乾物は低カロリーだが栄養的に気になるという方へ
「乾物(かんぶつ)」と聞いて、どんな食材が頭に浮かぶでしょうか?
シニア世代の方なら、おそらく「切り干し大根」や「干し椎茸」、「ひじき」、あるいは「高野豆腐(こうやどうふ)*」、「かつお節」といった昔ながらの保存食でしょう。
一方で、若者世代なら多くの方は、ドライフルーツ(乾燥果物)や各種野菜の乾燥品、あるいは干しブドウや干し柿でしょうか。
ダイエット効果に加え、美肌効果も期待できるからと、このところひときわ人気を集めているようです。
いずれも、カラカラになるまで乾燥させて水分をしっかり抜き取っていますから、細菌等の微生物が繁殖して腐る心配もなく、常温で長期保存できるのが何よりの魅力です。
コロナ禍ゆえの自粛で食料品の買い出しもままならないなかにあって、食生活をより充実したものにしようと、これらの乾物を積極的に利用する家庭が増えていると聞きます。
ただ、乾物と聞くと、あのカラカラに乾ききった形状から低カロリーであることは理解できるものの、つい「栄養的にはどうなのかしら? 」と疑問を持ってしまいます。
そこで、多々ある乾物のなかから、日本人なら誰もが食べたことのある乾物について、まずは、その栄養的価値を探ってみたいと思います。
なお、乾物と干物(ひもの)を混同している方が少なくないようですが、干物は生の魚介類をそのまま、あるいは塩を振って乾燥させたもので、乾物とはイコールではありませんからご注意を。
「乾物」は天日干しによりうまみも栄養もパワーアップ
保存食として親しまれている日本古来の乾物の栄養については、ちょっと意外なことに、日本医師会がWebサイトで、こんなふうに紹介しています*¹。
「乾物には他の保存方法にはない優れた付加価値があります」
ここでいうところの「優れた付加価値」とは、「天日(てんび)に干して乾燥することで、うまみや香り、栄養が増すのです」と説明しています。
ちなみに天日とは、太陽光のことです。
切り干し大根に含まれる食物繊維は生の大根の16倍
たとえば生の大根を日の当たる野外に干して作った「切り干し大根」の場合、生の大根に比べ、たんぱく質は約14倍、食物繊維は約16倍含まれているとのこと。
便通改善に欠かせない食物繊維のこの多さは、とりわけダイエット志向の方には魅力ではないでしょうか。
さらに驚くべことに、とりわけ女性にとって大切な栄養素であるカルシウムは約23倍、貧血予防に欠かせない鉄分に至っては、ほぼ35倍になるとのデータが紹介されています。
このほかにも、美容上何かと気になるビタミンやミネラル類も、天日干しにすることで、含有量がぐんと増すのだそうです。
「干し椎茸」は免疫力強化に不可欠なビタミンDが豊富
また、太陽光のチカラで栄養素が変化する乾物もあります。その代表例が、干し椎茸です。
椎茸には、もともと食物繊維が豊富に含まれていますから、便秘の解消に効果が期待できます。そのうえ低カロリーですから、ダイエット志向の方には最適の食材です。
この椎茸が天日干しにより紫外線を浴びて「干し椎茸」になると、切り干し大根のように食物繊維が増えるうえに、独特の香りとうまみが生まれることはご承知のとおりです。
同時に、椎茸に含まれる「エルゴスチン」と呼ばれる成分がビタミンD に変化して、生の椎茸にもともと含まれているビタミンDの、なんと10倍になることが確認されているとのこと。
ビタミンDといえば、ウイズコロナ生活を余儀なくされている現在、感染予防の基本となる免疫力を維持し、より高めるうえで不可欠な栄養素です。
ビタミンDは女性に多い骨粗鬆症予防にも不可欠
加えてビタミンDは、女性に多い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)*の予防に欠かせないだけででなく、ホルモン分泌の調整においても重要な役割を担っています。

ビタミンDは日本人にはとかく不足しがちな栄養素です。
特に日照時間が極端に短い地域(秋田、青森、北海道。富山など)では、8割以上の方がビタミンD不足の状態にあると言われていますから、毎日の食卓に是非干し椎茸を使った一品を用意したいものです。
ビタミンDに関する詳細はこちらの記事を参照してください。

乾物は手間がかかると敬遠している方へ
ところで、紹介した切り干し大根や干し椎茸のような乾物については、「ダイエット効果は魅力だが、水やお湯などで戻してから、加熱処理をしなくてはいけないから、その手間がちょっと面倒……」と敬遠している方が多いのではないでしょうか。
実は私も、ごく最近まで、そう思い込んでいました。
その手間が面倒で、保存が効くからと購入はしたものの、ストックしたままになっている乾物類がキッチンにたくさん収納してありました。
そんなある日、友人からこんな電話が入りました。「切り干し大根とかヒジキのような乾物って、必ずしも水やぬるま湯で戻さなくてもいいし、加熱しなくても食べられるって知ってた?」
多くの乾物は加熱しなくても食べられる
聞けば、新型コロナウイルスが暴れ出すちょうど1年ほど前、横浜市(神奈川県)で開催された「1日だけの乾物大学」といったイベント*に参加し、ほとんどの乾物類が加熱しなくても食べられることを学んだというのです。
さらに面倒くさがり屋の私にはうれしいことに、「水やぬるま湯で戻さなくても、ジュース類やヨーグルト、缶詰の汁などで戻してもオーケーなのよ」と、教えてくれたのでした。
本法人の公式Webサイト*²によれば、東日本大震災直後、スーパーで生鮮食品は売り切れているのに、乾物類の棚には食材が豊富に残っているのを目の当たりにした女性が、「これを活用しない手はない」と、友人と共に乾物類の活用法の研究に取りかかったとのこと。当サイトには、乾物に関する情報もレシピも満載されている。
乾物は軽く水洗いしてから缶詰の汁気などで戻せばOK
情報をくれた友人のおススメは、イベントでレシピを教わったという「切り干し大根とノンオイルツナ缶のあえもの」で、手順は至って簡単です。
切り干し大根をさっと水洗いしてから、ツナ缶の汁気で戻します。
その際、汁気が切り干し大根によく行き渡って軟らかくなるように、手で軽くもむようにして混ぜ合わせるのがコツです。
そのうえで、好みの味つけをして(友人は市販の減塩麺つゆを4倍程度に薄めたものを使用)、そこにツナ缶の実の部分を混ぜ入れ、15分ほど置けば出来上がり。これをこじゃれた小鉢に盛りつけ、軽くゴマをまぶして食卓へ。
切り干し大根を軟らかくするには、材料をポリ袋に入れてよくもみ、汁気が全体にまんべんなく行き渡るようにするといい、とのことです。
ツナ缶を貝柱の水煮缶、またはアサリの水煮缶に変えるなどして、バリエーションを持たせると、毎日でも飽きない一品となります。
ドライフルーツは食べ過ぎてカロリーオーバーにならないように
なお、ドライフルーツには、天日干しのものもありますが、市販されているのは、フリーズドライ製法で乾燥させたものが多いようです。
いずれにしても乾燥により保存性が高められ、栄養分も濃縮されていますから、生のままの果物より、いつでも手軽に食べられるというメリットがあります。
ただ、生の果物に比べると、乾燥の段階で失われるビタミンやミネラル類があること、また、水分が抜けてカサが小さくなっているため、つい食べ過ぎて、糖分(果糖)やエネルギー量が増えがちになりますから、その点くれぐれもご注意ください。
「やせる漢方」の服用は慎重に
ダイエットと言えば、このところ「やせる漢方」のテレビコマーシャルが頻繁に流れています。
ダイエット志向の方は飛びつきたくなるキャッチコピーですが、副作用が少ないとされる漢方薬も、常用すると副作用に見舞われることがありますからご注意ください。
詳しくはこちらの記事を読んでみてください。

参考資料*¹:日本医師会「減るのに増える?―乾物の話―」