたいと思います。
目覚めの一杯の理想は、少しぬるめの白湯
まず、私の周りで多いのは「白湯」です。白湯とは、やかんや電気ポットで沸かしただけのお湯ではありません。一度よく沸騰させてから、人肌(ひとはだ)程度、おおむね40℃前後に冷ましたお湯です。しかも理想の白湯は、一度沸騰したら、10分間ほど沸かし続けるのがいいようです。
水道水には、消毒や殺菌目的で塩素が入っています。塩素の量は「水道法」により決められていて、人体によくない影響を及ぼす心配はないのですが、カルキ臭と呼ばれる塩素の不快なニオイが残ることもあります。
そこで、少し時間をかけて沸騰させることにより、水に含まれている塩素を蒸発させて取り除き、ニオイをかき消すと同時に、お湯をまろやかにして飲みやすくするのが目的です。
人肌程度なら熱すぎず、冷たすぎずの温度ですから、胃腸を冷やさず、体への負担も少なくてすみます。鉄分が不足気味の方は、鉄製ポットを使ってお湯を沸かせば、鉄分補給の効果も期待できます。
朝一番の飲み物に白湯がいいと言っても、起きぬけに白湯をつくるのは、ただでさえ慌ただしい朝の仕事となるといささか負担です。そこで、前の晩に白湯をつくり、小ぶりのポットに入れておくという方法をとっている方が多いようです。
ただ、沸騰させて塩素を取り除いた白湯は、殺菌効果がなくなっています。ポットに移した後は、安全のためにもなるべく早め、24時間以内に飲み切るのが肝心でしょう。
浄水器の水やミネラルウォーターは少し温めて
最近は、塩素を除去できる浄水器が一般家庭にも普及しています。あるいは飲料水にはもっぱら市販のミネラルウォーターを使っているという方もいるでしょう。
その場合は、電気ポットや電子レンジで温めるだけで白湯を用意することができます。500Wの電子レンジでしたら、耐熱性ガラスコップで2分を目安に温めます。
それと、高機能の浄水フィルターが内臓されたウォーターサーバースタンドを、キッチンなどに設置している家庭も増えているようです。そのなかには、「冷水」「温水」「常温水」機能を備えているものがあります。
この機種であれば、冷水と温水、あるいは冷水と常温水を適度に混ぜて、飲みやすい人肌程度に温度調節するだけで、白湯をつくることができます。
目覚めの白湯に電解質パウダーを溶かして飲む
我が家もずっと白湯派です。ただ3年ほど前からは、前の晩に用意しておいた白湯に、普通のポカリスウェットより甘さを抑えてあるポカリスエット イオンウォーター パウダーを溶かして飲むようにしています。
暑い夏の盛り、1日に何人もの熱中症患者を診察しているという救急科の専門医から、脱水予防のための飲み物について話を聞いたのがきっかけでした。
熱中症や、その一歩手前の脱水状態で救急搬送されてくる患者や家族に話を聞くと、「水分はしっかり摂っていたんですが」という答えが返ってくることが多いのだそうです。
そこで、「水分って、具体的に何を飲んでいましたか」と尋ねると、お茶だったり、麦茶だったり、ペットボトル入りのミネラルウォーターだったり――。
「結局のところ、水分は補給できているんですが、発汗によって失われる電解質が補給できていないんですね。だから、脱水にもなるし、熱中症にもなるというわけなんです」
熱中症対応に当たる救急医の目覚めの一杯も
この説明に続き、医師がつぶやくように話すのを私は聞き逃しませんでした。
「僕なんかは、睡眠中の発汗で失われた電解質を補うために、朝起きたらすぐ、枕元に置いてある糖質と脂質ゼロタイプのスポーツドリンクを飲みます。何しろ一晩にかく汗の量は、個人差はありますが、コップ一杯分と言われていますから、失われる電解質も無視できないですから……」
この話を聞いてからは、前の晩にポットに用意しておいた白湯180mlにイオンウォーターパウダー1スティックを溶かして飲むのが、我が家の朝の習慣になっています。
朝起きたときに喉の渇きを感じる、唇がカサカサに乾いているという方は、是非一度、白湯にイオンパウダーを溶かす方法を試してみてください。
冷たい水は目覚めの体には刺激が強すぎる?
白湯と並び「冷たい水」を飲んでいるという方も多数派でしょう。ただ、冷蔵庫から取り出してすぐの冷水は、目覚めたばかりの体には冷たすぎて、胃腸を強く刺激し、体温を下げますから、特に冷え症の方にはあまりおススメできません。
冷たい水の刺激で腸の蠕動運動が活発になるから便秘気味の人にはいい、という説もあるようです。まあ、理屈としてはわかります。
しかし、むしろ便秘がちな方、また外食やコンビなどのの出来合い弁当を多用する食生活で野菜が不足しがちな方は、カゴメ 野菜生活100 などを1缶(200ml)、就寝前にベッドサイドに用意しておき、目覚めとともに飲むというのはいかがでしょうか。
私の友人にはこの方法を、「便秘対策に加え、二度寝による遅刻予防対策にもなるから」と、習慣にしている女性がいます。
目覚めのコーヒー一杯はカフェインが心配
それとコーヒーですが、確かにカフェインは眠気覚まし以上の覚醒効果が期待できるでしょう。それと、カフェインには胃液の分泌を促す作用がありますから、朝は食欲がなく朝食を抜くことが多いという方には、食を促すというプラスの効果も期待できるかもしれません。
とは言え、すきっ腹に濃いめのコーヒーは、胃液、つまり胃酸の分泌を促す作用があるため、逆に胃腸に負担をかけることにもなるのではないかと心配です。
それと、カフェインには、さほど強くはないものの、排尿を促す利尿作用もあります。睡眠中の発汗で脱水気味になっているところに濃いめのコーヒーを飲めば、この利尿作用により、かえって脱水をすすめることになってしまうのではないか、との懸念が残ります。
それと、ご高齢の女性が目覚めの一杯にしているという緑茶です。緑茶にもカフェインが含まれていますが、その量は、緑茶の種類や濃さによる違いはあるものの、コーヒーの4分の1と聞きますから、あまり気にする必要はないのではないかと思います。
むしろ、長年続けてきた習慣は、よほど健康にマイナスに働くことがなければ、急にやめたり、変更したりしないほうが高齢の方にはいいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。