鶏肉の食中毒予防にしっかり加熱を!!

鶏肉食と健康
スポンサーリンク

加熱不十分な鶏肉でカンピロバクター食中毒に

「鶏肉」を、筋肉を育てる食材の定番としている方は多いでしょう。

なかでも鶏のむね肉は、高たんぱく、低カロリー、低脂質で、ダイエットやメタボ予防、あるいは高齢者ならフレイル予防のトレーニングに励んでいる方にとっては欠かせない食材ではないでしょうか。

鶏肉のレシピは実にバラエティーに富んでいます。

焼き鳥や照り焼き、バーベキューなどが人気ですが、軽く湯通しした鶏のささ身や表面を火であぶった鶏のむね肉のにぎり寿司なども、特にパーティー会場などでよく目にするようになっています。

ただし鶏肉は、「カンピロバクター」と呼ばれる食中毒を起こす細菌に汚染されている可能性があり、加熱が十分でない鶏肉を食べると、カンピロバクター食中毒を起こすリスクがあるのです。

厚生労働省によると、カンピロバクターによる食中毒は細菌による食中毒のなかで発生件数が最も多く、毎年300件余り発生し、患者数は2,000人強にのぼっています。

この食中毒は、重篤化して死亡するようなことはほとんどないようですが、筋肉を動かす運動神経が侵されると、後遺症のために一生車椅子での生活を余儀なくされるといったケースもあるようです。

そこで今回は、鶏肉によるカンピロバクター食中毒について、予防法を中心に書いてみたいと思います。

スポンサーリンク

加工直後の鶏肉の60%以上にカンピロバクター汚染が

5年ほど前のゴールデンウイークに、東京都や福岡市で開催された「肉フェス」と呼ばれるイベントで、被害者が6,000人を超える集団食中毒が発生したことがあります。

原因は、カンピロバクターに汚染されていた鶏肉を、軽く湯通ししたり、表面を軽くあぶったりしただけで提供され、それを食べたことでした。

ご存知のように、「肉フェス」とは日本や世界のさまざまな肉料理、とりわけ普段なかなか食べに行けない有名店や行列店の肉料理を販売するという人気のイベントで、毎年のように各地で開催されています。

先の食中毒の原因となったカンピロバクターは、鶏や牛、豚といった家畜、あるいは犬や猫などのペットや野鳥、野生動物の腸管内に生息する細菌です。

特に鶏の腸管内にいる確率が高く、加工直後の鶏肉の60%以上がカンピロバクターに汚染されていることが調査によって確認されています*¹。

ただ、カンピロバクターは空気を嫌う嫌気性(けんきせい)の細菌で、「ヒトや動物の腸管内でしか生息しない」「乾燥に弱い」「通常の加熱調理で死滅する」などの特性があります。

そのため、加工処理を終えてから時間が経った鶏肉のほうが、処理したばかりの新鮮な鶏肉よりカンピロバクターの汚染度が低くなると考えていいようです。

また、カンピロバクターの汚染率が40%だった市販の鶏のひき肉が、冷凍処理によって1日目は汚染度が24%に、さらに7日目には12%に減少していたことが、厚生科学研究の調査で確認されています。

冷凍しても汚染度はゼロにはなりませんが、汚染度が減少する、つまり細菌の数が少なくなれば、カンピロバクターに感染して食中毒を発症するリスクはかなり低くなります。

スポンサーリンク

鶏肉を食べて1週間前後に下痢や腹痛、発熱が現れたら

カンピロバクターに感染すると、数百個程度の比較的少ない菌数でも食後1~7日の潜伏期間の後に腸炎を発症するのが特徴です。

主な症状は、下痢、腹痛、発熱、吐き気、嘔吐(おうと)頭痛、体のだるさなどです。

いずれの症状もこの食中毒に特有のものではないうえに、発症しても多くのケースは1週間もすれば症状が治まるため、風邪と間違えることも珍しくないと聞きます。

そのため、自己判断で市販の解熱剤や下痢止めを服用する方もいるようです。

しかし、市販薬の服用により症状が悪化する場合もあり、腹痛や下痢がひどいときは、必ず医療機関を受診して原因を明らかにし、適切な治療を受けることをおススメします。

腸炎で死亡する例はほとんどないようですが、幼児や高齢者、および基礎疾患があって免疫力が低下している方は、重症化するリスクがあるので注意が必要です。

また、カンピロバクターに感染し、症状が治まってから数週間後に、手足の筋力の低下や麻痺、顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギャランバレー症候群」を発症する場合があることが指摘されています。

これらの症状は治療をしなくても徐々に改善し、半年もたてば発症した方の約7割は回復しますが、歩行障害が残り一生車椅子での生活を余儀なくされる方もいると聞きます。

未加熱・加熱不十分な鶏肉料理を避ける

カンピロバクターによる食中毒の予防策として、内閣府食品安全委員会は以下の励行を促しています*²。

  1. 食肉は、肉の中心部の色が白く変わるまで十分に加熱する
    (中心部を75度以上で1分間以上)
  2. 未加熱または加熱が不十分な食肉、特に鶏肉料理やレバー(鶏・豚)等の臓器を避ける
  3. 食肉と他の食材(野菜や果物類)と調理器具・容器類などを分けて処理や保存を行う
  4. 食肉を取り扱った後は手をよく洗ってから他の食材を扱う
  5. 食肉に触れた調理器具・容器類は使用後に洗浄したあと熱湯を十分かけて殺菌する
  6. 犬や猫のペットに触れた後は手をよく洗ってから調理をする
    (ポンプ式の液体石けんで二度洗いをするといい)
  7. 外食では、「新鮮だから安全」の言葉に惑わされず、よく加熱された鶏肉料理を選ぶ

鶏卵でカンピロバクターに感染するリスクは?

なお、鶏肉が高率でカンピロバクターで汚染されていることから考えると、毎日のように食べている卵(鶏卵)は果たして大丈夫なのかどうかいささか心配になります。

しかし幸いなことに、卵を食べたことが原因と考えられるカンピロバクター食中毒の報告はないようです。

仮に卵の殻にカンピロバクターが付着していても、殻の表面は乾燥していますから、乾燥に弱いカンピロバクターはすぐに死滅してしまうため、感染リスクはないと考えていいようです。

卵でむしろ注意が必要なのは、サルモネラ菌です。

卵かけご飯が原因のサルモネラ菌による食中毒で幼児が死亡した例があるのですが、賞味期限内の卵ならまず安心で、期限を過ぎたものは加熱調理が必要でしょう。

参考資料*¹:厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」

参考資料*²:内閣府食品安全委員会「カンピロバクターによる食中毒にご注意ください」

参考資料:国立感染症研究所「カンピロバクター感染症とは」