補聴器が必要なら「補聴器相談医」に相談を

補聴器保険の話
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難聴でも補聴器を使用しないのは補聴器が高額だから?

国内には難聴の方が約1430万人いるそうですが、補聴器を使用しているのはそのわずか11.4%、数にして約200万人と推定されています。欧米諸国では難聴者の30~40%が補聴器を使用しているそうですから、日本の補聴器普及率は、欧米の半分以下ということになります。

その原因はいくつか考えられますが、補聴器購入にかかる費用が関係していることは否めないでしょう。

補聴器には耳の後ろにかけるタイプの「耳かけ型」もあれば、耳の穴にスッポリ収められる「耳あな型」、あるいは「箱型」などがあります。選ぶタイプや備わっている機能により購入費用は異なりますが、平均的なもので片耳だけで10万円ほど、なかには40、50万円するものもあると聞きます。

ところで補聴器は、「管理医療機器」です。医療機器だから補聴器の購入には公的医療保険(いわゆる「健康保険」)が使えて自己負担分(2、3割)だけで購入できるだろうと考える方が少なくないようですが……。残念ながら現時点では、健康保険はもちろん介護保険も適用の対象から外れています。つまり全額自費で購入するしかないということです。

ただ、補聴器を購入する方の経済的負担を軽減するための公的制度が用意されていますので、今回はその経済的負担軽減のために利用できる制度として、3点を紹介しておきたいと思います。

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補聴器相談医の処方で購入すると医療費控除を受けられる

1点目として、いくつか条件がありますが、医療費控除が受けられること――。その条件ですが、「補聴器相談医」を受診し、薬で言えば処方箋にあたる「補聴器適合に関する診療情報提供書」の発行を受けて、「認定補聴器専門店」で補聴器を購入した方はもれなく利用することができます。

補聴器相談医とは、難聴の方が正しい診断のもとに有効な補聴器を適正に選択して使用できるよう、日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会が認定医制度を設けているのですが、その認定を受けた耳鼻科医のことです。現時点で全国に5,000名ほどいるそうです。

最寄りの補聴器相談医は、日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会の公式Webサイトで公表されています。補聴器購入を考えた時は、忘れずにチェックしてみてください。

認定補聴器専門店とは、補聴器の調整技能の資格を得た「認定補聴器技能者」がいる店です。この専門店以外から補聴器を購入した場合は、医療費控除の対象外となりますからご注意ください。最寄りの認定補聴器専門店は、こちらの一覧表*²から探すことができます。

補聴器を購入した年度末に税務署に確定申告をする際、次の二つの書類を添えて所定の手続きで申請すると、医療費控除が受けられます。

  • 補聴器相談医発行の「補聴器適合に関する診療情報提供書」の写し
  • 補聴器購入費の領収書(補聴器購入店発行)

医療費控除ですから、支払った購入費がそのまま戻ってくるわけではありません。期待できるのは節税効果、つまり所得税及び住民税が安くなるということです。

難聴の程度に応じて補聴器購入費のサポートが受けられる

2点目は、補聴器購入者全員が対象というわけではないのですが――。難聴の程度によっては聴覚障害による身体障害者の認定を受け、障害者手帳の交付を受ける*ことができるのをご存知でしょうか。

この手帳を持っている方は、補聴器が、障害者総合支援法で定められた「補装具」として認められ、補聴器を原則1割負担で購入することができます。この制度を活用するには、以下の手順を踏む必要があります。

手続きを自分でするのは煩わしいという方は、病院を受診した際に医療ソーシャルワーカー(診察室の看護師にお尋ねください)に相談するか、福祉事務所の担当者に訊ねるといいでしょう。

  1. 居住する市区町村の福祉事務所あるいは役所の身体障害者福祉担当窓口で「身体障害者手帳交付申請書」「身体障害診断書・意見書」を受け取り、記入してもらう医療機関の指定を受ける
  2. 指定された医療機関を受診し、難聴の程度が法で定められた障害程度であるかどうかの認定を受け、認定されたら「身体障害者診断書・意見書」に必要事項を記載してもらう
  3. 認定を受けたら、再度市区町村福祉事務所あるいは身体障害者福祉担当窓口を訪れ、必要書類を提出して補装具(補聴器)費支給の手続きを行う
  4. 自宅に支給決定通知書と補装具(補聴器)費支給券が届いたら、それを補聴器販売店に持参して補聴器を1割負担で購入する
    なお、自治体によっては、支給決定までに1カ月以上かかることもある
    また、補聴器販売店による見積書の提出を求める自治体もある
  5. 補聴器購入後、手続きをした福祉事務所に購入時に受け取った領収書を提出して指定額を請求する

独自の補聴器購入費助成制度のある自治体も

もう1点は、補聴器購入者に対する自治体の助成制度があることです。

自治体によってこの制度の対象となる方は異なりますが、一般に、医師が補聴器の使用が必要と認めているものの、難聴の程度が軽度~中等度で聴覚障害による身体障害者手帳の対象(高度難聴以上)から外れるため、補聴器購入費用が障害者総合支援法の「補装具費用」として認められない方が対象となります。

助成は一人1台に限られ、助成を受けるには所得制限があります。また、年齢制限(18歳未満、あるいは50歳以上、65歳以上、70歳以上)を設けていたり、「要援護者および一人暮らしで日常生活に支障がある方」といった条件を定めている自治体もあります。

補聴器本体および付属品の購入費用として、25,000円を上限に助成している自治体が多いようですが、購入費の半分の額を助成する自治体もあります。集音器購入費や補聴器の修理代、メンテナンス費、電池代などは対象から外れます。

助成事業を行っている地方自治体のリストと助成の詳細については、全国難聴者・中途失聴者団体連合会のWebサイト*³にて紹介されていますので、確認してみてください。

参考資料*¹:日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会認定「補聴器相談医」名簿

参考資料*²:全国の認定補聴器専門店一覧

参考資料*³:全国難聴者・中途失聴者団体連合会「補聴器に関する助成制度を行っている自治体」