「いびき」の異変は隣で寝ている人が早期発見を
ある夜のこと、隣で眠っているパートナーのいびきで目が覚めました。長い間生活を共にしているのですが、起こされるほどのいびきは初めてのことで、ちょっと驚きました。
とっさに、数年前に呼吸器内科の医師を取材したときの話を思い出しました。
その日の取材テーマは、当時、運転手さんの居眠り運転によるバス事故が起きたのをきっかけに、社会的に話題になっていた「睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)」でした。
「この病気は今回の事故のように、日中の社会生活に大きく響きますから、気づいたら早めに受診していただくことが大切です。ただ、睡眠中のことですから自分のいびきにはなかなか気づけない。いち早く気づいてあげられるのは、隣りで寝ているパートナーなんですよ」
そんな説明に続き、「いびきをかいていることに気づいたら、体をゆすって起こすのではなく、まずはどのようないびきなののか観察してみることです」と言って、その観察のポイントを話してくれたのでした。
うろ覚えながら、そのときの記憶をたどりつつ、起こされついでに、しばし彼のいびきをじっくり観察してみましたので、その話を紹介してみたいと思います。
なお、一人暮らしの方は「いびきチェックアプリ」を活用されてはいかがでしょうか。何種類もリリースされていますから、検索すれば簡単に見つかると思います。
「いびき」の様子をじっくり観察してみると……
まずチェックしたのは、眠っている姿勢です。そのときの彼は、仰臥位(ぎょうがい)と呼ばれる仰向けの姿勢で眠っていました。
この姿勢では、呼吸する際に息の通り道となる気道のノド、正確には咽頭(いんとう)と呼ばれる部分を圧迫して、狭くしてしまいます。
そのため、息を吸うたびにその狭くなった部分が空気で振動して、いびきをかきやすくなるわけです。
次に、呼吸している様子を見てみました。
彼は、深く息を吸っては吐くというリズミカルな呼吸をしていて、リズムには問題ないようでした。
ただ、息を吸うときに、ノドの奥の方から振動音が聞こえてきます。この振動音が、ときに大きな音、つまりいびきになっているようでした。
無呼吸があれば「睡眠時無呼吸症候群」が疑われる
この場合、呼吸のリズムが乱れて息が浅くなったり、数秒間止まるような「無呼吸」が繰り返し見られるようなら、「睡眠時無呼吸症候群という病気が疑われます」とのこと。
「この無呼吸状態が、仮に数秒間だけ続いても、その間は新たな酸素が送り込まれていないわけですから、この状態がさらに続けば、その影響は体のあちこちに及び、さまざまな合併症を引き起こすことになります」
確か医師は、そんなふう説明したうえで、こう話していました。
「大事(おおごと)になる前に、無呼吸があることに気づいたら、早めに呼吸器内科なり耳鼻咽喉科なりを受診するように促していただきたい」
さらに、「受診する際には、睡眠中の様子を知っているパートナーの方に同席していただけると、より具体的な話をうかがえますから、私どもとしては助かります」とも――。
幸い彼の呼吸にはそういったリズムの乱れも無呼吸も見られませんでしたので、ひとまずホッとしました。
なお、睡眠時無呼吸症候群かどうかを判断するためのスクリーニング検査については、こちらで詳しく解説していますので、読んでみてください。

無呼吸のない「いびき」なら姿勢を変えてみる
ホッとしたところで、「観察し終えたら、ちょっとやってみるといいですよ」と言っていた医師の話を思い出し、いびきをかきながら眠っている彼の体を軽くゆすってみました。
これに彼は、ちょっとうるさそうにして、私に背を向けるように横向きの姿勢になりました。
すると、なんといびきが止まり、スースーと気持ちよさそうな寝息が聞こえてきたのです。
実は、この数日前までの彼は、横向き寝やうつぶせ寝に使い勝手がいいからと知人にすすめられたというかなり大きめのサイズの抱き枕を使っていました。
「腹臥位療法(ふくがいりょうほう)」と呼ばれるように、うつぶせ寝には、肩こりや腰痛の軽減、胃腸の働きをスムーズにするなどメリットが多いと聞き、じゃあやってみようかと、この抱き枕に変えたというわけです。

うつぶせ寝から仰向けの姿勢に戻したら「いびき」が
抱き枕を使って睡眠中の姿勢を変えることはできました。ところが、「寝返りを打ちにくい」という問題が出てきたのでした。
睡眠時間の長さにもよりますが、人は一晩の睡眠中に右を向いたり左を向いたりと、20回前後の寝返りを打っていると言われています。
これは、全身の血液循環をよくしたり、体温を調節したりして、日中の活動により消耗した脳と体をメンテナンスしてもとの状態に回復させ、翌日の活動に備えるために必要な動きなのです。
大きな抱き枕は、この自然な寝返りを邪魔してしまい、朝起きたときに、特に腕から臀部にかけて疲れが残りやすい状態だったのです。
そこで、寝返りを打ちやすくしたいからと、もともと使っていた普通の枕に戻して仰向けの姿勢で眠るようになったばかりのときに、いびきという問題が発生したわけです。
横向き寝用の枕に変えたら「いびき」が止まった
このような経緯を思い出しながら、あれこれ考えた結果、彼のいびきには睡眠中の姿勢を左右する「枕」が大きく影響していると判断しました。
さっそく翌朝、彼が目覚めるのを待って、まずは夜中にいびきをかいていたことを伝えました。
そのうえで、いびきだけで無呼吸はないようだから、受診する前に、睡眠中に気道を狭くしない横向き寝にいいという枕に変えて様子をみてはどうかと提案してみました。
手元にあるビックサイズの抱き枕は、横向き寝にもうつぶせ寝にもいいのですが、寝返りの問題が残ります。
そこで、横向き寝にいいと評判の横向き寝 ムーンムーン YOKONE3 まくら を新たに購入しようということに話がまとまりました。
すぐにネット注文したところ、3日ほどで届いた新しい枕を使い始めて、そろそろ1カ月になります。
この間、おかげで彼は「楽に横向きの姿勢を保ち、寝返りもスムーズに楽に打てるようになった」と、寝心地も至っていいようです。
私も彼のいびきに起こされることがなくなり、彼も私もしっかり熟睡できています。
耳に装着して寝ると「いびき」を軽減してくれるデバイスも
日本人で睡眠中にいびきをかく人は、少なく見積もっても4人に1人とのこと。中高年の男性に限ると、60%という高率になると推測されています。
実際、中高年の気の置けない男性の多い飲み会の席で、我が家のいびき体験を話題にしたところ、「実は自分も……」とか、「我が家では僕のいびきが原因でけんかになり、以来、寝室は別ですよ」なんて話が出て、いっとき盛り上がりました。
そのとき語られた体験談のなかに、いびき対策として参考になりそうな話がありましたので紹介しておきます。
それは、耳に取り付けて眠ると、いびきをストップ、あるいは軽減してくれるイヤホンのようなスノアサークルプラス というデバイスを使っているという話です。
そのメカニズムは、睡眠中に起こるいびきを独自のセンサーが音として、またノドの部分の振動を骨伝導により認識すると、刺激を与えていびきをストップさせるというものです。
スマートフォン用のアプリを併用すれば、睡眠中にいびきをストップさせた回数をチェックすることもできます。
また、いびきのモニタリングだけでなく、睡眠中の眠りの質、つまり「深いノンレム睡眠」「浅いレム睡眠」「ほぼ起きている状態」などの睡眠サイクルも自分で確認することができるスグレモノだと言います。
耳につけて寝ることに最初は抵抗があったようですが、慣れてくると気にならなくなったとのこと。
使い始めて1年余り、「最近は、隣りで寝ている妻にうるさがられることがなくなった」と話してくれました。
無呼吸のないいびきでも長引くようなら受診を
なお、いびき自体は病気としては認められていませんが、無呼吸があったり、無呼吸のないいびきでもいつまでも長引くようなら、一度呼吸器内科、あるいは耳鼻咽喉科を受診することをオススメします。
最近は、「いびき外来」とか「無呼吸外来」など、いびきや睡眠時無呼吸症候群の専門外来もありますから、ネットで検索してみてはいかがでしょうか*¹。
あるいは在宅療養中の方で、簡単には受診ではないという方には、「睡眠時無呼吸症検査キット*」と呼ばれる自宅で睡眠中の呼吸の状態を手軽に検査できるキットがあるようですから、かかりつけ医に相談してみることをおススメします。
睡眠を妨げるいびき対策にホワイトノイズを
なお、パートナーのいびきで眠れないというときは、ホワイトノイズが騒音をかき消してくれるという話をこちらで書いています。よかったら読んでみてください。

参考資料*¹:無呼吸なおそう.com「全国の医療機関一覧」