不安で気持ちが落ち着かないときは腹式呼吸を

深呼吸運動と健康

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ゆっくり腹式呼吸をくりかえして不安や緊張を和らげる

新型コロナウイルスの感染拡大は、ひとまず収束への目途がついたのでしょうか。コロナの感染症法の位置づけは、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行しましたが、一方でメディアは、新規感染者の水準は依然として高く、これでコロナの感染拡大が終わるわけではないとの専門家の話を伝えてもいます。

不安要素を繰り返し聞かされていると、不安が募り気持ちが落ち着かないストレス状況に陥り、無意識のうちに呼吸が浅く速くなりがちで、心臓がドキドキしてくることもあります。

気持ちを落ち着かせて緊張を和らげるには、たとえば坐禅を組んでいるときのように、ゆっくり大きく腹式呼吸をくりかえして、体全体に新鮮な空気を送り込んであげるといいでしょう。ということで今回は、この腹式呼吸について書いてみたいと思います。

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胸式呼吸と腹式呼吸の違いは?

不安や緊張が強いストレス状況にあるときの浅く速い呼吸は、肺や心臓が収まっている「胸腔(きょうくう)」の上の部分だけを使った「胸式呼吸」になっています。この胸式呼吸では、胸腔の下の部分、具体的には胸腔と腹腔*の境い目にある横隔膜(おうかくまく)と呼ばれる薄い板のような筋肉がほとんど動きません。

*腹腔(ふくくう)には、肝臓、すい臓、胃、小腸、大腸、ひ臓、胆のうなどが収まっている。

横隔膜は、息を吸ったり吐いたりして肺を広げたり縮めたりすることにより、肺の中でガス交換、つまり酸素と二酸化炭素の交換をしていくうえで、最も重要な働きをしています。

そのため、この横隔膜が満足に動かない浅い胸式呼吸だけを続けていると、肺におけるガス交換が十分に行われず、慢性的な酸素不足に陥ってしまうのです。この酸素不足を解消してくれるのが、横隔膜をゆっくり上下に動かす「腹式呼吸」です。

腹式呼吸の要となる横隔膜の動きで免疫力も高まる

大きくゆっくり腹式呼吸をして横隔膜を思いっきり押し下げると、胸腔が広がります。すると、浅い胸式呼吸ではあまり使われていない肺の下の方まで新鮮な空気がたっぷり入り込み、肺におけるガス交換も完璧に行われますから、体のすみずみまで酸素が十分に行き渡り、全身の血行がよくなります。

血行、つまり血のめぐりがよくなれば、不安やストレスから凝り固まりがちだった全身の筋肉の緊張がほぐれ、体が軽くなってくるにつれ、気持ちも落ち着いてきます。また、横隔膜が動けば腹腔内の胃や肝臓といった内臓も刺激されて、活発に機能するようになり、内臓の働きが活発になれば新陳代謝が活性化して、コロナなどの感染症と闘う力も高まることが期待できるというわけです。

なにより横隔膜がしっかり動いて呼吸が深くなれば、副交感神経が優位になり、免疫の最前線で外敵から身を守る防御の要、NK細胞つまりナチュラルキラー細胞が本来の機能を発揮できるようになり、免疫力が高まることにもなるのです。

個人差はあるものの、私たちは平均して毎分15回前後の呼吸をしています。1日に換算すると2万~3万回になるでしょうか。この2万回を優に超える呼吸の、全部とは言わないまでも少しでも多くの回数を胸式から腹式の呼吸に替えることができれば、体の機能はもちろんこころの働きもより活発になり、もやもやした気持ちから解放されるはずです。

なお、NK細胞と横隔膜の動きの関係については、こちらの記事で詳しく書いています。是非読んでみてください。

免疫力アップなど「笑いの効用」を高める笑い方
ウイルスなどの外敵と闘い我が身を守る「免疫力」が「笑い」により強化されることはよく知られている。が、ただ笑っていればいいという話ではない。外敵にとって殺し屋として働くナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働きを助けるには、横隔膜が動く笑いがいいという話を。
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坐禅の呼吸法は理想的な腹式呼吸

腹式呼吸のイメージは、赤ちゃんが気持ちよさそうに熟睡しているときの、あの大きくゆったりとお腹を上下させながら繰り返される、リズム感のある深い呼吸です。

身近な方法としては、近年、日本国内以上にフランスやイギリスなどの西欧諸国において、ストレスの多い中間管理職クラスのビジネスマンを中心に静かなブームになっているという「坐禅」の呼吸法が、まさにここに言う腹式の深呼吸です。

実は私も、もうかなり前のことになりますが、東京・青山の西麻布にある永平寺別院の長谷寺(ちょうこくじ)で毎週月曜日に開かれる「坐禅会」に、ほんの一時期でしたが、通ったことがあります。

坐禅堂の静寂そのものの中に静かに坐り、僧侶の方に言われるまま、何も考えずに軽く目を閉じ、ゆっくり大きく、リズム感をもって腹式呼吸を繰り返していると、血行がよくなるからでしょうか、自然に体が温かくなってくるのを感じます。同時に、呼吸が整ってくるにつれ、こころも整えられるからでしょう、不思議と気持ちが落ち着いてくるのを実感できたことを覚えています。

コツを覚えてからは自宅で、毎日ではありませんが、気持ちが落ち着かないときや寝つけない夜などに、30~40分間ほどお香を焚いて坐禅を組むことを習慣にしています。

なお、坐禅を体験できる寺院は、曹洞宗公式ポータルサイト「曹洞禅ナビ」*¹で検索することができます。

腹式呼吸は鼻から吸って口から吐く

腹式呼吸は、必ずしも坐禅を組む必要はありません。換気のいい静かな部屋で、椅子に腰かけても、立ったままでもできます。背筋をピンと伸ばした姿勢で軽く目を閉じ、まずは鼻からゆっくり大きく息を吸い込みます。このとき口からではなく鼻から息を吸い込むのがポイントです。

というのは、鼻から吸い込む空気には、「ゴミを取り除く」「温度調節をする」「湿度調節をする」の3つの効用があるからだと言われています。また、息を吸い込むときに、丹田(たんでん)と呼ばれるお臍の下の部分に空気を溜めていくイメージでお腹を膨らませるのがコツです。

腹式呼吸で息を吐き出すときは口をすぼめる

鼻から空気を目一杯吸い込んだら、お腹をへこましながら口からゆっくり息を吐き出します。

このとき、軽く口をすぼめ、目の前にあるロウソクの明かりを静かに吹き消すようなイメージで、肺の中にある空気をゆっくり出し切るのがポイントです。

腹式呼吸は吸うのが1、吐き出すのが2のバランスで

呼吸は、鼻から吸うのが1、口から吐きだすのが2のバランスでゆっくり繰り返します。吸うときに1~5までカウントしたら、吐くときは1~10までカウントする、といった要領です。

息を吐き出すときに口をすぼめると、これによって生じる口腔内の空気抵抗圧が気道内の圧を高め、狭くなっている気道を拡げる効果があるようです。これにより、肺の中に残りがちだった二酸化炭素をしっかり吐き出し、そのうえでフレッシュな酸素をたっぷり送り込んで、身体全体に酸素が行きわたる効果が期待できるというわけです。

最初は、深く大きい腹式呼吸をゆっくり5回ほど繰り返します。これを1日に3~4回行うことからスタートし、慣れてきたら徐々にその回数を増やしていくといいでしょう。

腹式呼吸が上手くできないときは

どうもスムーズに腹式呼吸ができない、という方もいるでしょう。その場合は、腹式呼吸のエクササイズ用に開発された腹式呼吸エクサ ロングピロピロを活用するのもいいかもしれません。

腹式呼吸のトレーニング用マウスピースも各種市販されています。ただし、なかには肺にかかる負担があなたの肺機能レベルには大きすぎるというリスクを伴うものもあります。

特に心臓や肺などの呼吸器機能にトラブルを抱えている方は、マウスピースタイプのトレーニング器具を購入する際は、事前にかかりつけ医に相談することをお勧めします。

参考資料*¹:曹洞宗公式ポータルサイト 坐禅のできるお寺検索