整骨・鍼灸・マッサージに健康保険が使えるとき

マッサージ保険の話
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整骨院等で受ける施術費用が健康保険の対象に

腰や肩、膝などの長引く痛みに悩まされ、街中にある「整骨院」や「接骨院」、「鍼灸(しんきゅう)院」、あるいは「マッサージ治療院」などで施術(せじゅつ)と呼ばれる治療を受けている方は少なくないでしょう。

毎週のように定期的に通って施術を受けていると、かかる費用も当然かさんできますから、痛みがまだ完全に治まっていないのに、施術を中断せざるを得ないということも起こり得るのではないでしょうか。

しかし、幸いなことに、国家資格の有資格者が開業している施術所であれば、症状と受ける施術によっては、公的医療保険、つまり健康保険を使える場合があります。健康保険が使えるとなれば、支払う施術費用(この場合は、治療費ではなく「療養費」となります)を健康保険の自己負担分(3割または2割)のみに抑えることができます。

ということで今回は、整骨院やマッサージ治療院をよく利用している、ないしは利用を検討している方に、是非知っていただきたい上手な利用法と、利用する際の注意点について書いてみたいと思います。

なお、最近は街中に「整体サロン」や「整体院」が増えていますが、こちらは国家資格をもっていない施術者でも開業できる施術所です。したがって、そこで行われている施術の多くは民間療法で、健康保険はいっさい使えず、全額自己負担になることをご承知おきください。

それと、長引く腰痛で整骨院などで施術を受けている方のなかには、原因となっている病気を明らかにしてきちんと治療すれば痛みが軽減、あるいは治るものもあります。こちらをチェックして、当てはまるようなら、まずは整形外科を受診することをおススメします。
つらい腰痛、すぐに受診したほうがいい痛みは?

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整骨院などの施術所と整形外科とはどう違うのか

ところで、整骨院やマッサージ治療院のような施術所と整形外科との違いはご承知でしょうか。整骨院やマッサージ治療院等の施術所を整形外科の一分野と誤解している方も少なからずいるようですので、まずはそのあたりのことをしっかり確認しておきたいと思います。

病院やクリニック等の医療機関にある「整形外科」を掲示する診療科では、国家資格をもつ医師(整形外科医)が、体の動きや運動にかかわる骨や関節、筋肉、手足の神経(末梢神経)、脊椎(せきつい)や脊髄(せきずい)の診療を行っています。

具体的には、問診に始まり、エックス線(レントゲン)検査やMRI等の精密検査の結果をもとに診断を下し、その際の症状や病態に応じて痛み止め等の薬物治療や手術、リハビリテーションなどで治療を行っています。

一方、整骨院等の法律上「施術所」と呼ばれる場所で施術を行うのは医師ではなく、「柔道整復師(じょうどうせいふくし)」「はり師」「きゅう師」、および「あん摩マッサージ指圧師」のいずれかです。

彼ら施術者はそれぞれ、国家試験に合格した証として、必ず免許を保有しています。その免許をもとに柔道整復、はり、きゅう、あん摩、マッサージ、あるいは指圧といった施術を行い、外傷性の打撲や捻挫(ねんざ)、神経痛、腰痛症、五十肩といった体の不調を軽減してくれます。これらの施術を無免許で行った場合には、必ず法律に基づき処罰の対象となります。

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整骨院などの施術所を利用する際に確認したいこと

整骨院や接骨院などの施術所を利用する際には、まずは当の施術者が有資格者であるかどうかを確認しておくことをおススメします。その確認方法としては、施術所に掲げられている看板や広告、あるいは施術所内に以下の掲示があるかどうかをチェックしてみるといいでしょう。

  • 看板等に厚生労働大臣免許の所有者であることが明示されている
  • 保健所に届け出た施術所であることが掲示されている
  • 施術者の免許証そのもの、あるいは免許証の内容等を記載した書面が掲示されている
  • 施術者が「厚生労働大臣免許保有証」*を所持している
*厚生労働大臣免許保有証とは、施術者が柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格を保有していることを示す携帯カード。厚生労働省が「東洋療法研究試験財団」に委託して発行しているもので、免許証に代わるものではない。あくまでも希望する有資格者に発行されているもので(有効期限は発行日から5年間)、免許保有者が必ず携帯しなければならないものではない。

柔道整復師による施術に健康保険を使えるとき

整骨院や接骨院で、スポーツ中などに受傷した骨折や脱臼、打撲および捻挫(いわゆる肉離れを含む)、あるいは交通事故後のむち打ち症などで柔道整復師の施術を受けるときは、健康保険の対象となります。

いずれの場合も健康保険を使うには、あらかじめ外科あるいは整形外科を受診して医師の診察を受け、柔道整復師による施術、たとえば患部を温めたり(温罨法)冷やしたり(冷罨法)、マッサージなどを受けることに医師の同意が得られ、その医師が発行した同意書または診断書があることが条件となります。

ただし、骨折と脱臼については、緊急時であれば、医師による事前の同意がなくても応急処置として施術を受けることができます。ただ、その施術費に健康保険を使いたいときは、応急処置を受た後に改めて医師の診察を受け、同意書ないし診断書を次回施術の際に提出することになります。

五十肩のような単なる肩こりや腰痛、変形性関節症などの慢性疾患で柔道整復師の施術を受ける場合は、健康保険の適用外ですから、全額自己負担となります。また、外科や整形外科で治療を受けながら、重複して柔道整復師からも施術を受ける場合も、その施術に健康保険は使えませんからくれぐれもご注意を――。

あん摩マッサージ指圧師による施術に健康保険を使えるとき

脳卒中の後遺症などで関節の拘縮(こうしゅく;関節が固まってしまう状態)や筋肉に麻痺があるといった場合に、関節の動きを取り戻すためのリハビリテーションの一環として、あん摩マッサージ指圧師による施術(マッサージやあん摩*、指圧)を受ける場合は漏れなく、健康保険の対象となります。

この場合も、固まった関節の運動にマッサージ等が必要であると医師が判断し、施術を受けることへの同意書あるいは診断書が発行されていることが条件となります。この診断書や同意書の有効期間は発行日から3か月間です。引き続き施術を受ける際は改めて医師の診察を受け、同意書または診断書の発行を受ける必要があります。

単なる疲労回復や「ストレスがたまったから」などの理由で、あるいは病気の予防を目的にマッサージや指圧を受ける場合は、健康保険の対象外となり、全額自己負担で対処することになります。

*あん摩とは……、私たちは、肩がこると肩を「さする」「たたく」、痛みがあると痛む部位を「押さえる」「さする」、頭痛があれば頭部に「手を当てる」といった行為を無意識のうちに行っているが、いずれも「あん摩術」である。

はり・きゅう施術師による施術に健康保険を使えるとき

腰痛症や五十肩など、慢性的な痛みを主症状とする疾患で、以下に該当する場合は、はり師やきゅう師による施術にかかる費用に健康保険が使えることになっています。

  • 医師による診断、治療を受けたものの効果が現れなかった
  • 慢性的な痛みに対する効果的な治療手段が見当たらないと医師が判断した場合
  • はり師やきゅう師による施術を受けることに医師が同意している場合
    (診断書や同意書の有効期間は発行日から3か月間)

具体的な疾患名としては、①神経痛、②リウマチ、③頚腕症候群(けいわんしょうこうぐん;首から肩、腕の疲れや痛み)、④五十肩、⑤腰痛症、⑥頚椎捻挫後遺症(けいついねんざこういしょう;いわゆる「むち打ち症」)の6疾患があげられています。

上記疾患で受ける鍼灸治療に健康保険を使いたいときは、あらかじめ医師の診察を受け、診断書あるいははり師やきゅう師による施術を受けることへの同意書(診断書)を発行してもらう必要があります。

整骨院などの施術所で健康保険を使ったときの支払いは?

整骨院や接骨院、鍼灸院、マッサージ治療院などの施術所で健康保険を使った場合、施術所は保険医療機関ではないため、施術費用は医療費ではなく「療養費」扱いとなります。

療養費については、本来、患者が費用の全額をいったん支払い、その後自ら健康保険の保険者に請求して支払いを受けるのが原則となっています。しかし、健康保険の対象となる施術療養費については、例外的な取扱いとして、患者が自己負担分を施術者側に支払い、施術者側が患者に代わって残りの費用を健康保険の保険者に請求する方法が認められています。

これにより、多くの施術院の窓口では、病院などの保険医療機関を受診したときと同様、自己負担分のみ(3割または2割)を支払えば済むようになっています。

このとき、施術者側が保険者に保険請求を行ううえで必要な書類(療養費の支給請求書)に、施術を受けたことを示すあなたのサインが求められます。その際は、施術を受けた日付や施術内容、施術費の金額を確認し、問題がなければサイン、捺印するようにしてください。