食品ロスの1割が消費期限や賞味期限の期限切れ
食べ残しや売れ残り、あるいは消費期限が近いなどの理由で、食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス(フードロス)」があまりに多いことが世界的問題となっています。
私たちの国も例外ではなく、「食品ロス」の量は年間約600万トンにも及ぶとのこと――。
まだ食べられる食品を10トンの大型トラックで約1,640台分、毎日廃棄している計算になり、日本人1人当たりで言えば、食品ロスの量は年間47キログラムになるそうです。
食品ロス、つまりまだ食べられるのに捨ててしまう理由として多いのは、「食べ残し」あるいは「買いすぎて保存していたものの傷んでしまった」などですが、「消費期限切れ」や「賞味期限切れ」も全体の1割を占めるとする調査結果もあります*¹。
消費期限や賞味期限の「期限切れ」になった食品をやむをえず廃棄する、といったことは誰もが一度や二度は経験しているのではないでしょうか。
その際、消費期限切れになったものは捨てるしかないものの、賞味期限切れの食品については、「味は多少落ちているかもしれないが食べられるわけで……」と、破棄すべきかどうか迷うものです。
そこで今日は、食品ロス削減の観点からも、是非しっかり覚えておきたい「消費期限」と「賞味期限」の違いや「賞味期限」を過ぎた食品の扱いについて、書いてみたいと思います。
「消費期限」と「賞味期限」の違いを覚えておこう
今さらながらの感もしないではありませんが、まずは念のため、農林水産省の解説*²を参考に、「消費期限」と「賞味期限」について基本を押さえておきたいと思います。
「消費期限」は、袋や容器などのパッケージを未開封の状態で、パッケージに明記してある「保存方法」で保存した場合に、腐敗などにより安全性を欠く恐れがなく、「その日まで安全に食べられる期限」のことをいい、「年月日」で表示されます。
弁当やサンドイッチなどの調理パン、総菜類、ケーキなどの生菓子類、食肉、生麺類など、品質が急速に劣化しやすい(概ね5日以内にいたみやすい)加工食品に付けられるものです。
消費期限を過ぎたこれらの食品は食べずに破棄することになります。
したがって食品ロスを増やさないためには、消費期限のある食品を一度に買いすぎないこと、こまめに冷蔵庫をチェックして消費期限が近い食品から食べることが大切でしょう。
「賞味期限」を過ぎた食品を食べるかどうか
「賞味期限」とは、パッケージを未開封の状態で、パッケージに明記してある「保存方法」に従って保存した場合に、「その日まで品質が変わらずにおいしく食べられる期限」、つまり品質保持期間のことです。
消費期限同様に賞味期限も「年月日」で表示されます。
ただし、賞味期限を示すべき食品のうち製造日から賞味期限までの期間が3カ月以上ある食品については、「年月」での表示が認められています。
スナック菓子やインスタント麺類、チーズなどの乳製品、缶詰、ペットボトル飲料、レトルト食品など、消費期限に比べ品質が劣化しにくく、日持ちする加工食品に付けられます。
賞味期限が切れた後は緩やかに品質劣化がすすみますが、必ずしもすぐに食べられなくなるわけではありません。
食べられるかどうかは、食品の状態(色やにおい、味など)から個人が判断することになります。多少なりとも「おかしいかな」と感じたら、食べるのはやめたほうが無難でしょう。
「品質の劣化しやすさ」が消費期限と賞味期限を分ける
ほぼ全ての加工食品には、「消費期限」か「賞味期限」、いずれかの期限が表示されています。
一つの加工食品に「消費期限」と「賞味期限」のどちらを記載するかは、その食品の「品質の劣化しやすさ」によって決められ、その基本的な考え方は、厚生労働省と農林水産省が定めた「食品期限表示のためのガイドライン」に示されています*³。
牛乳の期限表示は殺菌方法により2種類ある
たとえば「牛乳」には、「賞味期限」が表示されている場合と、「消費期限」が表示されている場合の2種類があることにお気づきでしょうか。
ガイドラインによれば、この違いは、「殺菌方法」によりどちらの期限表示をするかが決められているためです。
超高温で殺菌した「高温殺菌牛乳」は、菌を死滅したとして「賞味期限」が表示されます。
一方、低温で殺菌した「低温殺菌牛乳」については、菌がまだ残っている可能性があるとして「消費期限」が表示されます。
ただし、「消費期限」「賞味期限」のいずれにおいても、「未開封で10℃以下の冷蔵保存」してあることが条件で、いったん開封したら消費期限や賞味期限は無効となりますから、開封後はできるだけ早く(2日ほど以内に)飲み切ることが推奨されます。
開封してから2日以内でも、「牛乳が分離してブツブツができている」「普段と違うニオイがする」「酸味や苦みがある」「加熱したら豆腐のように固まったり分離している」といった場合は、すみやかに処分すべきです。
なお、牛乳を使った加工品であるヨーグルトは、劣化しにくいため「賞味期限」が設定されています。
医薬品や化粧品などは「使用期限」をチェック
食品ではありませんが、医薬品(市販薬)や医薬部外品(「肌荒れ・にきびを防ぐ」「美白」「デオドランド」などの効果を持つ薬用化粧品や育毛剤、除毛剤、制汗剤、毛染め剤、入浴剤、マウスウォッシュ、ビタミン剤、消毒剤消毒剤)、化粧品などには「使用期限」が明記されています。
この「使用期限」は、未開封の状態で、その期日までに使用すべき期限として「年月日」で表示されます。「期限を過ぎた場合は使用しないでください」という意味です。
医薬品の場合は、含まれている成分によっては時間が経つにつれて化学変化が起こり、副作用につながるリスクがあります。
しかし、たとえば入浴剤などの医薬部外品は、多少の期限オーバーなら使用してもいいとの声もあります。
いずれにしても添付文書をよく読んで、そのへんは個人で判断すべきでしょう。
参考資料*¹:消費者庁「食品ロス削減特設サイト」
参考資料*²:農林水産省「消費期限」と「賞味期限」
参考資料*³ :「食品期限表示のためのガイドライン」