ニキビに気づいたらすぐに皮膚科を受診する
20歳になったばかりの友人の娘さんが、「大人になったというのにニキビができた」と悩んでいます。
そう言われ改めて彼女の顔を見ると、確かにおでこのあたりに3個ほど、赤っぽいものがあります。
母親からは、「あなたはアブラっぽいものばかり食べるから」とか、「チョコレートやケーキのような甘いものばかり食べすぎでしょう」と毎日のように言われると、しょげ返っています。
「友だちと比べてみても、スイーツをそんなに食べているわけでもないし、アブラっぽいものも、食べ過ぎと言われるほどには食べていない。むしろ、太らないように控えているつもり……」と、本人は少々おかんむりです。
ニキビは皮脂(ひし)と呼ばれる皮膚のアブラの分泌が多いことが原因と言われています。
そのため、「アブラっぽいものを食べすぎるから」となるのでしょう。
そのアブラっぽさを取り除くにはスキンケアや化粧品での対応がいいとされるのですが……。
「それはちょっと違います。最近は治療法が進んでいますから、自分で治そうとしないで早い段階から受診していただきたい」とは、知り合いの皮膚科医――。
彼女の受診に付き添ってさらに詳しい話を伺いましたので、今日はその辺のことを書いてみたいと思います。
ニキビと特定の食べ物に因果関係は見つかっていない
ニキビはれっきとした皮膚の病気で、医学的には「尋常性挫瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれています。
皮脂や古い角質が毛穴にたまって炎症を起こすことによる皮膚の慢性炎症性疾患で、食べ物が直接の原因になることはまずないと考えられています。
ニキビに関する巷の情報のなかには、「ピーナッツやチョコレート」をニキビの大敵としてあげ、「食べてはダメ」などと説明しているものもあります。
しかし、日本皮膚科学会が策定したニキビ治療のガイドライン「尋常性挫瘡治療ガイドライン 2017」*¹にある食事に関する項目を見ると、「特定の食べ物を一律に制限することは推奨しない」と記載されています。
スイーツの摂りすぎを原因とする情報もあるのですが、ニキビのある方に砂糖の摂取量が特に多いことを実証するデータもなく、砂糖の摂取量とニキビの発症に確たる関係はないこともわかっています。
先のガイドラインには、「特定の食べ物を一律に制限することは推奨しない」に続き、「極端な偏食は避け、バランスのよい食事を摂取することを推奨する」とあります。
バランスのよい食事の摂り方については、食事バランスガイドを活用する方法もありますが、より簡単な方法をこちらで紹介しています。是非参考にしてください。
ニキビ治療は肌のザラザラに気づいた時から始める
そこで、ニキビに対する最近の治療法ですが、ニキビのはじまりである「コメド」と呼ばれる症状のうちから病院やクリニックなどで治療できるようになっているそうです。
「コメド」と聞いてピンとくる方はまだ少数派だと思います。
コメドとはニキビの最初の症状で、医学的には「面皰(めんぽう)」というそうです。
毛穴に皮脂や古い角質がたまった状態をいい、毛穴の先が閉じている場合(白ニキビ)と毛穴の先が開いて黒っぽく見える場合(黒ニキビ)とがあります。
いずれの場合も、洗顔したり化粧水をつけたりする際に、触るとザラザラしているので、「なんだろう」とか、「あら、いやだ、ニキビかしら」などと気づくことが多いようです。
肌のザラザラを見逃さない、見つけたら放置しない
この気づいた段階で皮膚科を受診できればいいのですが、コメド(ザラザラ)をそのままにしていると、アクネ菌と呼ばれるどんな毛穴にもいる常在菌(じょうざいきん)が繁殖して炎症を起こすことがあります。
炎症を起こすと赤いブツブツ(赤ニキビ)となり、さらに炎症が進むと「膿み(うみ)」がたまってニキビが大きくなったり、皮膚の下に膿みの袋ができたりします。
赤ニキビは目立ちますから、気にして無理やりつぶしたりしがちです。
しかしこれをやってしまうと、炎症が治った後に、皮膚が凹凸になった跡(あと、「痕」とも書く)が残ってしまいます。
このニキビ跡はなかなか消えませんから、「お子さん、特に娘さんのコメドに気づいたり、相談を受けたら、コメドが炎症を起こして赤みを帯びてこないうちに皮膚科、それも皮膚科専門医のいる医療機関を受診するよう促していただきたい」と皮膚科医(彼も皮膚科専門医です)は話します。
なお、最寄りの皮膚科専門医は、日本皮膚科学会のWebサイトにある「皮膚科専門医MAP」*²で検索することができます。
ニキビの治療はコメドに対する治療から
ニキビの初期症状であるコメドに対する標準的な治療(健康保険が効く)では、毛穴のつまりを改善してコメドの進行を妨ぎ、ニキビをできにくくする効果を期待できる「アバダレン」と呼ばれる塗り薬が使われるそうです。
すでにコメドが進行して炎症を起こし、赤ニキビの状態になったり膿みがたまっているようなら、アバダレンに抗生物質の飲み薬、あるいは保湿剤を組み合わせて使うこともあるようです。
この辺の話は、受診した医師から具体的な説明があると思いますから、詳細はここでは省きます。
健康保険の効かないニキビ治療を受けたいときは
なお、ニキビの治療法としては、「ケミカルピーリング」や「光線療法」「レーザー治療」「漢方薬」など、現時点で健康保険の効かない治療法も行われていて、ネット上でもよく紹介されています。
これらの治療法を友だちからススメられ自分も受けてみたいと思ったら、まずは皮膚科専門医の診察を受け、あなたのニキビの状態から判断して、そうした治療法を受けるのがふさわしいかどうか相談してみることをおススメします。
そのうえで、やはりその治療を受けたいとなったら、その治療を行っている医師から直接、治療によって期待できる効果と予測される副作用、治療に要する時間と費用などについて十分な説明を聞いたうえで、納得できたら受けるようにしたいものです。
参考資料*¹:日本皮膚科学会「尋常性挫瘡治療ガイドライン 2017」
参考資料*²:日本皮膚科学会「皮膚科専門医MAP」