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日本人の慢性的なマグネシウム不足と頑固な便秘
日本人は、栄養素の「マグネシウム」が慢性的に不足していることをご存知でしょうか。
マグネシウムは、カルシウムやカリウム、ナトリウムなどとともに健康を維持していくうえで欠かせない「必須ミネラル」の一つです。ミネラルに「必須」とついているのは、体の中で自ら合成することができないことを意味します。不足すると、さまざまなかたちで健康に支障を来してくることから、健康を維持していくためには、毎日の食事からコンスタントにとり続ける必要があるのです。
このマグネシウムが、骨や歯の健康を維持するうえで重要な役割を担っていることはよく知られています。しかし、日本人の8人に1人が悩まされているという便秘*、とりわけ長引く頑固な便秘の予防にマグネシウムが大きく貢献していることはあまり知られていないのではないでしょうか。
ということで今回はこの、マグネシウムと便秘の関係について、書いてみたいと思います。
マグネシウムが便を軟らかくして便秘を解消
便秘の原因は実にさまざまありますが、その一つに「水分不足」があります。大腸内に水分が足りない状態が続くと、腸管内にたまっている食物残渣(しょくもつざんさ)、つまり「便」は、とかく硬くなりがちで、そのため体外に排泄されにくくなります。
硬くなった便がその状態のまま腸管内に長く残っていると、便はさらに硬さを増して出にくくなるという負の連鎖に陥り、長引く便秘に悩まされることになります。
この状態を防ぐうえで、マグネシウムが不可欠なのです。なぜならマグネシウムには、吸水性と言って、水分を吸い取る性質があるからです。この作用により、腸管内に水分を集めて便に水分を含ませ、「便のかさ」を増したり、軟らかくしたりして、排便をスムーズにしてくれるのです。
便秘、とりわけ「慢性便秘症」と診断されるような長引く便秘については、2017年に日本で初めての診療ガイドラインがまとめられています。このなかで、慢性便秘症の治療薬の一つとして推奨されているのは、マグネシウムの吸水作用を活用した、【第3類医薬品】酸化マグネシウムE便秘薬 のような「酸化マグネシウム」の便秘薬です。
この酸化マグネシウムは、使い方を間違えると「高マグネシウム血症」と呼ばれる副作用が現れます。その初期症状や対処法などはこちらの記事を読んでみてください。
なお、便秘のなかには、医師の診断の下に検査・治療が必要な「便秘症」が少なからずあります。
詳しくくは、こちらを参照してください。
マグネシウムが豊富な和食が便秘には効果的
腎機能が正常に機能していることが条件とはなりますが、安心して使用できる便秘薬があることは、便秘に悩まされている方にとっては朗報でしょう。とは言え、理想としては薬に頼ることなく、なんとか自力で便秘を予防したいものです。
対策としては、食事や運動など生活習慣を見直すことから始めることが大切です。とりわけ食事については、マグネシウムの吸水性を最大限活用したいところですが、冒頭で触れたように、現代人はとかくマグネシウムが不足しがちで、その原因の多くは、食生活が欧米化している点にあると指摘されています。
マグネシウムを豊富に含む海産物・葉物野菜・大豆製品
マグネシウムは多くの食品に含まれています。なかでも含有量の多い次のような食品を、日頃から意識してより多く食べるようにすれば、マグネシウム不足を防ぐことができ、それがひいては便秘予防に直結します。
- ひじきやこんぶ、海苔、わかめ、しらす干し、牡蠣などの海産物
- 食物繊維の多い五穀(米、麦、あわ、きび、豆)
- 豆腐(本にがりを使用したもの)や納豆、油揚げなどの大豆製品
- ほうれん草や春菊など、緑色の葉物野菜
- バナナや干しいちじくなどの果物・ドライフルーツ
- カシューナッツやクルミなどのナッツ類
- 朝食用栄養強化シリアル
マグネシウムが豊富な食品の多くは、日本人が伝統的に続けてきた和食ではよく使われます。「ひじきの煮物」「ほうれん草の和え物」のような家庭料理が、それと料理とは言えないでしょうが「納豆かけご飯」などは、その代表でしょう。
ところが、動物性のたんぱく質や脂質にウエイトをおく欧米スタイルの食事では、マグネシウムの多い食材の摂取は、どうしても二の次になりがちです。毎日の食事で、季節ものの葉物類や海産物を意識して摂るように心がけたいものです。
もちろん、十分な水分をとったり適度にからだを動かすこと、また毎日決まった時間にトイレで排便を試みることや、便意を感じたら我慢しないですぐにトイレに行くこともお忘れなく。
なお、第三の食物繊維として注目を集めるレジスタントスターチも活用してみてはいかがでしょうか。
マグネシウム補給をサプリメントに頼りすぎない
通常の食事だけではマグネシウムを十分とれないようなら、栄養補助食品やサプリメントの利用を検討するのもいいでしょうが、その際は、サプリメントに頼りすぎないなど細心の注意が必要です。
健康の維持・増進をはかるうえで摂取することが望ましいとされるエネルギーや各栄養素の量の基準は、「日本人の食事摂取基準」にまとめられています。この食事摂取基準は5年に一度改定されていて、最新版は「日本人の食事摂取基準 2020年版」です。
この2020年版では、「通常の食事からのマグネシウムの過剰摂取による好ましくない健康への影響は、日本人において発生した報告はない」として、通常の食品からのマグネシウム摂取量の上限値は設定されていません。ただし、栄養補助食品やサプリメントなど、通常の食品以外からのマグネシウムの摂取量については、成人で1日350㎎と制限されています*²。
サプリメントなど、食品以外からこの量を超えてマグネシウムをとりすぎると、食欲不振、吐き気などがみられることもありますが、最も顕著なかたちで現れるのは下痢です。
ということは、便秘対策として、通常の食事に加えてサプリメントなどによりマグネシウムを補給しているときに下痢気味になったら、マグネシウムのとりすぎと判断してサプリメントの量を減らすか中止したほうがいいということになります。
サプリメントの利用については、日本医師会が国民向けに利用上の警告メッセージを出していますので、コチラに目を通してみてください。
「にがり」を便秘対策としてとっている方へ
なお、便秘に、またダイエットにも効果があるとして、豆乳から豆腐を作るときに凝固剤として使われる「にがり」を摂取している方が少なからずいるようです。
この「にがり」は、海水を濃縮して塩を取り除いた後に残る液体です。主成分は塩化マグネシウムですから、マグネシウムの吸水作用で便が軟らかくなるなどの効果が期待できるのですが、摂りすぎると下痢を起こすことがあります。下痢をしたときはにがりの量を減らすか、いったん中止して様子を見るなど、くれぐれも飲み過ぎないように注意してください。
最近開発された、ゆず果汁に水溶性食物繊維のβ-グルカンを添加した「ゆずちゃんゼリー」を試してみるのもいいのではないでしょうか。
参考資料*¹:MAG21研究会公式ページ、専門家が語るマグネシウム「便秘の原因と定義・治療薬を紹介―正しい予防と対策方法とは?」
参考資料*²:厚生労働省「日本人の食事摂取基準 2020年版」P.285-288