睡眠薬代わりの「寝酒」は百害あって一利なし

アルコール体調が悪い?

寝酒で寝つきはよくなるが眠りが浅くなる

「ナイトキャップ」という言葉で語られることもある「寝酒(ねざけ)」については、
「寝つきをよくしてぐっすり眠るために欠かせない」という方が少なくないようです。

確かに、床に就く前にたしなむ少量のアルコールは、眠りに入るまでの時間を短縮させ、寝つきをよくしてくれますから、睡眠薬代わりにもなります。

その一方、寝酒は、深い眠りに入るはずの時間帯での眠りをかえって浅くしてしまうことが確認されています。

つまり、寝酒によって寝つき自体はよくなるものの、アルコールの作用が切れるのに伴い、「中途覚醒(ちゅうとかくせい)」といって夜中に目覚めてしまい、そのままなかなか眠れなくなってしまうのです。

この中途覚醒は、就寝直前のみならず就寝の6時間ほど前に晩酌として飲むアルコールによっても起こり、睡眠後半部分の眠りを浅くする原因となってしまいます。

結局は、朝目覚めた時に「ぐっすり寝れた」と熟睡感が得られるような深い眠りを得るには、少量と言えどもアルコールの力を借りるのはやめたほうがいいという話になります。

今日はそのへんのことを書いてみたいと思います。

スポンサーリンク

寝酒のアルコール作用が脳の休息を妨げる

ご承知のように、私たちの眠りの深さは夜どおし同じではありません。

通常は、眠りに入った20~30分後にノンレムの深い眠りに入り、その後は眠りの浅いレム睡眠とノンレム睡眠を、およそ90分の周期で何回かバランスよく繰り返しながら少しずつ眠り全体が浅くなっていき、やがて朝を迎えて目覚めるといったパターンが健康を維持、増進していくうえで理想的だとされています。

同じ眠っている状態でも、浅い眠りのレム睡眠だけでは体全体として休まっているものの、脳は依然として働いているということです。

夢を見るのは、このレム睡眠の間です。
目ざめた後に夢のことを覚えているのは、眠りが浅く、脳が活動を続けているからだと考えられています。

脳の疲労回復に欠かせないノンレムの深い眠り

脳が完全に休まるのはノンレム睡眠です。

ノンレム睡眠による深い眠りは、体だけでなく脳の疲労回復、つまり休息とリフレッシュに必須で、眠りの質は、ノンレム睡眠により決まると言っていいでしょう。

一口にノンレム睡眠と言っても、眠りの深さにはレベルがあります。

脳も体も休ませることができる最も深い眠りが得られるのは、寝ついてから約3時間の間のノンレム睡眠であることが、睡眠中の脳波検査などによって確認されています。

寝酒によるアルコール作用は、この最も深い眠りを妨げ、脳全体の疲労回復を妨害してしまうというわけです。

さらに言えば、アルコールには利尿作用があって、どうしても尿が出やすくなります。

そのため、夜中に何回もトイレに起きることになってしまい、この中途覚醒がノンレム睡眠の深い眠りを大きく妨げることになるのです。

寝酒が習慣になると「アルコール依存」のリスクも

寝酒にはもう一点、「寝酒がないと眠れない」ことが習慣化し、寝酒を続けているうちに「アルコール依存」に陥るという深刻なリスクがあります。

寝酒、つまりアルコールの睡眠導入効果は長く続けているうちに徐々に弱くなっていきます。
そのため、次第に寝酒の量が増えていく可能性があり、アルコールをやめることができなくなるのです。

また、「アルコール依存」とは別の問題として、寝酒を長年続けていると、やがて肝臓がアルコールの害を受けてアルコール性肝炎が起こり、ひいては肝硬変や肝がんへと進行する可能性も否定できません。

この点については、アルコール健康医学協会が、
「女性は、男性に比べてより少ない飲酒量、より短期間(男性の半分)でアルコールの害を受けやすく、アルコール依存症や肝臓障害、すい臓障害などになりやすい」
として、女性に注意を促しています*¹。

気をつけたい女性のアルコール依存症
コロナ禍で在宅時間が長くなり、孤独感も手伝っての「家飲み」により飲み過ぎていないだろうか。女性は男性よりアルコール依存症に陥りやすい。「自分のお酒の飲み方は大丈夫か」心配ならスクリーニングテストでセルフチェックをし、依存症のリスクがあれば早めに受診を。
スポンサーリンク

寝酒の習慣があれば睡眠・生活習慣の見直しを

すでに寝酒の習慣があるという方は、ご自分の睡眠習慣や生活習慣、睡眠へのこだわりなどを見直して、どうすれば寝酒がなくてもスムーズに眠ることができるのか、改善点を考えてみることをおススメします。

その際の参考資料として、厚生労働省の研究班がまとめた「睡眠障害対処12の指針」を参考にしていただけるよう、以下に紹介しておきます。

  1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
    ▪睡眠時間の長い人、短い人、季節によっても変化する。時間にこだわらない
    ▪歳をとると必要な睡眠時間は短くなる
  2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
    ▪就寝前4時間のカフェイン摂取、就寝前1時間の喫煙は避ける
    ▪軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニングでリラックス
  3. 眠たくなってから床に就く、就寝時間にこだわりすぎない
    ▪眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ、かえって寝つきを悪くする
  4. 同じ時刻に毎日起床
    ▪早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
    ▪日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる
  5. 光の利用でよい睡眠
    ▪目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
    ▪夜は明るすぎない照明を
  6. 規則正しい三度の食事、規則的な運動習慣
    ▪朝食はこころと体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
    ▪運動習慣は熟睡を促進する
  7. 昼寝をするなら、午後3時前の20~30分
    ▪長い昼寝はかえってぼんやりのもと
    ▪夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響
  8. 眠りが浅いときはむしろ積極的に遅寝・早起きに
    ▪寝床で長く過ごし過ぎると熟睡感が減る
  9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のびくつき・むずむず感は要注意
    ▪背景に睡眠の病気の可能性が。専門治療が必要
  10. 十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
    ▪長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
    ▪車の運転に注意
  11. 睡眠薬の代わりの寝酒は不眠のもと
    ▪睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる
  12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
    ▪一定時刻に服用し床に就く
    ▪アルコールとの併用をしない

(引用元:厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費「睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究斑」平成13年度研究報告書より)

参考資料*¹:アルコール健康医学協会「お酒と健康 女性と飲酒」