担当医に聞きにくいときは「看護外来」に相談を
このところ病院に行くと、外来フロアーの一角に、「○○看護外来」とか「○○看護専門外来」、あるいは「○○看護相談外来」とあるのを見かけるようになりました。あなたのかかりつけ、あるいは行きつけの病院ではどうでしょうか。
看護外来には、「専門看護師(せんもんかんごし)」や「認定看護師(にんていかんごし)」と呼ばれる認定資格を持つ看護師がいて、患者さんやご家族から持ち掛けられる療養上のありとあらゆる相談に応じ、お一人おひとりの病状や生活状況に合わせて療養生活をサポートしてくれます。
担当医からご自分の病状について、あるいはこれから受ける検査や治療について、ひと通りの説明を受けたものの、いまいちよく理解できない、あるいは担当医が言っていることは理解できても、自分としては納得できないということが少なからずあるだろうと思います。
だったら遠慮することなく、担当医にさらに詳しい説明を求めればいいわけですが、どのように聞けばいいものかと迷うこともあるでしょう。あるいは、診察室のj前の廊下で順番待ちをしている多くの患者さんのことが気になって、「では、どうぞお大事に」などとという看護師の声に促されるまま診察室から出てしまったが、医師の話にまだ納得していない、などなど……。そんなときにも利用したいのが、看護外来です。
今回は、この看護外来について、そこではどのような相談に対応してもらえるのか、相談に応じてくれる看護師は普通の看護師とどう違うのか、その相談料やケア代に公的医療保険(いわゆる健康保険)は使えるのか、費用はどのくらいかかるのか、といったことをまとめておきたいと思います。
看護外来では療養生活について個別指導が受けられる
看護外来は多分野にわたり用意されていますが、そのなかで最もポピュラーなのは、糖尿病の患者さんやそのご家族が、食事や運動、服薬などの自己管理に関する療養指導、さらにはフットケア*も受けられる「糖尿病看護外来」でしょうか。
また、大腸がんで「ストーマ」と呼ばれる人工肛門を造設した患者さん、いわゆる「オストメイト」が、ストーマに使う装具類やストーマ周辺の皮膚ケアの方法、日常生活の過ごし方などについて個別指導を受けられる「ストーマ看護外来」も、多くの病院でよく見かける看護外来です。
これらに加え最近では、「がん看護専門外来」や「乳がん看護相談外来」「高齢者看護外来」「認知症看護外来」「心不全看護外来」「HOT(在宅酸素療法)外来」、あるいは「母乳育児外来」といった具合に、それぞれの専門分野に特化した多彩な看護外来が設置されています。
いずれの看護外来でも、掲げるそれぞれの分野に関する専門的な知識や技術に精通した「専門看護師」や「認定看護師」が、医師をはじめ医療ソーシャルワーカーなどの医療スタッフと密に連携しながら、長引く健康上の課題を持ち、外来通院をしながら病気とともに生活している方やそのご家族個々に、療養上のきめ細やかなアドバイスやケアを行っています。
病気に関することや治療法などについては担当医から説明を受けることができます。加えて、自分のその時々の病状に見合った日々の過ごし方や留意点などについて、より具体的な話を聞きたいということもあるでしょう。そんなときに役立つのが看護外来なのです。
看護外来で対応するのは看護のスペシャリスト
看護外来で中心になって活動しているのは、専門看護師や認定看護師など、専門的な知識や技術を持ち、より質の高い生活全般のケアや指導、また情報を提供することが認められたスペシャリストです。
専門看護師や認定看護師の資格認定制度や研修制度については、看護職の職能団体である日本看護協会のWebサイト*¹に詳しく紹介されています。関心のある方はそちらをチェックしてみてください。
たとえば、このところニーズが高いと聞く「高齢者看護外来」では、「老人看護専門看護師」あるいは「認知症看護認定看護師」の有資格者が、通院治療中、あるいは在宅で療養生活を続けている高齢の患者さんやそのご家族からの、療養生活上のあらゆる相談に応じています。
相談内容は、療養生活に関すること全般です。たとえば、「医師から高血圧を診断され、血圧を下げる薬の処方を受けた。その際、ジュースで飲まないように言われたが、どんなジュースがダメなのか」といったような相談にも対応してもらえます。
ちなみに、高血圧で処方されることの多い降圧薬のうち、カルシウム拮抗薬はグレープフルーツジュースと相性が悪いことがわかっています。この点についてはこちらにまとめてありますので、覗いてみてください。

数年前から「高齢者看護外来」で活動している老人看護専門看護師の友人によれば、新型コロナウイルスの感染拡大以降、「自分らしい最期を迎えるために事前指示書を作成しておきたいのだが、何から手をつければ……」との相談を受けることが増えているそうです。ちなみに「事前指示書」とは「エンディングノート」とも呼ばれていますが、この点についてはこちらで詳しく解説しています。

希望すればどこの看護外来も受診できる
看護外来では、多くの病院が、1人の患者・家族からの相談に、おおむね30分から1時間と、たっぷり時間をかけて対応できるように、予約制をとっています。そのため患者サイドとしては、廊下などで順番待ちをしている患者を気にすることなく、聞きたいことや確認したいことを納得いくまで相談できるわけです。
最近はインターネットで検索すれば、どこの病院にどのような看護外来があるのか、また、そこではどのような相談を受け付けてもらえるのかといったことまでわかるようになっています。
検索した結果、相談してみたい看護外来が見つかったら、その看護外来のある病院が自分の行きつけの病院であれば、今受診している診療科の担当医または看護師に、看護外来を受診したい旨を伝えると、必要な手続きをとってもらうことができます。その際に、どのようなことを相談したいのか、指導を受けたいのかを伝えると、「そのことでしたら、こちらの看護外来がいいでしょう」とアドバイスをもらえることもあります。
退院後に備えて入院中から看護外来を受診も
入院中に看護外来を受診することもできます。その場合は、退院後の通院しながらの療養生活についてあれこれ指導してくれる病棟看護師から説明があるでしょうし、希望すれば必要な手続きをしてもらえます。
ネット検索をしていて、受診したい看護外来が見つかったが、その外来があるのは受診経験のない病院だったということも当然あるでしょう。その場合は、その病院の「総合相談窓口」を訪ねるか、電話で看護外来を受診したい旨を伝えると、必要な手続きについて説明を受けられるはずです。
看護外来は健康保険で利用できる
そこで気になるコストの話ですが、看護外来の受診料は、「在宅療養指導管理料」という名目で、月1回に限り1700円が公的医療保険、つまり健康保険で認められています。したがって患者さんのの自己負担額は、健康保険負担分が3割負担なら510円、1割負担なら170円が基本で、同じ月なら複数回受診することができます。
ただし、看護外来で受けるケア内容によっては、たとえば乳がん手術後のリンパ浮腫に対するマッサージや母乳育児指導などのように、健康保険が適用されないケースもあります。その場合は実費となりますので、確認のうえ受診することをおススメします。
その病院の診療科などに同月内に受診している場合は、看護外来受診料が無料ということもあります。気軽に利用されてみてはいかがでしょうか。
がんに関することは「がん相談支援センター」も活用を
なお、がんに特化した悩みなどは、全国のがん診療連携拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」を利用されるのもいいと思います。詳しくはこちらを読んでみてください。

参考資料*¹:日本看護協会「資格認定制度」