妊婦さんにはりんごや柑橘類をすすめたい

りんご食と健康
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妊娠中の果物摂取と生まれてくる子の問題行動に関係が

友人から、結婚して半年になる娘さんから「おめでた」の報告があった旨のメールが届きました。

初孫だから嬉しいけど、コロナが完全に落ち着いていないだけに心配だと――。さらに、こう続きます。

「妊娠中は果物をしっかり摂ったほうがいいと聞きますが、おすすめの果物をご存知?」

メールを一見して、1年半ほど前に読んだある研究レポートを思い出しました。

それは、妊娠中に緑黄色野菜や果物を食べると、生まれてくる子の情緒や行動面の問題を防ぐ可能性のあることが認められたというものです。

今まさに妊娠中やこの先妊娠を考えている女性には、是非とも知っていただきたい報告でした。

日本人は欧米人ほど果物を食べていない

欧米人は、男女の別なく、食後のデザートとしてフルーツをよく口にします。

一方で私たち日本人には、概してそうした習慣がなく、食後に限らず、生の果物を摂ること自体、欧米人に比べると際立って少ないように思います。

それだけに、この研究成果は、一人でも多くの若い世代の女性に知っておいてほしいと、かねてから考えていました。

友人からのメールを読んで、丁度良い機会なので、研究内容を簡単にまとめておきたいと思います。

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妊娠中の果物摂取とわが子の行動面の問題に因果関係が

この研究を行ったのは、愛媛大学大学院で予防医学を研究している三宅博教授を中心に、東京大学や琉球大学の研究者チームです。

研究チームは、妊娠中の母親とその母親から生まれた子、1,199組を対象に追跡調査したデータをもとに、妊娠中の母親の果物や野菜の摂取状況と、その母親から生まれた子の5歳時点での情緒や行動について、両者の間に関連があるのかどうか、あるとしてそれはどのようなものなのかを調べています。

その結果、「さらなる研究データの蓄積が必要」と断ったうえで、こう結論しているのです。

「妊娠中の野菜、果物(特にりんごと柑橘類)およびビタミンCの摂取は、生まれた子の行動面の問題*に予防的に働く可能性が認められた」

*幼児の行動面の問題には、「親指しゃぶり」や「夜尿症(おねしょ)」のような、発達に伴い自然に解消されるものから、治療が必要とされる「注意欠如(集中できない)」や「多動症(ADHD;じっとしていられない)」などがある。

カギを握るのは母親の体内に取り込まれる抗酸化物質

すでにご承知のことと思いますが、ブロッコリーに代表される緑黄色野菜や果物類には、ビタミンAやビタミンC、ビタミンE、さらには「ポリフェノール」とか「カロテノイド」など、いわゆる「抗酸化物質(こうさんかぶっしつ)」が豊富に含まれています。

この抗酸化物質には、身体の中で増えてしまった活性酸素、つまり顔のシミやシワを含む老化現象や生活習慣病の元凶とされる「悪玉」を取り除いたり減らしたりして、酸化により身体の働きがサビつくのを防ぐ効果があることで知られています。

妊娠中の母親のケースで言えば、抗酸化物質を多く含む野菜や果物類を摂取すると、母親はもちろんお腹の中にいる子どもにも有害な酸化ストレスを減らして、酸化ストレスによる健康障害を防ぐ効果を期待できることは、これまでも幾度となく指摘されてきました。

しかし、この可能性を、一人の人間ではなく大きな集団を対象に、ある一定期間にわたり疫学的に調査し、実証した研究はありませんでした。

それだけに、三宅教授らによるこの研究成果は、特に妊娠を考えている女性には看過できない貴重な情報と言っていいでしょう。

妊娠中はりんごや柑橘類など「抗酸化物質」が豊富な果物を

そこで、具体的な話として、「果物にもいろいろあるが、どんな果物がいいのか」です。

研究チームは、「特にりんごと柑橘類(かんきつるい)」としています。

りんごも柑橘類(みかんやオレンジなど)も、あざやかな色をしていますが、その色素成分に、抗酸化物質が豊富に含まれているのです。

りんごや柑橘類以外にも、抗酸化物質が豊富な果物はさまざまあります。

しかし、季節に関係なくオールシーズン手に入り、あまり手をかけなくても手軽に食べられる、しかもさほど高価ではないという点で、研究チームは、りんごや柑橘類を推奨しているようです。

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妊娠16週を過ぎたら毎日300グラムの果物を

では、妊娠中に、そのおすすめのりんごや柑橘類を、毎日どのくらい摂ればいいのでしょうか。

この点については、残念ながら研究では触れられていません。

そこで、厚生労働省と農林水産省が共同で、健康で豊かな食生活の指針として示している「食事バランスガイド」に、その答えを探ってみると――。

そこでは、活動量が「ふつう」*の成人男女の場合の果物の目標摂取量は、可食部分、つまり皮や芯など捨てる部分を除いた食べられる部分で、1日200グラムが望ましいとされています。

そのうえで、妊娠中期と妊娠末期、つまり妊娠16週以降、および授乳期にある女性は、それぞれ「プラス100グラム」、つまり、1日に300グラム摂取するのが望ましい、とされています。

*食事バランスガイドでは、活動量が「ふつう」を、「座り仕事が中心だが、歩行・軽いスポーツ等を1日5時間程度は行っている」としている。

りんごなら1個半、みかんなら3個を毎日摂取する

「1日に300グラムのりんご、もしくは柑橘類と言われても、具体的に言ってもらわないと……」といった声が聞こえてきそうです。

そこで、改めて調べると、一般的なサイズのりんごやオレンジ(柑橘類)ですと、皮や芯の部分を除いた可食部分の半分が、おおむね100グラムに相当するとのこと。

ですから300グラム摂るには、毎日1個半は必要ということになります。

同じ柑橘類でも、みかんは、普通サイズの1個が100グラムとのこと。したがって、1日に3個は食べたいところです。

なお、りんごにも、いわゆる賞味期限はあります。賞味期限、つまりりんごの栄養価や健康への効能は保存方法により違ってくるという話をこちらで書いています。是非一読を。

りんごの栄養価と効能を長持ちさせる保存方法
りんごの栄養価の高さは「1日1個のりんごは医者を遠ざける」ほどだと言われる。さまざまな健康への効能が確認されているが、りんごにも賞味期限があり、品質が落ちれば栄養価も効能も低下する。幸い、保存方法により品質をキープするコツはある。その方法をまとめた。

果汁100パーセントならジュースも

ここでさらに疑問としてあがってくるのが、果物のジュース類ならどうかということですが、これも調べました。

同じフルーツジュースでも、添加物のいっさいない果汁100パーセントのジュースなら、果物として扱い、コップ1杯(250ミリリットル)を100グラムとしてカウントすることができます。

ただし、ジュースに加工する際にビタミン類が失われますから、できるだけ生の果物、それも新鮮なものを選んで摂ることをおすすめします。

さらに言えば、りんごは赤い皮のすぐ下に「りんごポリフェノール」が多く含まれていますから、無農薬のりんごを選ぶか、国産のりんごをよく洗って*皮ごと食べるのが理想です。

あるいは皮ごとミキサーにかけてジュースにするのもいいでしょう。

また、りんごポリフェノールは、100℃以上で5分間加熱すると6~9倍になるので、焼きりんごにするのもおススメです。

*りんごの洗い方;国産りんごは外国産と違い農薬の心配はまずないが、皮の表面がテカテカ光っていて気になることがある。テカテカの原因は、りんご自らが乾燥から身を守ろうとある種の成分(不飽和脂肪酸)を出しているためで、「油あがり」と呼ばれる現象と聞く。
りんごがよく熟れていて食べごろのサインでもあるが、気になるときは、食用の重曹で軽く擦って洗うと気にならなくなる。重曹で洗った後は流水でよく洗い流すのがコツ。

日本人女性の平均果物摂取量は100グラムにも満たない

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」で明らかにされている日本人女性の果物摂取量は、2017(平成29)年の調査では、20~29歳の平均で1日81.6グラム30~39歳の平均で1日64.8グラムと、いずれも目標とする300グラムにはほど遠いものです。

これは、男性も、また別の年齢層も大差ないようですから、性別、年齢に関係なく、また妊娠の有無にも関係なく、今まで以上に意識して果物類を摂ることを心がけたいものです。

それと、あなたの身近に近い将来妊娠を予定している方、あるいは今現在妊娠中の方がいましたら、上記の研究成果を是非お伝えください。